土曜日に出かけて、日曜日は家でゴロゴロ――という方もいれば、その逆の方もおられるでしょうし、どっちにしようか毎週迷うという人もいるかもしれません。
実はそんな風に悩めること自体が良き傾向でして。
完全週休二日制になったのはかなり最近のことですし、そもそも「休みの日」すら比較的新しいものだったりします。
今回は「休日の歴史」について。
明治九年(1876年)3月12日、官公庁で日曜日の休日と土曜日の半休が導入されました。
キリスト教的な考え方から
現在のお役所は両日ともにお休みですから、若い読者さんは何となくイメージがつきにくいですかね。
これはそもそも休日の由来を考えてみるとしっくりきます。
「日曜日=休み」という概念は、キリスト教的な考え方なのであります。
ユダヤ教の安息日(何もしてはならないとされる日=土曜日)の翌日である日曜日にイエス・キリストが復活したといわれるようになったために、キリスト教では日曜日にミサが執り行われるようになりました。
ローマ帝国時代のことで、ヨーロッパではそれがずっと続いているのです。
ですから、公にキリスト教が禁じられていた時代の日本には、そういう視点がなかったんですね。
仕事をしようにも西洋人が休みなんだな
もうちょっと実利的な理由もありました。
明治といえば、日本が本格的に西洋とお付き合いをはじめた頃です。つまり、日曜日に外交や商売の話をしようとしても、西洋側の担当者どころか組織全体が休みなわけで……。
「無駄足や待つ時間が増えるなら、いっそこっちも休みにしてしまえ!」
という意味もあるような気がします。
最近ではカスタマーセンターを外国に置くことによって、時差や祝日のズレを効果的に使う企業もあるらしいですね。
こうすると「本国の社員は早く帰れる」&「ユーザーが夜でもカスタマーセンターに電話しやすい」&「カスタマーセンターでも健全な勤務状態が保てる」、というホワイトかつ顧客満足度に優れた環境になるんだとか。
考えた人、すごく頭がいいですよね。
お金がかかることですから、すべての企業が真似することはできないにしても、ぜひ広まってほしいものです。
何はともあれ、こうしてまずお役所で毎週の休日が決まりました。
江戸時代までは、基本的に「盆・暮れ・正月とお祭りの日くらいしか休みがない」職場がほとんどでしたから、幕末に商売をやっていて、明治になってから公の仕事に就いた人は得した気分になったでしょう。
ただし、そのぶん(?)夏期の昼休みが長かったり、昼休みの他に10時や14時の休憩があったそうで。
ちなみに、西洋人は西洋人で「何で日本人は夏になるとやたら休むんだ」と思われてていたとか。
なぜ半ドンなのか?
また、「半ドン」という言葉は、土曜日が半休になったことからきています。
週休二日制になった今ではあまり使われませんね。
しかし、なぜ「半ドン」なんて言うのか?
当時の時報に由来します。
正午に大砲を使っていたので、時報そのものが「ドン」と呼ばれており、「土曜日にドンを聞いたら休みだ」ということで生まれた言葉でした。
他に「オランダ語の”zondag”(ゾンターク)がなまったもの」「半(分休みの)土(曜日)なまったもの」という説もあります。
博多どんたくも同じくオランダ語の”zondag”が由来とされています。
さらに、どんたくで楽器を鳴らして練り歩く人々を「通りもん」といい、銘菓「博多通りもん」が名付けられているので、「土曜日の半休とお祭りとお菓子の名前が同じ由来」ということにもなりますね。なかなか面白いものです。
松下幸之助や本田宗一郎も週休二日制には積極的
休みといえば祝日も欠かせません。
こちらは土日に先立ち、明治六年(1873年)に法律で定められています。
上記の通り、日本には元々「お祭りの日は休み」という習慣があったので、祝日のほうが導入しやすかったのかもしれません。
元日や建国記念日、天皇誕生日など国家的にめでたいことなどからはじまって、後に陸海軍の記念日なども加えられました。
一方、週休二日制についてはだいぶ後、戦後になってから広まり始めました。
パナソニック(当時は松下電器産業)が1965年に始めたのが最初だそうです。
創業者・松下幸之助がアメリカ企業を視察して「休みを増やしたほうが仕事の効率が良くなる」と考えたからなんだとか。
本田技研工業の創始者・本田宗一郎も、週休二日制にメリットを感じ、導入を決めたといわれています。
半世紀前に日本屈指の経営者たちが休息の有用性に気付いていたのに、ブラック企業のサビ残とかサビ出勤とかエエ加減にしなさいよ、と。
「決まった休みがあれば、心身の疲れが取れて仕事により励める」
というのは、小難しい理屈がなくてもわかるでしょうよ。
とはいえ、昔は珍しかった週休二日制も、今ではだいぶ広まっておりますね。
今は始まったばかりで「んなもん効果ねーだろ」とか「ウチは接客業だから帰れないよ(`;ω;´) むしろ忙しい」人が多数派な気がするプレミアムフライデーも、何十年かしたらもっと広まるのかもしれませんね。
長月 七紀・記
【参考】
休日/Wikipedia