歴史ドラマ映画レビュー

英国スピットファイアと戦死の恐怖を堪能できる映画『ダンケルク』

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映画『ダンケルク』レビュー
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「祖国」ってなんだ

これもまた私個人の感想ですが、彼らにとっての「祖国」が映像や概念で説明されているのもよかったです。

まずは何といっても、ドーバーの白い崖。

海を越えてイギリスに来た人が目にするという、あの白さを見ると、兵士たちの安堵感が伝わってきます。

これでやっと祖国に帰れた――そんな安堵感は、差しだされるパン、紅茶、ビール、そして緑豊かな田園風景から伝わって来ます。

祖国に帰る安堵感を、勲章を受け取るような華々しい場面ではなく、素朴な伝え方をしたことは、この映画の良さではないでしょうか。

私は言うまでもなくイギリス人ではありませんが、ラストシーン間近では帰郷したという感動でふるふるしてしまいました。

民間徴用船を見る海軍人の目線からも、勇敢さを示す祖国への誇りが伝わって来ます。

ごく普通のおばちゃんが、船に兵士を迎え入れるのがよくってね。

こういう勇気こそジョンブル魂だぞ、そう語りかけられた気がします。

 

観客をある程度置いてけぼりにはする

本作には欠点もあります。

歴史的な前提知識がないとわかりにくいというところ。

ある程度予習をしておけ、というのは歴史映画によくあります。本作はそうした映画の中でも、ハードルが高めです。

イギリス人が主人公であるせいか、あまり自分語りをしません。言わないでもわかるだろ、という前提で話が進みます。

なぜこうするのかという、自分がどう思っているのかということを、アメリカ映画のように説明してくれません。

そのせいか、ストーリー性が弱いという評価もあります。

三つの物語が交錯する構成ですし、一本感情移入できる筋が通っていないというのはそうなのです。

それもまた、本作の味わい。

イギリス人らしさがあふれる、秀逸な戦争映画です。

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著:武者震之助

※『ダンケルク(字幕版)』アマゾンプライム299円(→link

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