女武将――と聞いて誰を思い出すであろう。
今だったら、やはり井伊直虎が真っ先にアタマに浮かぶかもしれない。あるいは大三島(愛媛県)・鶴姫の悲恋を挙げる方もおられるだろうか。ただいずれにせよ、こと関が原の戦いに関連する女武将と言えばやはり彼女しかいないと思われる。
誰あろう、富田信高の妻(側室)だ。
美しく強い若武者と評されたその女武将は「巴御前の再来のようだ」とも称され、瞬く間にして戦場に名を轟かせた。
安濃津城(あのうつじょう)の戦い――いざ、開戦!
戦場に現れた「美しい若武者」は俺の嫁なのか!富田信高と安濃津城の戦い
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海でばったり鉢合わせって水軍か~い! →九鬼水軍です
◆伊勢・安濃津城の城主だった富田信高さん。
元は、父の代から秀吉配下の大名でしたが、家康の上杉討伐に参戦。三成の挙兵を聞くと、もとより仲が悪かったこともあってか、小山評定で東軍につくことを決め、いち早く本拠地・伊勢へ戻ることとしました。
そこで運悪く西軍になった九鬼嘉隆と鉢合わせしてしまいます。織田信長の元で毛利水軍とやりあった九鬼一族も健在だったんすね~。
大軍相手に手勢わずか1,600 おまけに海上は封鎖なり
◆東西両軍のぶつかりそうであった東海地方において、安濃津城は交通の要衝でした。ここを押さえねばマズイ!
そんな場所だから当然最初に狙われるわけで、距離的に近い西軍にきっちり囲まれてしまいます。
おまけに海上も封鎖されて援軍要請の使いを出すことも出来ずじまい。まさに絶体絶命です……。
あの美しく強い若武者は誰ぞ!?
◆到底叶わぬ大軍に囲まれた富田信高さんでしたが、気合は入っておりました。
敵の攻撃が始まるや、自ら打って出て激戦に! とはいえ多勢に無勢は変わりなく、敵兵に囲まれてしまいます。
そのときでした。
若い騎馬武者が単騎で駆けつけ、見事、信高を救援!
混乱のあまり信高はその若武者が誰だかわからず、命からがら城へ戻るときに初めて気づいたといいます。
「おまえ、オレの嫁やないかーい!」
これもまた関が原であった
◆いくら頑張っても、やっぱり大軍には勝てるわけもなく、安濃津城は間もなく開城。
出家と引き換えに和議となり、信高さんは高野山へと落ちることとなります。
なお、関ヶ原の決着がつき、東軍が勝利するともちろん富田信高さんは許され、所領も加増されました。
さて、この女武将、宇喜多忠家さんの娘だと伝わっております。忠家さんは、あの宇喜多直家さんの弟ですから、姪っ子にあたるワケですね。
謀将の姪っ子が美しき武者。宇喜多秀家さんがイケメンだというのも、イトコにそのような言い伝えがあるとすれば頷けるかもしれません。
漫画・アニィたかはし
【毎週・月曜日連載】
戦国ブギウギの書籍版です!