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【壊血病】
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レモン一個食べることができたら死ななかったのに……
壊血病には、もちろん原因があります。
ズバリ『ビタミンC不足』です。
ビタミンCはコラーゲンを構成するアミノ酸を作るのに必須であるため、長期(3〜12ヶ月)で不足すると組織をつなぐコラーゲンが弱くなります。血管にも影響するため出血傾向になるんですね。
成人に必要なビタミンCの量は1日は100mgです。
レモン1個食べたらまかなえるもので、普通に生活していればまず不足しない栄養素です。
しかーし、航海が長くなるとそうもいきません。
ビタミンCを含む果物や野菜は日持ちがしないため船内の食事ではどうしても足りなくなってしまい、壊血病にかかる船員が増えたのです。
まさに大航海時代だからこその病気でした。
サワークラウト(キャベツの酢漬け)が命を救う
時は下って1753年。
イギリス海軍省のジェームズ・リンドは、「食事環境が比較的良い高級船員に壊血病が少ない」ことに目をつけました。
寄港地で果物や野菜が手に入ったらお偉いさんが食べちゃうってことですな。
リンドは、新鮮な野菜や果物、特にミカンやレモンを摂ることによって、この病気の予防が出来ることを論文で発表。
その成果を受けて、キャプテン・クックは南太平洋探検の際、ザワークラウト(キャベツの酢漬け)や果物の摂取に努めました。
結果、史上初めて壊血病による死者を出さずに世界周航が成し遂げられたのです。
これにて一件落着!
とは、残念ながらなりませんでした。
なんとなく原因に気づいても食材を加熱したら意味がない
当時の航海では新鮮な果物を常に入手することが困難だったため、イギリス海軍省は、抗壊血病薬として麦汁、携帯スープ、濃縮オレンジジュースなどをクックに支給したのです。
ビタミンCは加熱に弱いため、それらの調理食材では全く役に立たないんです(´・ω・`)
壊血病を防いだ立役者は『ザワークラウト』でした。
当時はそれが分からず、帰還したクックが「壊血病予防には麦汁だ!」なーんて言っちゃったもんだから、結局、長期航海における壊血病はなかなか無くなりません。
ビタミンCと壊血病の関係が明らかになったのが1932年なんので間違えちゃっても仕方がないですけどね。
その後、1795年以降、イギリス海軍では乗組員にライムジュースの飲用が義務付けられ、同国の壊血病は激減。
イギリス人をライム野郎(ライミー)と呼ぶスラングはこれが由来だそうですよ。
そうそう、壊血病の治療についても、ビタミンCの投与が有効です。
大抵の症状は1〜2週間で完治。
ONE PIECEでナミが壊血病患者に大量のライムジュースを飲ませるシーンは(ちょっとジュースが大量過ぎますが)正しいのです。
『リンゴを囓ったら歯グキから血が出た!!!』
と、心配になった方。
それは壊血病ではなく、歯医者さんで「解決」できる歯周病ですよ、なんつって。
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イラスト・文/馬渕まり(忍者とメガネをこよなく愛する歴女医)
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【参考】
壊血病/wikipedia
ヒドロキシプロリン/wikipedia
ビタミンC/wikipedia
ビタミンの歴史/食と健康の総合サイト(→link)
大航海時代/wikipedia
MSD(→link)
簡単!栄養andカロリー計算(→link)
NewsMedicalLifeSciences(→link)