淳仁天皇を擁立し、光明皇后の力を得て一時は権力を手中に収めた恵美押勝。
その最期は、惨めなものでした。
都を逃げ出し、再起を図ろうとするものの、孝謙上皇と吉備真備の政治・軍事力によってあえなく道を塞がれ、船で逃げようとしたところ藤原広嗣と同様に「逆神風」が吹いて陸に押し戻され、あえなく処刑されてしまいます。
斬ったのは同族の藤原蔵下麻呂。
孝謙上皇の治世に入ってから、次々に起こる波乱はなぜなのか。
いったい彼女はドコを目指しているのか。さりげなく日本史上、屈指のヤリ手ではなかろうか?
あと何回変身を残しているのだろう……。
◆一口に藤原氏と言っても、流れは複数あります。
大元は藤原不比等の息子である四兄弟から分かれたもので。
・藤原武智麻呂(藤原南家開祖)←恵美押勝
・藤原房前(藤原北家開祖)←後の藤原道長
・藤原宇合(藤原式家開祖)←藤原蔵下麻呂&宿奈麻呂
・藤原麻呂(藤原京家開祖)←マイナー
という感じですね。
この頃は南家と式家でゴタゴタしておるんですが、結局、天下を握るのは北家でして。
まぁ、それは後ほど。
◆和気王は、天武天皇の曾孫さんです。
恵美押勝(藤原仲麻呂)が反乱に際して軍備を整えていたことを称徳天皇(元・孝謙上皇)に伝え、出世を果たすのですが、自らが皇位を望んでから運命の糸が綻び始めます。
粟田道麻呂ら複数の貴族と謀反を計画。それがバレていったんは逃走を図るのですが、結局、捕まって伊豆への流罪となってしまいます。
しかし、途中で……。
和気王は、父親の三原王が舎人親王の子供で、淳仁天皇とは叔父と甥の関係にあります。
また舎人親王が天武天皇の子であることから、本人は曾孫に当たり、天皇の座を狙えるポジションにおりました。
それを阻止した孝謙上皇。いかなる思惑があったので……?
◆奈良時代に入ってから朝廷では橘奈良麻呂の乱や藤原広嗣の乱、恵美押勝の乱と数限りない政変が起きておりました。
道鏡に入れあげつつも、そんな荒波を乗り切ってきた称徳天皇(元・孝謙上皇)は、まさにヤリ手。
和気王だけでなく不破内親王を処罰するなど、もはや誰も止められない状況になります。
そこで白壁王が取った策が、酒に溺れて暗愚を装うこと。
天武天皇系の和気王が討たれて次々に後継者候補がいなくなる中、天智天皇系だった白壁王はひっそりと過ごし、時機を待つのでした。
後の光仁天皇であります。日本史では地味キャラの一人ですが……。
◆重祚(ちょうそ)した称徳天皇にとっての悲願は何か?
それが今なお古代史におけるビッグスキャンダルの一つ「宇佐八幡宮神託事件」でしょう。
称徳天皇が寵愛していた僧・道鏡が、よりによって天皇になる――。
無謀にも程があんだろ!とツッコミたくなる事案ですが、これを任された方はたまったもんじゃありません。
もちろん、そのまま天皇にすることなどできません。
神様のご意向、ここでは「宇佐八幡の神託」を確認することにより、その資格を与えようと、称徳天皇から命令を下されたのが和気広虫でした。
彼女は弟の和気清麻呂にその任を託し、大分へ出向くことに……。
※次週へ続く
【過去作品はコチラから→日本史ブギウギ】
著者:アニィたかはし
武将ジャパンで新感覚の戦国武将を描いた『戦国ブギウギ』を連載。
従来の歴史マンガでは見られない角度やキャラ設定で、日本史の中に斬新すぎる空気を送り続けている。間もなく爆発予感の描き手である(編集部評)