歴史ドラマ映画レビュー

英国スピットファイアと戦死の恐怖を堪能できる映画『ダンケルク』

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映画『ダンケルク』レビュー
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「祖国」ってなんだ

これもまた私個人の感想ですが、彼らにとっての「祖国」が映像や概念で説明されているのもよかったです。

まずは何といっても、ドーバーの白い崖。

海を越えてイギリスに来た人が目にするという、あの白さを見ると、兵士たちの安堵感が伝わってきます。

これでやっと祖国に帰れた――そんな安堵感は、差しだされるパン、紅茶、ビール、そして緑豊かな田園風景から伝わって来ます。

祖国に帰る安堵感を、勲章を受け取るような華々しい場面ではなく、素朴な伝え方をしたことは、この映画の良さではないでしょうか。

私は言うまでもなくイギリス人ではありませんが、ラストシーン間近では帰郷したという感動でふるふるしてしまいました。

民間徴用船を見る海軍人の目線からも、勇敢さを示す祖国への誇りが伝わって来ます。

ごく普通のおばちゃんが、船に兵士を迎え入れるのがよくってね。

こういう勇気こそジョンブル魂だぞ、そう語りかけられた気がします。

 


観客をある程度置いてけぼりにはする

本作には欠点もあります。

歴史的な前提知識がないとわかりにくいというところ。

ある程度予習をしておけ、というのは歴史映画によくあります。本作はそうした映画の中でも、ハードルが高めです。

イギリス人が主人公であるせいか、あまり自分語りをしません。言わないでもわかるだろ、という前提で話が進みます。

なぜこうするのかという、自分がどう思っているのかということを、アメリカ映画のように説明してくれません。

そのせいか、ストーリー性が弱いという評価もあります。

三つの物語が交錯する構成ですし、一本感情移入できる筋が通っていないというのはそうなのです。

それもまた、本作の味わい。

イギリス人らしさがあふれる、秀逸な戦争映画です。


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著:武者震之助

【参考】
『ダンケルク(字幕版)』アマゾンプライム無料(→amazon)2024年7月20日現在

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編集管理人・五十嵐利休。 1998年に大学卒業後、都内の出版社に勤務。 書籍や雑誌の編集者を務め、2013年に新聞記者の友人と武将ジャパンを立ち上げた。 月間の最高アクセス数は960万PV超。 現在は企業のオウンドメディア運用やコンサルティング業務もこなしている。

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