そんな問いを発する時、必ずあがる武芸者がいます。
宮本武蔵――生涯無敗を誇った剣豪ですね。
しかし、とある伝承ではただ一人、武蔵を破った男が存在したといいます。
名は「夢想権之助(むそうごんのすけ)」。
現代にまで伝わる「神道夢想流杖術(しんどうむそうりゅうじょうじゅつ)」の開祖でもありました。
※以下は宮本武蔵の生涯まとめ記事となります
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武蔵を破ったとも引き分けに持ち込んだとも
権之助は当初、神道流剣術の遣い手として武蔵に挑むも敗北。
その後、筑前(福岡県)宝満山に参籠し、「丸木をもって水月を知れ」という神託を受け、ついに「杖術(じょうじゅつ)」に開眼。
武蔵を破ったとも引き分けに持ち込んだともいわれています。
この耳慣れない「杖術(じょうじゅつ)」という武術はいったい何なのか?
同流儀でいう「杖(じょう)」とは、長さ四尺二寸一分(約128cm)、直径八分(約2.4cm)の樫の木製丸棒のことであり、これを用いた棒術の一種が「杖術」といえます。
そうです。
夢想権之助は剣から杖に持ち替えたことで、武蔵に対抗する力を手に入れたという伝説が語り継がれているのです。
警察機動隊の逮捕術にも導入
この杖術、剣術を中心とした日本武術の中で唯一「剣を破る」といわれる優れた武術であり、一本の棒を操る際には剣・槍・薙刀などのあらゆる武器術の動きを取り入れた千変万化の技法群を有しています。
対剣術戦用に特化して攻防の動作が組まれているため、刀の峯を滑らせるように打ち込んだり、切りつけてくる敵の拳を狙うなど剣術の弱点を徹底的に攻める工夫がなされています。
かつ、その技は相手を殺傷することなく捕縛・制圧することが至上。
まさに日本武道が到達した境地をあらわしているともいわれています。
このようなすぐれた技法から、現在では警察機動隊等の逮捕術に導入されており、全日本剣道連盟傘下の現代武道「杖道(じょうどう)」としても多くの修行者を抱えるなど、武蔵の時代から脈々と受け継がれてきています。
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【参考】
東京都剣道連盟HP(→link)