説明するまでもなくナチスの総統であり、ネット上では、彼らの会議シーンを元ネタにしたパロディ動画「総統閣下シリーズ」があまりに有名ですね。
本作を見たことはなくても、一連のシーンをオモシロ動画バージョンでご覧になられた方も少なくないでしょう。
『アイアン・スカイ』や『帰って来たヒトラー』においても、パロディシーンが登場しますが、実はこの作品、「あの動画の元ネタ」だけにしておくのはよろしくない傑作でもあります。
言うまでもないことではありますが、敢えて書きます。
ヒトラーの実像は
「言いたいことをビシッと言ってくれて、あなたが腹を立てていることに激昂する、ちょっと面白いおじさん」
ではありません。
パロディ動画だけしか見ていないと、ヒトラーに親しみすら感じてしまうかもしれませんが、それは危険でしょう。
ぜひ一度、本編を見て、凄惨な過去を直視しておきたい――そんな作品がコチラの『ヒトラー 最期の12日間』です。
※『ヒトラー 最期の12日間』は4/29現在、アマゾンプライムで100円のレンタル視聴ができます(→amazon)
基本DATA | info |
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タイトル | 『ヒトラー 最期の12日間』 |
原題 | Der Untergang |
制作年 | 2004年 |
制作国 | ドイツ |
舞台 | ドイツ、ベルリン |
時代 | 1945年4月 |
主な出演者 | ブルーノ・ガンツ、アレクサンドラ・マリア・ララ、ユリアーネ・ケーラー |
史実再現度 | 秘書ルンゲの回想に基づいており高いとされているが、脚色されている部分もある |
特徴 | 独裁者最期の時を秘書の目線で描く |
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あらすじ 独裁者の「黄昏」
「若い頃の私は愚かでした。怪物の正体に気づかなかったのですから……」
この映画は、一人の老女の回想から始まる。
彼女の名は、トラウドゥル・ルンゲ。
1942年、トラウドゥル・フンプスは、アドルフ・ヒトラーの秘書に応募し、そして合格した。
秘書の目から見たヒトラーは、そう悪い人物ではなかった。紳士的ですらあった。彼女は満ち足りた生活を送ることになる。
翌年、彼女はハンス・ヘルマン・ユンゲ親衛隊中尉と結婚。
エリート女性として満ち足りた日々を送っていた。
ユンゲが秘書になって三年の時が過ぎた。
1945年4月、ベルリン。
ユンゲは他の秘書やヒトラーの愛人であるエヴァ・ブラウンとともに、砲撃の音に怯えながら生きていた。
ソ連軍の侵攻が迫る中、ヒトラーとその側近たちは、総統の誕生祝いを行う。
「侵略者をこのベルリンで打ち破るか、あるいは破滅するか」
祝いの席で、ヒトラーは側近たちにそう演説する。
ヒトラーの破滅の時は、そう語る間にも迫っていたのであった。
描かれたヒトラーの「人間性」
本作はヒトラーの人間性を描くという、タブーに挑んだ作品ということで話題になりました。
秘書に優しい声を掛ける姿、破滅を前にして自暴自棄になる姿は、それまで描くことはできませんでした。
本作は高い評価を得たものの、賛否両論別れる作品でもあります。
「歴史を見つめ、描いた勇気ある作品」
「あの独裁者の人間性を振り返る必要はない」
この人間性という部分は、確かになかなか厄介です。
例えば、ヒトラー・ユーゲントの少年兵をヒトラーが励ます場面では、名前を呼びながら柔らかな頰をつまんでみせます。その姿には確かに人間性が感じられます。
ただし、その前後の場面を見てみないと、彼の人物像はつかめません。
この前に作戦会議の場面があります。
その席上、防衛戦の際に女子供、老人、負傷者をどうするのかと部下に聞かれたヒトラーはこう言い放つのです。
「戦時に市民など存在しない」
ヒトラーは、こう発言したあとで少年兵たちを励ましているのです。
自らの野望のためならば彼らの命を捨てても構わない、そのために子供たちを優しい言葉で励ます。それがヒトラーの考えなのです。
ヒトラーに励まされた少年兵たちは、舞い上がってしまいます。
大人たちとは違って、勝てるはずだと無邪気に思い込む。親の制止も振り切って、彼らは戦いに飛び込みます。
不利な状況となれば、何かに取り憑かれたような目をしたまま、自決してします。
時折見せる人間性という加点があったとしても、減点が大きすぎて結果的にはプラスになっていないのが、本作での描き方です。
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