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【伊達騒動】
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十分すぎる責任感が間違った方向へ進んでしまい…
仕事はしっかりやっていましたし、そのために自分の権力を強めて家中を統一しようした伊達綱村。
そこまでは良かったのですが、実際は、自分のお気に入りばかり重職に据えて、一門の人間や古くから仕えてきた家臣の上に置いたのがいけませんでした。
当然そういった人たちは「ポッと出のくせに偉そうにしやがって! 綱村様、あんな奴らを厚遇するのはやめてください!」とお願いします。
しかし綱村は聞く気配を見せません。
前述の経緯で「もう親戚とか代々の家臣だからって信用できない」と思ったのでしょうか。
業を煮やした家臣たちは「そうだ、幕府から綱村様に隠居するよう命じてもらおう!」という強引かつワンパターンな方法で問題を解決しようとします。
何度も巻き込まれる幕閣の皆さんが可哀相になってきました。
幕府のほうでは一度これを差し止めたのですが、その後も同じようなもめごとが何回も続きました。
そして、ついにときの将軍・徳川綱吉に一連の騒動がバレてしまいます。
実質90万の大藩を改易なんて骨が折れるどころじゃない
綱吉は儒学が好きで、長幼や主従を重んじる人でした。
もしも耳に入れば「家臣の統制もできない藩主はいらん! 改易!」となるのは目に見えています。
仮に、本当に改易になったとしたら、この時点で実質90万石ともいわれていた大藩の後始末なんて、骨が折れるどころの話ではありません。
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幕閣たちは綱村へ「あんたのやる気は良いことだけど、このままだとお家丸ごと潰されちゃうよ(´・ω・`)」と説得し、隠居を勧めました。
綱村もこれを聞いて納得し、幕府へ自ら隠居を願い出て、伊達騒動はやっと終着することになります。
こうして約35年もの間、あっちこっち(主に幕閣)に迷惑をかけまくったにも関わらず、仙台藩は何とか存続することができました。
長期的に見るとめでたしめでたし……とはいえない点もあります。
「へそくりを全部差し出せ!」
綱村の次に仙台藩主になったのは、従弟の伊達吉村でした。
彼は長い間のドタバタですっかり荒れていた藩の財政(主に借金)を何とかしようと、あれこれ策を講じます。
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しかし、借金を返すためのやりくりでさらに金が要るわ、そんなタイミングで幕府から「東照宮の普請するんでお金よろしく☆」(超訳)という命令が届くわ。
完済どころか余計に借金が増えるという「どうしてこうなった」状態に陥ってしまいます。
いい加減何とかしないと、このままではまた「改易!!」になってしまうかもしれません。
そこで吉村は「領内の検地をやり直して、正しい石高がわかればもうちょっと収入が増えるんじゃないか」と考えました。
しかし、これがまたよろしくない。
仙台藩では家臣たちがそれぞれの領地を自ら耕していることも多々あり、その分を副収入にして家計をやりくりしていたので、猛反発を受けます。
当たり前ですね。せっかく蓄えた「へそくりを全部差し出せ!」と言われているようなものです。
良くも悪くも仙台藩に政宗アリ
吉村は「私が悪かったよ(´・ω・`)」と非を認めて検地は止めました。
しかし、藩の収入がうやむやになったことで、仙台藩はその後、長らく経済が低迷したままになってしまいます。
一度は持ち直したこともあったのですが、度重なる大飢饉でマイナスが大幅に上回り、そのまま幕末へ突入するという不幸のズンドコまっしぐらだったのです。
その状態で奥羽越列藩同盟の重役をやらされても、お金がない=武器を満足に揃えることもできないわけですから、「大藩(笑)」みたいな扱いになるのは仕方のない話です。
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元をたどれば、伊達政宗による息子・伊達宗勝の教育失敗が原因ということになってしまいますかね?
良くも悪くも影響力の強い御方です。
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長月 七紀・記
【参考】
国史大辞典
『御家断絶―改易大名の末路 (別冊歴史読本15)』(→amazon)
伊達騒動/Wikipedia