このまえ「歴史が嫌い」という方に何人かお会いする機会がありまして。
「本当にそういうことがあったかどうかなんて誰にもわからないのに、何で信じるの?」
というのが理由だそうで、まぁ確かに否定できませんよね。
どうしたって想像を働かせる部分はあり、過度に妄想を働かせるトンデモ説だってあるものです。
1503年(日本では戦国時代・文亀三年)12月14日、予言者として有名なノストラダムスが誕生しました。
フランス語だと”ミシェル・ド・ノートルダム”というどこぞの鐘を連想するお名前なのですが、いつも通り有名なほうで統一させていただきます。
彼の本職は予言者ではありません。
学問オールマイティといった感じで、詩作だけでなく医師をやっていたり、いろいろこなしています。
身分があまり高くなかったため、あまり彼個人に関して正確な足跡はわからないのですが、まあ定説を見てまいりましょう。
2つの大学を卒業し本も出している
ノストラダムスはフランスに移り住んできたユダヤ人の子孫だといわれていて、アヴィニヨン大学とモンペリエ大学を出て学問を身につけました。
身分は低くとも、それなりに資産のある家だったんでしょうね。
頭の良さはホンモノで興味の幅も広く、「化粧品とジャム論」という本も書いています。
この場合どちらかというと化粧品というよりは薬に近いものですが、当時の知識&彼個人の見解で書いたものなので、効用については「お察しください」といったところのようです。
どちらかというとジャムやお菓子のレシピ集として重要視されているんですが、それでいいんか。
某アトリエなゲームでも錬金術師のはずなのにお菓子とか料理作ったりしますから、ヨーロッパの感覚だと似たようなものなんですかね。
一神教関係でよく出てくる「預言者」とは違います
さて、こうしてさまざまな本を書いたノストラダムスは、後半生に入ってから占星術師としても活動し始めます。
例の「予言」もその時期に書かれた詩です。
ですから、本人としては半分ノリで「将来こんなことが起きるかもねーw」程度の感覚で書いていたかもしれません。
その後いくつかそれっぽい出来事が当てはまってしまったために、純粋な人々が
「さすがノストラダムス! 俺たちにわからないことを平然と当ててみせる!そこにシビれるあこがれるぅ!」
といったようにテンションMAXで広めてしまい、20世紀末の日本でちょっとしたお祭り騒ぎになった……という経緯だったのではないでしょうか。
ちなみに一神教関係でよく出てくる「預言者」はちょっと意味が違います。
日本語だと漢字がよく似ているのでわかりづらいですが、こちらは「神の言葉を”預かる”者」という意味です。
「予言者」のほうは書いたそのまま、「予め(未来の出来事を)言う者」です。
テストで間違えると△つけられて-1点されてしまうかもしれませんので、学生さんは覚えておくといいかも。
1999年7か月 空から恐怖の大王が来るだろう
彼の予言で「当たった」として有名なものだと「”若き獅子が老いた獅子を殺すだろう”という詩」でしょうか。
「フランス王アンリ2世がとある貴族と馬上槍の試合をした際、事故により亡くなったことを指している」という話です。
が、詩の中に具体的な名前や「王」という単語が出てくるわけではないので、乱暴な言い方をすれば「解釈のほうを詩に合わせてあてはめた」という可能性も高いですよね。
ノストラダムスの予言についてはこういうものがほとんどなので「そのものズバリを言い当てたものは存在しない」ということもできます。
これは有名な「恐怖の大王」の詩についても同様です。
ウィキペディア先生から邦訳をお借りしてツッコんでみましょう。
”1999年、7か月、
空から恐怖の大王が来るだろう、
アンゴルモワの大王を蘇らせ、
マルスの前後に首尾よく支配するために”
まず、当時とは暦が違うため、「1999年7か月」が現在の暦(グレゴリオ暦)に当てはまるとはいい難いことなど、そのまま受け取るにはハテナがつく点がたくさんあります。
例えば「恐怖の大王」の「恐怖」の部分については原文と写本で違う単語になっていることがままあり、どちらが正しいのか既にわからなくなってしまっています。
この時点で写本の意味ないですよね。
もしかしたら他にも書き落としや誤植があって、「1999年7か月」は「(この詩を書いてから)「1999年後の7月」だった……なんてこともあるかもしれません。
こういうの言い出すとキリがないですけども。
チンギス・ハーンの再来って……えぇっ???
そして「恐怖の大王」が蘇らせようとしていた「アンゴルモワの大王」については、「フランス・アングレーム地方のお偉いさんという意味ではないか」という説があります。
他にも「モンゴルのアナグラムで、この詩全体がモンゴルの脅威を示している」という解釈があったり、これまた説が分かれていてカオス状態です。
ノストラダムスの時代にはモンゴル帝国は既に分裂して「帝国」とはいい難い状態になっていましたので「チンギス・ハーンの再来といえる人物の登場を(ry」なんて説もあります。
最後に「マルス」はローマ神話の軍神のことですが、他にも火星(マーズ)や3月(マーチ)の語源だったりするので、どの意味で受け取るかによってこれまた文脈が全く変わってきます。
一番わかりやすいのは3月ですが、そうすると「何年の」3月なのかわかりません。
ノストラダムス本人は誤植等に大変厳しい人だったため、存命中は目を光らせていたようです。
さすがに死後はそうもいかず、反比例して写本と学説が増え続けて現代に至ります。
お空の上で「そういう意味で書いたんじゃないんだけどな(´・ω・`)」と思っているかもしれませんねえ。
長月 七紀・記
【参考】
ノストラダムス/wikipedia