原作漫画、アニメに続き、実写ドラマまで放映された『パリピ孔明』が熱い!
実写版では『三国志』ファンにはおなじみの戦いへと向かっていく展開。
史実ネタの読み込みを思い出しながら、感動のフィナーレへのテンションをもう一度味わいましょう!
【TOP画像】ドラマ『パリピ孔明』公式サイト(→link)より引用
お断り:姓、名、字とは
ドラマでは、こんな風に自己紹介されます。
「姓は諸葛、名は亮、字は孔明と申します」
これはどういうことか。
姓:一族の名前。本貫をつけることもあります。諸葛亮の場合、琅琊(ろうや)が本貫の諸葛氏、琅琊諸葛氏となります
名:生まれた時につけられた名
字:成長してからつける呼び名。名を呼ぶことを忌避するためにつけます。そうはいっても相当親しくなければ使いません。馬超が劉備を字で呼んだところ、関羽と張飛が「ラフすぎんだろ!」と激怒したこともあったとか。
諸葛亮孔明という表記は、「名」と「字」を同時に呼ぶので、ミスとされます。
孔明の方が馴染み深いと思いますが、ここは「諸葛亮」とさせていただけます。ご容赦ください。
死せる孔明、生ける仲達を走らす
亡くなった人物の意思や思想が、今を生きる人々に影響を与え、動かすこと。
冒頭で死の淵にいた諸葛亮。あれは【五丈原の戦い】です。
敵対する魏の司馬懿(しばい、字は仲達)との対陣中、病没してしまいます。そこから若返り、劉備と出会った青年時代にまで戻り、ハロウィンの渋谷に転生してきます。
なぜ日本語ができるのか。なぜカクテル作りがうまいのか。そういう疑問はとりあえず考えないでおきましょう。
なお、諸葛亮は「丞相」と呼ばれることもあります。います。彼は蜀で丞相であったためそう呼ばれます。
ライバルの曹操は後漢の丞相であったため、赤壁の戦いを描く作品では曹操が「丞相」と呼ばれています。まぎらわしいのでご注意ください。
三顧の礼
重要な人物に礼を尽くし、迎えること。
このドラマでは、竹林を通り抜けた劉備が、諸葛亮の住まいを訪れる場面が入ります。
だんだんと近づいてくる劉備。再会できたら、私は元の世界に戻るのでは? そう諸葛亮は考えています。
劉備には腕の立つ勇敢な義弟である関羽と張飛がおりました。
しかし、頭の切れる参謀役がおりません。
誰か賢者はいないか?
そう悩んでいたところ、徐庶という優れた人物が諸葛亮の情報を提供します。この徐庶の友人である諸葛亮の話を聞き、劉備は呼び出そうとします。
すると徐庶は呼び出すのではなく、訪れたらどうかと提案します。
それもそうだ。劉備は関羽と張飛とともに、諸葛亮の住む廬を訪れます。
年長者でありながら、三度も訪れてきた劉備。その誠意に感激した諸葛亮は、その知能を劉備のために用いるのでした。
泣いて馬謖を斬る
重大なミスを犯した部下を処断すること。
渋谷のBBラウンジのオーナーである小林は、重度の三国志マニアです。
どのくらいマニアか? 本棚を推察してみました。
ちくま学芸文庫『正史 三国志』全8巻セット
横山光輝『三国志』全巻
吉川英治『三国志』全巻
『三国志事典』
『三国志演義事典』
最低限、これだけは揃っていることでしょう。
そんな小林は、諸葛亮に馬謖を斬った理由を尋ねます。
諸葛亮の弟子に、馬謖(ばしょく)という人物がいました。
【街亭の戦い】の際、馬謖は山頂に陣を敷きます。高所への布陣は兵法の基礎とはいえ、この場合は水源を遮られるため禁忌でした。そんなミスのために大敗を喫し、大損害を受けてしまいます。
諸葛亮は信賞必罰を重んじます。愛弟子だろうとミスはミス。馬謖を処刑したのでした。
この小林は過去において馬謖級のミスをやらかした過去があります。そのためか、諸葛亮に馬謖はなぜあんなミスをしたのか尋ねます。
小林が手にしているカードゲームの札は、長野剛さんが描いています。コーエーテクモゲームスはじめ、歴史イラストでは有名な方です。このカードを売ってくれ! そう目を輝かせた方も多いことでしょう。
知音
互いをよく知り合った友のこと。
小林と諸葛亮ってまるで「知音」(ちいん)みたい。そんな言い方もできます。
なぜ諸葛亮は音楽に詳しいのか?
設定上必須だからというだけではなく、古代中国では音楽が大変重要な意味合いを持ちます。音楽のわかる人は素晴らしいと賞賛されます。
諸葛亮がしばしば持ち出す人物に、呉の周瑜がいます。彼はこう言われたとか。
「曲をミスると周さまがこっち見るよ!(曲に誤り有らば周郎顧みる)」
軍を動かすにせよ、太鼓や銅羅でテンポをとることは重要です。軍師が音楽に詳しくても別によいのです。
そういう音楽を通した友情があればこそ「知音」という呼び方が通用します。
石兵八陣
『三国志演義』に登場する諸葛亮の計略のこと。
このドラマは『三国志事典』と『三国志演義事典』を参照しています。
正史『三国志』とは、真面目な王朝の歴史を記した歴史書です。
一方で『三国志演義』は、それを盛ったバージョンのこと。「七実三虚」(七割史実ベースで三虚が史実)という言葉で表現されます。
この「石兵八陣」とは、呉の陸遜との対陣の際に諸葛亮が用いた不思議な陣とされます。それをBBラウンジで再現する様子が描かれます。
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張飛の酒乱
小林は張飛の酒豪伝説について、諸葛亮に尋ねます。張飛は酒乱で粗暴であったとされる劉備の義弟です。
でもよ、当時のアルコールは酒乱になるほど酔い潰れられなくね?
そういうツッコミです。
当時の酒は黄酒(ホアンチュウ)でしょう。日本酒やワインと同じ程度の度数です。
もっと強い40度前後の白酒(バイジウ)は、宋代以降とされています。それと比較すると弱いようで、大量に飲めば荒れますかね。
私も小林と同じ疑問を抱いたことはあります。
アジア人はアルコールに弱いし、当時の人は今より弱かったのかもしれませんね。
実は中国の蒸留酒はなかなかややこしい。いつからか、これがはっきりしません。漢起源説もあり、孔明の敵である曹操が酒の作り方を記していた伝説もあります。
三国時代は戦乱の時代。米の節約のため、魏呉蜀のうち、呉以外では禁酒令も出されたことがありました。
曹操は酒で憂さ晴らしする漢詩を詠んだし、孫権はともかく酷い酒乱。度数が低かろうと、酒乱に陥る三国志の英雄はいたようです。
張飛の場合は酒だけでなく、そもそもが横暴でパワハラ気質であったとされます。これは劉備も認識していて、そのうちなにかやらかさないか不安に思っていたそうです。
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丁原
諸葛亮は不動産会社から格安案件「丁原アパート」を勧められますが、不吉であると断ります。
丁原とは、部下である呂布に殺されてしまった人物のこと。そんな名前のアパートがあるか!
近きを以て遠きを知り、一を以て万を知り、微を以て明を知る
諸葛亮は相手をじっくり観察します。キモいですか?
はい、そうですね。しかしこれぞ軍師のあり方。
『荀子』にはこうあります。
近きを以て遠きを知り、一を以て万を知り、微を以て明を知る。
じっくりと相手を見て、推察することが大事です。
軍師は卑劣なことも勝つためにするもの。詐欺師みたいな奴だと言われますが、そういうものです。
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