トーベ・ヤンソン

トーベ・ヤンソン/wikipediaより引用

作家

ねぇムーミン 君の正体は? 作者トーベ・ヤンソンの生涯から探ってみる

2001年(平成13年)6月27日は、「ムーミン」シリーズの生みの親であるトーベ・ヤンソンが亡くなった日です。

彼女は、彫刻家の父と画家の母の間に生まれました。

いわば芸術のハイブリッドといった血を引いたからなのか。

15歳のときには「ガルム」という雑誌の挿し絵を描き始めてたそうです。

しかもこの雑誌、ただの週刊誌や月刊誌ではなく、政治についての風刺を主体とする雑誌でした。

15歳の少女が描くにしては大分ブラックな世界のような気がしますが、ムーミンはこの雑誌の挿絵のすみっこに描かれていたのが始まりなんだそうです。

ああいう丸っこい外見なので、ほのぼのとした印象が強いですけれども、スナフキンなどの言動をよくよく見てみると哲学的な面が強いのは、トーベのこうした経歴からでしょうね。

 

なぜスウェーデン語にこだわったのか

トーベはその後も挿絵の仕事をしながら、北欧やフランスの芸術系の大学や専門学校で学んでいきました。

ムーミンのマンガが連載され始めたのは、彼女が40歳のときのこと。

しかもフィンランドではなく、イギリスの雑誌が最初です。

ムーミンって生まれてから何十年も主役にはなっていなかった上に、違う国でデビューしていたんですね。

しかも、彼女が描いたのは5年間だけで、その後は弟のラルスが描いていたそうです。

当初トーベがスウェーデン語で描いていたのを、英語に訳したのもラルスなのだとか。

「なぜフィンランド人なのにスウェーデン語?」

そんな風に不思議になってしまいますが、ここにちょっと歴史が絡んできます。

フィンランドはスウェーデンの属国だった時代があり、「宗主国」の言葉を使えるというのはいわゆるエリートの証でした。

しかし、同時にスウェーデン語を理解できるフィンランド人はごくわずかなため、マイノリティとして肩身が狭いと感じている人もたくさんいたのです。おそらく現在もそうかと思われます。

そんな人たちのためにも、トーベはスウェーデン語で描くことにこだわったのではないでしょうか。

フィンランドの歴史については、以前の記事でも取り上げたことがありますので、詳しくはそちらをご覧いただければと思います。

フィンランドの歴史
北欧フィンランドってどんな国? 欧州列強の狭間で揺れ動いた歴史

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そもそもムーミンって何なんですかね?

トーベ・ヤンソンは、日本でムーミン以外の著作をほとんど知られていません。

実は他の小説やフレスコ画でも高い評価を得ています。

2014年は生誕100周年ということで、日本でもヤンソン記念展が開催されたので、以前よりは知られてきましたかね。

しかし、ムーミンっていったい何なのか、未だによくわからないですよね。

なんとなく触ったらフニフニしてそうな感じがして、「ZENRAでおk」なのかと思ったら、パパはシルクハットにステッキという紳士的な出で立ちだったりしますし。

また、人によっては

「妖精でしょ?」
「違うよ、トロールっていうおばけだよ」

なんて風に話が食い違ったりします。

実はこれ、どれも間違っていないのです。

というのも、作者のトーベ自身、ムーミンのことを

「バーレルセル」=「存在していることはわかるが、どういった存在なのかわからないもの」

という表現にしていたのです。

日本人の感覚で言えば「妖怪なのか幽霊なのか神様なのかわからない」といった感じですかね。

その割にムーミンって冬眠する話もあって、その辺は動物っぽいですよね。

だからこそ「バーレルセル」なのかもしれません。

 

北欧の妖精「トロール」がモデルとの話も

元ネタといわれている「トロール」は、北欧の妖精の一つ(?)です。

トロールも姿がはっきり決まっておらず、巨人だったり小人だったりといろいろな話があります。

顔は人間に近く、醜い老人のような感じらしいですが、トーベはムーミンをかなりデフォルメしたことによって、親近感を出したのかもしれませんね。

元のトロールの話では「三びきのやぎのがらがらどん」という絵本が有名ですかね。

こっちはノルウェーの話で、少なくともワタクシが子供のころからありますし。

トロールってこんな感じだそうで……/Wikipediaより引用

ちなみに、こっちのトロールがムーミンシリーズの中で人間の代わりに登場している話もあるそうで……もしかして、人間は醜いものという皮肉だったりするんですかね。

彼女の経歴的に、かなりきつい風刺がこもっていてもおかしくはありません。

設定がはっきりしていないのは「存在がどうこう」といった抽象的な話だけではなく、ムーミンの身長など具体的なことも含まれています。

当初は「電話帳くらい」だったそうです。

が、コミック版では「人間と同じくらい」になっているとか。

これも「人間にとって不可解なもの」という暗示ですかね。

「フィンランドの男性の平均身長と同じくらい」とすると、ムーミンは178cmくらいになってしまうんですが……なにそれこわい。

そのサイズでZENRAにシルクハット&ステッキのムーミンパパとか想像したくないですね。

ああ、SAN値が!SAN値が!

長月 七紀・記

【参考】
トーベ・ヤンソン/Wikipedia
ムーミン/Wikipedia
ムーミンの登場人物/Wikipedia
トーベ・ヤンソン展/朝日新聞

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