今回は、おそらく永禄六年(1563年)の話。
犬山城の攻略です。
年次が曖昧なのは他でもありません。
第一級の史料ではありますが、『信長公記』には意外に日付が曖昧になっている部分も多々あります。
前後の事情や他の史料とのすり合わせで、やっと時系列がわかるということも珍しくない。
ということで、今回はその辺を加味しつつ進めていきたいと思います。
地味だけど織田家に欠かせない丹羽長秀の活躍が見られます。
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犬山城の支城を次々に調略
前回、小牧山への移転で犬山衆の度肝を抜いた信長。
抜かれたほうの犬山衆には、もちろんさまざまな影響がありました。
小牧山から見下される形になった於久地城(愛知県丹羽郡)は、自ら城を信長に明け渡し、多くの兵が犬山城へ入った……とは前回お話した通り。
その於久地城の主だった中島豊後守という人物は、丹羽長秀を通じて信長へ内応しています。
また、於久地城と同じく犬山城の支城だった黒田城(愛知県一宮市)の主・和田定利も、同様に長秀経由で信長方につきました。
一番頼りにしていた支城の城主たちにも見限られたのでは、犬山城の主・織田信清の運命も決まったようなものです。
信長は彼らの申し出を受け入れ、犬山城への手引きをさせます。
そして、長秀に犬山城を攻めさせました。
犬山城の四方に何重もの垣を巡らせて
当時の丹羽長秀は、決して重い身分とはいえませんでした。
しかし、信長とはもともと一歳違いで信頼も得ていましたし、後に「米五郎左」=「米のように、毎日の生活に欠かせない存在」と評される人物ですから、この手の柔軟な対応を求められる仕事にはうってつけ。
彼は同時に「鬼五郎左」とも呼ばれるようになりますので、おそらくはこの頃から「緩急の切り替えが上手くできる奴」だと、信長に見込まれていたのでしょう。
長秀も、信長の信頼によく応えました。
支城を失って裸同然になった犬山城を、長秀は四方に何重もの垣を巡らせて包囲を続けます。
犬山城が落ちた時期については、信長公記を含めて記録が乏しいのですが、よそへ宛てた信長の書状などからすると、永禄七年(1564年)の夏頃のようです。
於久地城を攻めたのが永禄六年の6月で、小牧山への移転などを挟んでいますから、犬山城を攻めはじめたのは永禄六年の秋ごろのことでしょう。
となると、城方もずいぶん粘っていますね。
犬山城の主・織田信清は降伏せずに逃亡していますし、根比べではいい勝負といえるかもしれません。
稲葉山城攻略の準備は整った!
信清はその後、甲斐の武田氏に身を寄せて”犬山鉄斎”と称していたそうですから、犬山城への執着は生涯持っていたのでしょうね。
残念ながら、彼がどのような最期を迎えたのかはわかっていません。
何はともあれ、犬山城攻略を成功させたことで、美濃攻めに関する後顧の憂いは絶てました。
次回からいよいよ、斎藤氏の本拠・稲葉山城を攻略するための策略や戦が始まります。
信長と織田家が一気に戦国の中心へと踊りだす――その一歩目となるわけです。
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参考文献
- 国史大辞典編集委員会編『国史大辞典』(全15巻17冊, 吉川弘文館, 1979年3月1日〜1997年4月1日, ISBN-13: 978-4642091244)
書誌・デジタル版案内: JapanKnowledge Lib(吉川弘文館『国史大辞典』コンテンツ案内) - 太田牛一(著)・中川太古(訳)『現代語訳 信長公記(新人物文庫 お-11-1)』(KADOKAWA, 2013年10月9日, ISBN-13: 978-4046000019)
出版社: KADOKAWA公式サイト(書誌情報) |
Amazon: 文庫版商品ページ - 日本史史料研究会編『信長研究の最前線――ここまでわかった「革新者」の実像(歴史新書y 049)』(洋泉社, 2014年10月, ISBN-13: 978-4800305084)
書誌: 版元ドットコム(洋泉社・書誌情報) |
Amazon: 新書版商品ページ - 谷口克広『織田信長合戦全録――桶狭間から本能寺まで(中公新書 1625)』(中央公論新社, 2002年1月25日, ISBN-13: 978-4121016256)
出版社: 中央公論新社公式サイト(中公新書・書誌情報) |
Amazon: 新書版商品ページ - 谷口克広『信長と消えた家臣たち――失脚・粛清・謀反(中公新書 1907)』(中央公論新社, 2007年7月25日, ISBN-13: 978-4121019073)
出版社: 中央公論新社・中公eブックス(作品紹介) |
Amazon: 新書版商品ページ - 谷口克広『織田信長家臣人名辞典(第2版)』(吉川弘文館, 2010年11月, ISBN-13: 978-4642014571)
書誌: 吉川弘文館(商品公式ページ) |
Amazon: 商品ページ - 峰岸純夫・片桐昭彦(編)『戦国武将合戦事典』(吉川弘文館, 2005年3月1日, ISBN-13: 978-4642013437)
書誌: 吉川弘文館(商品公式ページ) |
Amazon: 商品ページ




