フランス

13才の少女がナチスに追われてスイスへ脱出『ファニー13歳の指揮官』の緊張感

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ファニー 13歳の指揮官
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フランスに戻るためには莫大な費用が必要だと

勇気と機転で他の子供たちとスイスへ逃れたファニーたち。

彼女らは、スイスにこそ未来があると信じていたのに、学校に滞在する許可が下りません。

こんなに素晴らしい少女によくそんな仕打ちができるものだと、がっかりさせられます。

かくして、再びフランスに戻ったファニーを待っていたのは、帰化申請のためのテストと莫大な費用でした。

役所から意気消沈して出てくると、ファニーはある人物に出くわします。

レジスタンスの青年でした。

彼は役所にかけあい、150名ものレジスタンスの命を救った少女が、なぜ帰化のために金を払わねばならないのか、とかけあいます。

ファニーの勇気は、こうして報われました。

 


難民の旅を想像しろ!

私が本書を読み終わって閉じたあと、大声で叫びたいのはこの言葉でした。

「難民の旅を想像しろ!」

それがどれだけ困難で大変なことか。

進む道すらわからない。ファニーは太陽や星の位置で、時間および場所を知ると書いておりました。

現在ならば、スマートフォンのGPS機能でそれが可能でしょう。

スマートフォンは高級品ゆえに、着の身着のままのハズの難民がナゼ持ち歩いているのか、と難癖をつけられがちなもの。

しかし、そうでしょうか?

現代人にとってスマホは、地図と方位磁石に等しいもののはず。むしろ難民こそスマートフォンが必要でしょう。

私は「難民がスマホなんて」と言う人にそう言いたくなりました。

思いやりがないのは、本書の中に登場する人たちも同じでして。

ファニーにスイスの学校滞在許可を与えない校長、帰化申請に莫大な金を要求するフランスの役所……どうしてそういうことをするんだ、と思いました。

戦後で皆苦しかったという事情はあるのでしょうが、あまり可哀相ではないか、と。

 


全然昔の話じゃない 大人の心も揺さぶる一冊

衝撃的であるのは、ファニーの旅が全く古びていないことです。

今も難民や移民の子が書類審査ではねつけられて国外に送られてしまったり、そもそも彼らは存在すらしないと言われてしまったり。

苦労を重ねて国境を越えた人々が苦しんでいるという現実は依然としてあります。

ファニーの母が嘆いたように、「外国人というだけで中傷を受ける」という現実にも直面しています。

本書のファニーは、少女らしいまっすぐな心で、そうした人々に疑問をぶつけ、心をゆさぶりました。

70年以上経った今も、彼女の訴えは読む者の心をゆさぶります。

こうした悲劇の旅路が過去のものとなるまで、一体あと何年かかるのでしょう。

ティーン向けながら、大人が読んでも心に残る一冊。

本書を原作とした映画『少女ファニーと運命の旅』もございます。

※映画『少女ファニーと運命の旅』(→amazon


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文・小檜山青

【参考】

ファニー・ベン=アミ/ガリラ・ロンフェデル・アミット/伏見操『ファニー 13歳の指揮官』(→amazon

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