島根県美保関沖(みほのせきおき)で夜間訓練中の日本海軍艦艇4隻が次々に衝突。
駆逐艦「蕨(わらび)」が沈没し、駆逐艦「葦(あし)」が大破して、死者・行方不明者あわせて119名という惨事に見舞われました。
美保関事件と呼ばれる同事件を振り返ってみましょう。
お好きな項目に飛べる目次
お好きな項目に飛べる目次
戦艦「長門」ら戦艦への魚雷攻撃への訓練で
この日、午後10時に始まった訓練。
戦艦「長門(ながと)」を旗艦とする戦艦5隻に対し、軽巡洋艦「神通(じんつう)」と軽巡洋艦「那珂(なか)」を旗艦とする第26、第27駆逐隊が、魚雷攻撃を試みるという想定のもとに進められていました。
この訓練は、ワシントン軍縮条約の結果を受けてのもの。
日本海軍が主力艦の保有数においてアメリカやイギリスなどに劣る現状を踏まえ、仮にそれらの国と戦争になった場合、相手海軍の水上艦艇に対して有効な打撃を与えるにはどうすべきか?
そんな考えのもと、水雷戦隊による夜間攻撃の練度を向上させるために計画したものだったのです。
午後11時16分。
燈火を消して敵艦隊役の戦艦群に背後から接近を試みていた「神通」の前を、1隻の無燈火の駆逐艦(艦名は不明)が横切ります。
「神通」の艦首が「蕨」に衝突
「神通」はかろうじてこれを避けました。
と、その直後に反対方向から、やはり同じく無燈火で航行してきた「蕨」を発見。
「神通」は急速後進をかけて衝突を回避しようとしたものの間に合わず、午後11時20分、「神通」の艦首が「蕨」の艦橋と煙突の間に突き刺さるように衝突したのです。
たちまち「蕨」は、艦首を上にして沈没しました。
その数秒後、「神通」に後続していた「那珂」は、「神通」の異変に気づき、「神通」への追突を避けようと針路を左に転針しました。
しかし今度は「那珂」に併進していた「葦」の艦尾に衝突。
「葦」は後方の3番砲塔から後ろが切断され大破。
応急の防水処置が功を奏し、何とか沈没は免れました。
ところが……。
※続きは【次のページへ】をclick!