『おんな城主 直虎 完全版 第壱集 [Blu-ray]』/amazonより引用

おんな城主直虎感想あらすじ

『おんな城主 直虎』感想レビュー第8回「赤ちゃんはまだか」 側室問題とがっぷり四つに組む

こんばんは、武者震之助です。
大河はスポーツイベントとのバッテイングが避けられませんが、先週はフィギュアスケート四大陸選手権男子シングルフリープログラムと重なったせいもあり、視聴率が落ち込みました。

一方でこんなニュースも。

◆市原隼人、『直虎』での“マッチョ美坊主”が話題 “傑山さま”ロス起こるか?(→link

「さま」付けより、「セコム」付けの方が私の観測範囲では多い気もします。巷で人気の『刀剣乱舞』のあるキャラクターに似ているという声もあるそうです。坊主頭というのも人気の秘訣でしょう。時代劇というのは、月代や坊主によって意外でレアな魅力が引き出されるものです。「女性に受けないかもしれない」と月代や坊主を避けるのも考えものです。

 

子供ができないしのの怒りの矛先は次郎法師へ

さて、今週の本作は、現代にも通じる「赤ちゃんはまだか」問題に殴り込みをかけます。
井伊直親が奥山朝利の女(むすめ)・しのを娶ってから早四年。駿府では松平元康の妻・瀬名が次々に子を授かる一方、しのは全く身ごもる気配がありません。しのの怒りの矛先は、理不尽ながらも恋敵と言えないこともない次郎法師(井伊直虎)へと向かうのでした。先週は次郎の存在が直親と小野政次の間にひびを入れておりましたが、今週は直親としのの間にくさびを打ち込むことになります。

しのに八つ当たりをされた次郎は、懐妊しないことを気に病む彼女のことを気遣います。次郎の場合事情は複雑でして、南渓和尚が暢気に言うように「しのが懐妊しないなら次郎を還俗させ、直親の正室にする」ことになりかねません。

井伊谷の外では天下が動いています。三河を併呑した今川家は、織田家に狙いを定め絶好調。織田家滅亡も間近ではないか、と言われています。
駿府といえば、瀬名(築山殿)とその夫・元康はなんだかんだで夫婦仲が良い様子。瀬名はその最期から逆算されて、プライドが高い悪妻とされることが多い人物です。しかし本作は、プライドの高さと気の強さはあるものの、なかなか魅力的で愛らしい女性として描かれています。昨年の豊臣秀次もそうでしたが、今まで悪く描かれてきた人物に人間味が加わり魅力が引き出されると嬉しくなります。それと同時に今後を思うと瀬名と竹千代母子を見ているだけで辛い気分にもなるのでした。

元康がどんな男かと問われた次郎は、南渓に瀬名から聞いた話をします。一人囲碁をうち、しかも腹を立てて盤面をぐしゃぐしゃにするという竹千代。碁盤をぐしゃぐしゃにすると言えば、昨年の真田昌幸を思い出させます。あの天敵同士が同じ趣味だと思うとちょっと面白いです。

 

『面倒臭い女だなぁ』という態度がアリアリと

しのは懐妊に効果のある泥鰌(どじょう)を毎日食事に出し、直親をうんざりさせてしまいます。
直親に「また泥鰌かあ。このままだと井伊谷から泥鰌が消えてしまうんじゃないのか」と冗談を言われ、うつむき泣き出してしまうしの。そして「私が懐妊しなかったら還俗したあの人と結婚することになれますもんね!」と嫌味を言ってしまうしのです。
ここで直親が「いやいや、娶るならあの人でなくて若い女子だろう」と言うものだから、しのはますます「若い女子!」と叫び泣きじゃくるのでした。

腫れ物にふれるような妻にげんなりする直親の気持ちもわからなくないのですが、それ以上にこれはもう直親が悪いと問い詰めたくなります。口調や態度が、次郎との時と違い過ぎます。表面的にご機嫌取りをしているだけで、『面倒臭い女だなぁ』と思っている気持ちが態度に出ているんですよ。次郎と接している時と目の輝きまで違いますからね。

何かよい懐妊に効く薬がないかと昊天に相談した次郎。僧が精力剤について語るというのもシュールではありますが、漢方薬の知識の一種ということでしょう。高いけれども麝香がよく効くと聞いた次郎は、大切な鼓を換金し駿府で買うことにします。で、そのおつかい役になるのが小野政次。なんで俺がと不満げな政次は「それを自分で飲んでいっそ孕めば?」ときつい嫌味を言います。次郎は怒りますが、政次だって嫌味のひとつもそりゃ言いたくなりますよね。

ベビーラッシュは直親夫妻だけを避けて井伊谷にもおとずれているようで、政次の弟・玄蕃としのの妹・なつの間にも赤ん坊が生まれています。子を生まれる秘訣は「愛」と真顔で返す玄蕃。この人ってちょっと空気読めないですよね。慌ててなつがフォローに入ります。

 

今川義元の目的が上洛ではなく「尾張侵攻」

ここで勢力図が出て、今川領土の伸張が画面に表示されます。昨年のノブヤボマップが秀逸で毎年使わないかと思ったほどですが、今年もすっきりしていて見やすいですね。大名の顔写真が入るのは昨年からの影響でしょうか。

政次は新野左馬助とともに今川氏真の元に参っています。この氏真の、高貴であるがゆえに鈍感そうなお坊ちゃまぶりが絶品です。この傲慢で軽薄なお坊ちゃまが、来週以降暗黒化してある意味父親以上に井伊家を苦しめるのかと思うとゾクゾクします。
そんな氏真から褒められた元康は、大げさに謙遜をするのでした。今川家の尾張侵攻のため、井伊家は槍二百振をおさめるよう割り当てられます。

次郎の母・千賀はついに直親に側室を置くようにするつもりだと、次郎に語ります。千賀自身、井伊直盛との間の子は女児の次郎しかいません。男児を授からなかった彼女も、辛い目にあったのでしょう。しのの気持ちは最もわかっている存在と言えます。
それでも千賀は、武家の女性ならばそれも仕方のないことだと、しのに対して最も手厳しい態度を見せるのです。

母娘の語り合う場に、井伊家に戻った政次が土産を手にして帰って来ます。まず千賀に美しい扇、そして次郎に麝香を手渡す政次。次郎は今渡さなくてもと嫌がりますが、政次はわざとそうしたのでしょうか。
次郎は千賀から麝香をしのに手渡してもらうよう頼みますが、千賀は自分で渡すようにと突き放します。

井伊直盛は直親、重臣らを集めて今後の対応を協議します。いよいよ尾張攻め、まさか負けることはないだろうと、井伊家の面々は余裕を見せています。負けることのない戦なのであるし、武功をあげるためにも直親は初陣として参戦したいと言い出します。
しかし直盛と政次は、戦の場では何があるかわからない、跡取りは居留守をしてもらわねば困ると直親を止めます。ここで直親を止められなかったらと想像するとぞっとしますね。薄氷を踏むようなスリルがあります。

そしてもうひとつ注目したいのが、今川義元の目的があくまで三河侵攻の次にある尾張侵攻であるという点です。
桶狭間の戦いというと、「上洛を目指した義元が織田信長と衝突する」通説が有名ですが、本作ではきっちりと軌道修正をはかっています。この時点で信長が全く出てこない点もよいところです。
この時点では今川家にとって、また大半の人々にとって、信長は取るに足らない存在だと示すことができているのです。実は信長が大物だとわかっているのは、後世の人間だけです。『軍師官兵衛』は主人公や播磨情勢そっちのけで前半からやたらと信長を出すという失敗を犯していましたが、今年は違います。昨年『真田丸』のように、今年も織田信長を適正な扱いで描いているところは好感が持てます。

 

「もう側室をもらうしかない」直親、いよいよ腹を決める!?

次郎はしのに麝香を届けますが、しのは険しい顔できっぱりと断ります。次郎が親切にすればするほどしのの疑心暗鬼はつのり、ついにはこう言います。
「次郎様は私に子が授からなければいいと思っているんでしょう、そんな人からをもらえるわけないじゃない!」
これには流石次郎もキレます。
「情けない! あまりに情けない! お前の言ったこと、全部父と母に言いつけるぞ!」

しのもやっとここで焦り次郎を止めようとすがりつき、次郎に突き飛ばされます。そこへ直親が帰宅。
「次郎様が暴力をふるいました! 妊娠していたら流産するところでした!」
泣きながら直親に抱きつくしの。なんという修羅場。これはしのも悪いのですが、当主夫妻に言いつけると最終手段を持ち出した次郎もちょっとひどいと思います。ネチネチとした腹の探り合いではなく、思ったことをストレートにぶつけあっているので、そこまで嫌な感じはありませんが。

しのの理不尽さにぐぬぬ……と歯ぎしりしつつも寺に戻り、座禅を組む次郎。そこへ直親がやって来ます。
そうやってこそこそと、しかも夜中に次郎を訪問するからしのがキレるんじゃないかと突っ込みたいのですが、一応しのの寝たあとに来たそうです。直親は昼間の妻の行動を謝ります。直親もすっかり妻に疲れている様子ですが、この時の態度からおそらく彼は妻をちゃんと気遣って接していないんだろうな、という様子が伝わって来て辛いものが……。
直親は、このままではもうどうしようもないから、もう側室をもらうしかないと腹を決めています。次郎は「それはそうだけど、今の様子でしのは大丈夫?」と疑問を投げかけます。しのを説得しなければどうにもならないでしょうねえ。

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