1843年6月15日は、音楽家のエドヴァルド・グリーグが誕生した日です。
この曲で有名ですね。
◆劇音楽「ペール・ギュント」より「朝」
他には同じ劇に使われているこちらの曲とか。
◆劇音楽「ペール・ギュント」より「山の魔王の宮殿にて」
俗な言い方をすれば、彼の作品は「キャッチーな曲」といえるかもしれません。
CMなどでもよく使われているのもそのためでしょうか。
イントロから強烈なインパクトを与えてくるこんな曲を書いたのは、一体どんな人だったのでしょう。
母の影響でピアノを始め 中央ヨーロッパへ
グリーグは、ノルウェー第二の都市・ベルゲンに生まれました。
もともとグリーグ家は祖父の代でアイルランドから移住してきていて、父は実業家、母はハンブルグで音楽や文学を学んだ才女でした。
中流階級の上のほうという立場でしょうか。
グリーグも母の影響で幼い頃からピアノに親しみ、15歳のとき、とあるヴァイオリニストに才能を見出されて、ドイツ・ライプツィヒに留学しました。
本格的な音楽の道へ進むと、作曲でもピアノの演奏でも優秀な成績を収め、前途洋々といったところだったでしょう。
地道な努力を続けたグリーグは20歳のとき、デンマークの首都・コペンハーゲンに移り、北欧の芸術家たちとも知り合いました。
当時の北欧は【デンマークvsスウェーデン】を軸にその他の国やドイツが関係するという感じだったので、文化面では多少遅れた感が否めません。
しかし、グリーグを始めとした若手の中には、中央ヨーロッパの国々で学び、地元へ帰って一旗揚げようと考えていた人もいたのです。
ニーナのために作った曲が多いんです
彼はコペンハーゲンで思わぬ再会を果たします。
幼い頃よく一緒に遊んでいた、従妹のソプラノ歌手ニーナ・ハーゲルップです。
10年ぶりの再会でつもる話もあったでしょうし、もしかしたら子供の頃の初恋だったのかもしれません。
将来を誓い合う仲になった二人でしたが、音楽家はいつの時代も「一か八か」的な面があるため、ニーナの両親からは結婚を反対されてしまいます。
しかし二人は、家族が参列しない状態でも結婚式を挙げました。
そのせいかグリーグの歌曲にはニーナに捧げられたものも多く、仲睦まじさがうかがえます。
後年、この夫妻に会ったピョートル・チャイコフスキー(「くるみ割り人形」などを作曲)は「二人とも無邪気で率直で、好ましい夫婦だ」と評したそうですから、公私両面でお互いに最高のパートナーだったのでしょうね。
結婚した同年、24歳のときにグリーグはノルウェーの楽団の指揮者に就任しました。
ネックだった収入面でも安定し、幸せの絶頂……と言いたいところですが、子供には恵まれませんでした。
一度女の子が生まれたですが、1歳になるかならないかで亡くなってしまい、その後は子供を授かることができなかったのです。
だからこそ、夫婦仲が良くなったのかもしれませんね。
あのリストに評価され人気音楽家に!
まさに「禍福は糾える縄の如し」なグリーグたち。
ここに来て福が禍を凌駕するできごとが起きます。
フランツ・リストが二人を高く評価してくれたことにより、夫婦揃って国内外で人気音楽家になることができたのです。
それによって自信がついたのか。
グリーグは34歳の頃から、ノルウェーの民族的な音楽や楽器を多用していくようになりました。
当時は「ドイツの音楽は世界一イイイイイイ!!」(※イメージです)という価値観が強く、こうした試みは異色な存在。
冒頭で挙げた「朝」にも、ハーディングフェーレというヴァイオリンに似たノルウェーの民族楽器が使われています。
こうして自らの才能や演奏技術で成功を収めたグリーグは、51歳のとき「トロルハウゲン」(”妖精の丘”の意)と呼ばれる土地に自宅を建設。
その後、母国ノルウェーの独立を見届け、64歳のときに生まれ故郷のベルゲンで亡くなっています。
信仰よりも愛国心が勝った?
遺言によって墓はトロルハウゲンの岸壁に作られ、遺灰の一部は湖に撒かれました。
愛国的な芸術家は数あれど、物理的に国土と一体化(?)した人は珍しい気がしますね。
もしかしたら、そのために火葬を望んだのでしょうか。
彼の信仰については特記されていないのでよくわからないのですが、熱心なクリスチャンではなかったのかもしれません。
信仰よりも愛国心が勝ったとしたら、それはそれですごい話です。
愛妻ニーナは夫の死後、コペンハーゲンに移り住み、亡くなるまでグリーグの音楽を広める活動を続けたとか。
死後もリア充とかやっかむ気にもなりません。
あの世でもお幸せに!
長月 七紀・記
【参考】
エドヴァルド・グリーグ/wikipedia
エドヴァルド・グリーグ駐日ノルウェー王国大使館(→link)
ニーナ・グリーグノルウェー王国大使館(→link)
ノルウェー/wikipedia
ペール・ギュント_(グリーグ)/wikipedia