そろそろ視聴率低下を分析するニュースも出てきましたが、大河の視聴率がじりじり下がること、的外れな分析が出るのは春の風物詩です。
気にせずいきましょう!
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サブタイトルは祝言……まさか普通の結婚式じゃないよね?
三連休の中日、春の陽気にふさわしいおめでたいサブタイトル「祝言」です。
今まで毎週騙し討ちばかりの中、さわやかな展開になる……わけない!
普通の結婚式ごときをわざわざ45分間やるわけがないじゃないですか。嫌な予感がしますねえ。
さて北条に沼田を戻せとせっつかれた徳川は、策を使うことにします。真田家の対応に苛立つ室賀正武を懐柔し、昌幸を亡き者にしようというわけです。
この懐柔場面での正武の表情と言葉が切ないんですね。家康の昌幸への悪口には乗らず、昌幸の実力を認めて庇うのです。
家康はここで追い詰めにかかります。
海士淵(あまがぶち)の城に他の小県国衆は関わりが無い、と説得されると正武は動揺します。さらに家康のあとを本多正信が駄目押しします。
昌幸が亡くなり、信幸が当主になったと室賀殿の口から聞けば家康は喜ぶ、と。
一方、信繁は梅と結婚宣言。
三十郎が「てっきりきりとかと思った」と言い、佐助が叩いてたしなめます。
そういえばきりはどうなってしまうんでしょうか。
信繁は身分のこともあるから梅は側室になる、でも祝言もあげるし他に妻を娶らないから実質的には正室だと説明します。
堀田兄妹は喜びます。こういう側室=愛人という感覚を否定するのは丁寧な仕事です。
信繁は家族の説得に。まずは最も難易度が低い信幸から。大喜びの一方で、意外とませていた弟に驚く兄・信幸でした。
「でもお前いつからつきあってんだよ〜?」
「つきあうって定義はどこから?」
「そりゃやっぱ、キス(口吸い)っしょ!」
「そういう話はどうかと思う」
「ごめん、今の忘れて」
「あ、これまだ誰にも言っていないけど、実はもう子がデキてるんだよね〜」
「キスどころじゃねえし! お前そんな顔してやることやってんじゃん!」
みたいな兄弟の会話を聞くと、ああ、こいつらも実年齢高校生くらいだしなあ、とほのぼのします。
父・昌幸も大喜び。これでまた人質要員ゲットだぜ、と彼らしい喜び方。
背後で話をふられた高梨内記はひきつった笑顔で、のけぞっています。
信繁も、梅は丈夫だしいい人質になるよ、と念押し。
問題は母・薫です。祖母・とりは賛成しますが、いずれ京都からお姫様を嫁にするつもりだったのに、と怒ります。
話の合う相手が欲しかったんですかね。しかも口を滑らせて産まれてくるのが男なら真田の世継ぎになると口走ったため、信幸の病弱な嫁・こうが「申し訳ありませえええええん!」と慌てます。
薫は言ってしまったともっと大慌てです。こうさん、お気の毒に。
薫説得のため、信繁はどうするのでしょうか。
まず三十郎が美しい百合の花束を持って来ます。おしべの花粉を取っているところが芸の細かさですね。
さらに佐助は天井からあやしげなものを焚いて薫の居室に煙を流し込んでいます。そこへ信繁が入ってきて、結婚の件をまた持ち出します。
薫は頑なになりすぎたかもしれない、と柔らかいモードです。
ところが薫は、信繁の弁が立つ口調をたしなめ、好きなんだから一緒になりたいと素直に言いなさいよ、と返します。
天井裏の佐助がアロマオイルを倒してしまいます。
気づいた薫、想像以上のたくましさで薙刀を天井に突き刺すお約束。「逃げろーっ!」と警告する信繁。
と同時にここでネタばらし。花束とアロマテラピー効果で結婚認めさせようと作戦は大失敗し、薫は取り付く島もない状態に。策士策に溺れていますねえ。
「おまえも妊娠してないか?」という心ない質問に切れるきり
弱った信繁は昌幸に相談。
昌幸は薫を説得すると言いますが、薫に弱い昌幸にそんなことできるのでしょうかねえ。
昌幸、男の色気作戦というか夫の甘え作戦というか、薫の手を取ってぽんぽんと叩きながら「薫ちゃんのお目にかなう相手をゆっくり探せばいいし、ここは許してよ〜」と、説得というよりお願いモード。
薫はふくれて、それでいて陥落しかけているのか、ぐにゃっと昌幸の手の方へ体重をあずけて「でもぉ、祝言するのは嫌〜。私は出ないしぃ」と甘えてきます。
怒っている時は背筋がぴんとしているのに、甘えると芯がくにゃっとする高畑さんの演技が上手です。
そして昌幸「祝言なんかするわけないよ」とあっさり認めてしまうのでした。父上の天敵は妻なのか……。
一方で驚いているのは内記。てっきり若様は娘のきりといい感じかと思っていたのに何でだよ、と娘に当たります。
客観的に自分の娘を見れないのか、とツッコミたいのはやまやまですが、まあ例の櫛の一件とか知りませんしね。
身分でもルックスでもうちの娘が勝ちだと思っている地侍の娘ごときに、しかも妊娠までしていることに納得できない様子の内記。
お前も妊娠していないか、と聞く父にきりは引きつります。せっかく娘が美人に育ったし、ワンチャンあると思っていたんでしょうねえ、内記。
きりは梅の元へ、お祝いに行きます。
三十郎と佐助に鯉を持ってこさせたきり。妊婦に鯉はよい食べ物とされていますからね。ちょっと哀しい気遣いですね。
きりは気丈に振る舞い「お似合いだものね」と信繁に言います。
信繁と梅は悪意がないのでしょうが、きりの心に刺さる言動をしてしまうんですよね。ここできり、意外と男っぽい梅と、討たれ弱いところがある信繁はお似合いだと言うのです。
きりは二人の前から去ると、一人泣き出します。
そこへ信幸がやって来ます。
きりは「私は慰めて欲しいの!」と無言の主張をしながら信幸の弟はいるかという問いに答えず泣きじゃくります。
信幸に慰めを期待しても無駄とわかったところで、やっと「信繁はいる」と答えるきり。
信幸は、祝言はなくなったと信繁に伝えます。納得できない信繁ですが、梅と信幸は仕方ないと言います。
相手にされませんが、きりも祝言はした方がいいと言っています。
梅は反対を押し切って、今夜が私たちの祝言だからと宣言します。鯉の鍋を囲み、真田家の家紋の由来でもある州浜が歌詞に出てくる歌を口ずさみ、楽しい夜を過ごす皆でした。
有働アナのナレーションが、側室を含めて生涯四人の妻を持つとネタばらしをします。
現時点では三名まで、キャストが決まっています。最後の一人は終盤、かなり若いキャストで出てくることでしょう。
室賀は、本多正信の策で徐々に追い込まれ
一方、海士淵には徳川の金で真田の城・上田城が完成。
大事なことなのでもう一度言いますが、徳川の金で建てました。
出浦昌相はここで昌幸に、室賀正武が祝賀に来るそうだと言います。さらに、徳川と何やら通じているのではないか、と。
昌相は、正武に浜松城で何をしていたか聞いてみたらどうか、と提案。もし誤魔化すようならばクロだぞ、というわけです。
そこで昌幸は、正武と話し合います。
正武はこの城は真田のためのものではないな、と詰め寄りますが昌幸はのらりくらりとかわし、信幸に話を振ります。
信幸は、「そういえば室賀様って美肌ですよね。鰻が美肌にいいらしいですね。室賀様は最近浜松に行ったそうですけど、名物の鰻を食べて来たんですか?」としょうもないことを前振りにして、浜松行きについて尋ねます。
あまりに信幸の話の振り方がおかしいので、「黙れ小童!」を期待した人も多いと思います。
しかし……正武はあくまで「ここ十年浜松なんて行っていない!」と真面目に否定するわけです。
昌幸のようにのらりくらりと誤魔化す器用さがない。これが命取りになるわけです。
正武はまた浜松に向かいます。
もしかすると彼は断るつもりであったかもしれません。
しかし正信は「承諾してくださって主も喜んでいます!」と断るはしごを外し、さらに助っ人までつけると言い出します。
人のよい正武が断れない雰囲気になってきました。
刺客を制した昌幸と、それを知らない正武 凄まじい緊張感
梅は真田家の屋敷に引っ越し、姿も農民の娘から改め武家の奥方風になりました。
綺麗ですね、見違えるようです。信繁も大喜びで引っ越し作業をしております。
一方、昌幸や昌相らは室賀正武対策を話し合っています。徳川に焚きつけられた正武が昌幸暗殺を狙っているに違いない、先手をうって返り討ちにすべきだと提案する昌相。
そのチャンスとして、信繁の祝言を利用しようと昌相は言い出します。
信幸は反対しますが、昌幸はこの策に乗ります。せめて弟だけはこの策から守りたいと、苦悩する信幸。
信繁に祝言をすると伝える時も、どこか冴えない顔です。
室賀正武は昌幸らの読み通り、祝言での襲撃計画を立てます。
企みを知らない皆は、楽しそうに祝言の様子を進めます。ここまで来ても信繁の眉毛が薄いと絡んでくるきりに、梅は二人きりになって釘を刺す。
私の夫にちょっかい出すな、ではなく「きりちゃんの気持ちがわかるからもうやめて」と言うあたりが、この人の恐ろしさですね。
信幸は、妻のこうに信繁を見張り、決して広間から出すなと頼みます。
そして祝言を迎えた二人。白無垢の梅が綺麗ですね。
華やかな雰囲気で何ともめでたい中、室賀正武は緊張した顔です。
正武の隣に座った昌幸は、囲碁でもどうかと声を掛けます。
敢えて二人きりになるよう、広間を出る二人。ここで徳川からの刺客二名は、あっさりと出浦昌相によって一太刀のもと斬り捨てられます。
声をあげる間もない電光石火、昌相かっこいい!
しかしこれで正武は孤立無援に。
碁盤に向かう昌幸の手がかすかに震えます。信幸はそんな二人を見守っています。襖の向こうでは、出浦昌相と高梨内記もまた様子をうかがっています。
凍てつくような緊張感のすぐ隣では、賑やかな祝いの宴が続いているのでした。
信繁と梅は、きりにも酒を勧めます。
これはちょっときりが可哀相。案の定きりはふらっと縁側にやって来ます。
その位置がなんと、緊迫の碁盤のすぐ側です。
敢えて信幸の近くに座ることで、「私をかまってよ」とアピールしているようです。
しかし今はそれどころではなく、信幸は小声できりを追い払おうとするのですが……きりは確かに邪魔ですが、緊張感を増す役目を果たしています。
「家来にはならぬ」と昌幸に言い残すと、そのまま正武は……
信繁が、姿の見えない兄を探しに広間を出ようとすると、それを察したこうが「真田名物雁金踊りを披露します!」と隠し芸をやると宣言。
「姉上がですか!?」と信繁もびっくりします。
私も驚きました。おこうさんは病弱ですからねえ、立ち上がる時点でよろよろしていますからねえ。
苦しそうな顔で踊るこう、偉いですね。夫の言いつけをちゃんと守ってえらい。
昌幸はついに「懐に刀を隠し持っているな、わしを殺しに来たのだな」と正武に切りだします。
襖の裏では出浦昌相が棒手裏剣を構えています。
昌幸は既に徳川の刺客は始末済みだから亡骸は徳川に届けよう、と相手を追い詰めます。
もうお前は負けた、わしの家来になれば許すと持ちかける昌幸。
おそらく本気でしょう。この騙してばかりの男が、ここでは本気で幼なじみにそう持ちかけたのです。
正武は今までの人生を振り返り、ライバルであった昌幸がいつも自分に先んじていたと語ります。
だが人として、武士として、昌幸に劣ったと思ったことは一度もない、と言い切る正武。
「わしの勝ちじゃ」と碁石と小刀を置き帰ると言う正武。
去り際、正武は昌幸の元へ近づき「おぬしの家来にはならぬ」と隠し持った棒手裏剣を抜きます。
しかしそれより早く、出浦昌相の手裏剣が正武を襲った!
昌武に斬られ、信幸、高梨内記にも攻撃を受け、ついに斃れる正武。
それでもなお、うめきながら這い進む正武に昌相がとどめを刺します。
この場面、大河では限界のえげつなさでした。
低く呻きながら、血まみれになりながら、廊下を這う室賀正武の姿はかなり心にくるものがあります。
この一部始終を目撃したきりは、信繁を広間から連れてきて見せます。
出浦昌相は室賀正武が暗殺しようとしたので返り討ちにしたと説明。
信繁はそれで祝言を挙げたのかと納得した様子。
きり以外は皆落ち着いているのですが、きりだけは「あなたたち、これでいいの!?」と泣きながら怒ります。
その後、信繁は、信幸に心情を吐露します。
室賀の骸を見ても動じなかった、父の策を見抜けなかったことだけが悔しかった、そんな自分が好きになれないと。
あのとき梅のために怒り、泣いたのは自分ではなくきりであった、と。
そんな風に人間性を失うことが恐ろしく悔しい、一体どこへ向かっているのか、と迷い泣く信繁。
悩め、それでも前に進んでいくしかない、と弟を励ます信繁なのでした。
MVP:きり
今週は賛否両論あるであろう、きりです。
きりは何かの装置だと以前書いたのですが、今週でますますその確信が強くなりました。
あの祝言の場で怒り泣くことで、鬱陶しいと思われつつも、視聴者の気持ちや信繁自身の迷いをうまく形にしているのです。
きりは梅を評して「男らしい」と言いました。
梅が、策や汚い部分を受け入れて納得させられる部分を、きりはそう評したのではないかと思います。
梅は春日信達謀殺の件で信繁を納得させられる答えを用意していましたが、その聡明さと今回の冷静さは同じものなのです。
梅と一緒にいれば、信繁はどんどん策に溺れていく人物になるでしょう。
しかしそうではなく、策とは違った理念で動く男となるためには、きりのようなパートナーが必要である、そういうことかもしれません。
特別功労賞は「こう」で。踊っているだけでこちらがハラハラしてしまう中、頑張って隠し芸大会をしていました。
総評
結婚式が陰謀の舞台になることは、古今東西よくあること。
しかし主人公側が仕掛けるとなると、やはり勇気のいることだと改めて思いましたね。
状況がはっきりしない室賀正武の最期と、信繁と堀田氏の婚礼をからめるとは、実にうまい脚本でした。
祝言の華やかさ、賑やかさの中にある強烈な謀殺劇。
明暗がはっきりした異色の回でした。
主人公の成長としても大きな意味があり、梅の一言でふっきれたはずの信繁が、策に溺れていて本当によいのかと自問自答するきっかけになった重要な回です。
そうだ、やっぱりこの作品の主人公は信繁なのだと改めて思えました。
そして何といっても、室賀正武という悲運の人物に愛着を持たせてくれた三谷氏はじめとするスタッフに感謝です。
史料にない人物をぞんざいに、小物として強調するのではなく、ちゃんと血の通った人物に仕立てたのは素晴らしいことです。
正武の「昌幸に劣っていると思ったことなどない」という台詞もぐっと来ました。
武田勝頼、春日信達はじめ、すぐ去る人物にも深い愛情を注ぐ本作の魅力がいかんなく発揮されていました。
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