火事と喧嘩は江戸の華――。
なんて言葉がありますが、実際に火災が起きると木造建築が建ち並ぶこの街は本当に悲惨。
たとえば「江戸の三大大火」では以下の通り甚大な被害が起きました。
むろん死者数だけでは惨状を語りきれず、焼け落ちた家屋や寺社仏閣も数知れずですが、同時代には他にも大きな火災があり、今回注目したいのがコチラです。
天和の大火(1683年)――。
読み方は「てんなのたいか」。三大大火クラスの死者3,500人を数えるこの火事では、その直後にトンデモナイ事件が起きてしまいます。
その主人公が「八百屋お七」でした。
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『火事になれば、あの人に会える?』
八百屋お七とは、文字通り八百屋の娘です。
色白の美人と評されていて、しかも勉強もできる。現代で言えば清楚系の高嶺の花といイメージでしょうか。
両親も、身分の高い人物との縁談を考えていたところで同大火が起き、彼女は大火から逃れるためにお寺に避難、そこで出会った寺小姓・庄之介と恋仲になるのでした。
当初は手紙のヤリトリ程度だったようですが、若い二人がそれで我慢できるハズもなく、やがて逢瀬を重ねる仲に……。
しかし、時が二人を引き裂きます。
火事が収まり、庄之介と離れて自宅に戻ると、お七は病に伏せがちになり、やがてトンデモナイことを考え始めるようになります。
『もう一度火事になれば、あの人に会えるのではないか?』
おいおい……おいおいおーい!!!
これを純粋と見るべきか。キテレツと言うべきか。
自宅に放火
江戸の火災は上記の通り大災害の原因であり、放火などは問答無用で極刑です。
実際、彼女自身が逃げることになった【天和の大火】では大名屋敷や寺社もバンバン焼け、死者も3500人に達したのですから、いかに火災が危険なのかは重々承知していたハズでしょう。
されど庄之介への思いは募るばかり。そしてお七はついに……
・自分の家に放火
焼くか! よりによって自分の家を焼きますか!
幸か不幸か、このときの火災はボヤで済み、大事には至りませんでした。
が、一歩間違えれば洒落にならない状況です。
現代日本でも放火が重罪なのは、江戸の家屋が非常に燃えやすかった流れを汲んでいるようで、人が住んでいる建物や乗り物に火をつける「現住建造物等放火罪」は「死刑または無期もしくは5年以上の懲役」という、殺人罪と同等の刑罰になっておりまして。
当時であれば極刑を免れないのはご理解できるでしょう。しかし……。
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