ドイツ

ヒトラーに異を唱え処刑されたドイツの若者【白バラ抵抗運動】の覚悟

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白バラ抵抗運動
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誠実なドイツ人がいた 反抗するドイツ人がいた

自然豊かなドイツの南部でノビノビと育ったショル家の子供たち。彼らの青春に、ナチスが暗い影を落とします。

反ナチス的な言動による逮捕拘禁。

学業を阻む勤労奉仕。

それでも彼らは自分の信じる道を歩む勇気を持っていました。

1942年、ハンスにとっては三歳下の妹であり、ショル家の三女であるゾフィーはミュンヘン大学に進学します。

当時のドイツの大学では、女子学生の割合を10パーセントに抑えると決めていました。

「女性の居場所とは大学ではなく、家庭であり、よき夫の隣だ。女性とは肉体を学業ではなく、健康な子供を産むために使うべきである。よき夫を見つけるため、魅力的になることだ」

ナチスの考えはこのようなものでした。

「ナチスはがんばる女性の支援に積極的でした」と讃美する人が今でもいるようですが、ナチスが支援する「がんばる女性」とは極めて限定的であったことは考慮すべきでしょう。

ミュンヘン大学には、ショル兄弟以外にも志を同じくする青年たちがいました。

「黄色い星をつけた可哀相なユダヤ人たち。彼らはどんな酷い目に遭っているのだろう? ぼくはこんなことには耐えられない」

「フランスの戦線は酷い有様だ。ヒトラーが勝ち続けるなんてありえない」

ハンスには、暗い顔をしてそう囁く友人がおりました。

戦後、「ユダヤ人が強制収容所でどんな目に遭っているかなんて、知らなかった」と主張するドイツ人が大勢いました。

それは確かにその通りでしょう、ヒトラーやナチスは自分たちが何をしていたか。明かすことはありませんでした。

それでも噂は流れていて、何か酷いことが行われているに違いないと確信している人々もいたのです。

ハンスが出会ったのは、そんな敏感な青年たちでした。

医学部に所属していたハンスと仲間はこう語り合いました。

「ぼくたちは医学を学び、人を救う術を学んでいる。それなのに外では大勢の人が殺されている。この状況を黙って眺めていてよいものだろうか?」

「ぼくたちの考えていることは、ヒトラーとは違う。行動で、そのことを示そう」

誠実なドイツ人がいた。

反抗するドイツ人がいた。

そう歴史に示すため、彼らは立ち上がったのです。

 


闇に咲いた白いバラ

1942年6月。
ミュンヘンの郵便受けに「白バラのビラ」と書かれたビラが入っていました。

携帯型のタイプライターで打ち込まれ、謄移機(とうしゃき・ガリ版のこと)で擦られたわずか100枚のビラ。

ドイツ人に目覚めるよう呼びかけ、自由を求めたそのビラは、思想に賛同しそうな人々にだけ密かに送られたものでした。

ゾフィーもこのビラを手に入れました。彼女は疑念を抱き、兄ハンスに尋ねます。

「このビラの筆者は誰? 私が知っている人ではないの?」

「違うよ、馬鹿なことを言うな。命に関わるぞ」

しかしゾフィーはあきらめません。ハンスはついに、仲間のアレクサンダー・シュモレル(通称アレックス)のものだと認めます。

「私も運動に参加したい」

ゾフィーは強く主張し、ハンスも折れました。

こうしてゾフィーが加わった「白バラ」の仲間たちは、協力者が提供した地下室で、危険に身をさらしながらビラの第二弾を作り始めるのでした。

彼らは白いバラのように純粋で、そして棘のあるビラで、彼らは戦い続けたのです。

ハンスやアレックスらは、その途中でロシア戦線に送られ、ゾフィーも軍需行動で働くことを余儀なくされました。

その間にも、彼らはドイツのあやまち、戦争の惨禍や矛盾を目に焼き付けていました。

彼らの体験は、次のビラに生かされることになるのです。

あるとき、ビラの配達途中であったゾフィーは、父ローベルトの元に向かいました。

自分たちの行動を父に認めて欲しかったのでしょう。

ローベルトはビラを読み感心しました。

「抵抗するドイツ人がいるのは素晴らしいことだ。けれどゾフィー、お前やハンスが関わっていたりはしないだろうね」

「当たり前よ、父さん。これはその……たまたま見つけただけ」

ゾフィーはそうごまかしました。

しかしローベルトは、薄々真相に気づいていたのかもしれません。

 


「白バラ」たちは逮捕されてしまった

1943年2月18日。

ショル兄妹はカバンいっぱいにビラを詰め、足早にミュンヘン大学を目指していました。

第6弾のビラを大学で配布するつもりだったのです。

ミュンヘンで抵抗の機運は高まっていました。

スターリングラードでの大敗により、ドイツ国民の間では不満が爆発寸前。この一ヶ月前には、大勢の学生たちが抗議デモを行い、ミュンヘンを練り歩きました。

ナチスへの公然とした反抗でした。

二人は大学構内の何カ所かにビラを置きました。

それからゾフィーは残ったビラを手に取り、3階からホールの吹き抜けにバラ撒いたのです。

「お前たち、そこを動くな! 逮捕する!」

誰も居なかったはずのホールで、突然声がしました。

用務員のヤーコブ・シュミットがホールに入って来たのです。

ちょうどその時、講義室から学生が出てきました。

兄妹は人混みに紛れて逃げようとするものの、シュミットは執拗に追いかけ、ついにハンスを捕らえました。ゾフィーも観念して兄に続きました。

ミュンヘン大学前につくられた記念碑

通報を聞き、大学にゲシュタポが駆けつけます。

しかし彼らは目を疑いました。落ち着いた様子のショル兄妹は礼儀正しく、大それた国家反逆行為をするようには見えなかったのです。

ゾフィーはゲシュタポの捜査に対して、シュミットの誤解だと主張しました。

二人の堂々とした話しぶりを見て、尋問官は無実だと思ったほどです。

しかし兄妹のアパートからタイプライターや謄写機等の証拠品が押収されると事態は最悪の方向へ。

その中にはクリストフ・プロープストと筆跡の一致する手紙が含まれており、彼も逮捕されました。

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