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イエスは心の中にいる
しかし、ジュリアンは暗い顔。
ドラードは、亡くなった医師のことを二人に告げます。ジュリアンは、仮面を恐れた無知が医師を殺したのだと、涙ながらに語り出すのです。
「イエスは十字架の上にだけいるんじゃない、きみの心の中にいる」
カルロは、恨むこともなくジュリアンにそう告げました。
そこへ、マルティノがガリレオとの面会を報告しながら戻って来ます。
マルティノとしては、ローマに召喚されたからには今しかチャンスがなかったと反論。
そんなマルティノに、ドラードがジュリアンとカルロのことを語るわけですが、マルティノは首を横に振ります。
ジュリアンが悟った神のために、ガリレオは異端審問所に呼ばれていった!
そう憤るのです。
簡単に神なんて信じるなと、詰め寄るマルティノ。
それに対し、カルロは心の声に従っただけだと語るジュリアン。
特別に強いわけでも、勇敢でもない。自分の弱さを知って、それを許さなかっただけ。
神はそんな人間に語りかける――ジュリアンは、カルロの言葉を繰り返します。
ミゲルは、ガリレオなんてどうでもいいと言い放ちます。
しかしマルティノは、納得いっていません。
ジュリアンはその医師のおかげで神を見つけたのであれば、俺はガリレオ先生のおかげで宇宙の真理を見つけた!
「ミゲル、お前の大事なものは何だ? マンショ、お前の大事なものは何だ?」
そう問われ、二人は怪訝な表情を浮かべるばかりです。
枢機卿の策
そのころ、メスキータは枢機卿に呼び止められます。
フランチェスコ1世・デ・メディチの弟です。
メスキータは、このまま東方の少年が法皇と面会すると、ヴァリニャーノがイエズス会を仕切ることになると懸念を示すのです。
大公の息の掛かったヴァリニャーノが出世しては、フェルディナンドと呼ばれる彼にとってはよくないのではないか、とメスキートは告げるのです。
彼はのちの、フェルディナンド1世・デ・メディチです。
このフェルディナンドは、少年を殺せというのかと囁くのでした。
イタリア人というと、明るくて陽気なイメージがあるかもしれませんが、歴史的に見ると陰謀と暗殺が多いと思われている側面もあります。
先ほどあげた「サン・バルテルミの虐殺」の背後にいたカトリーヌ・ド・メディシスは、陰謀に長けたフランス王妃として有名です。
佐藤賢一氏『黒王妃』という小説もそうですね。
彼女はイタリアからグルメをフランスに持ち込んだ部分もありますが、それだけでは語れません。
暗殺に長けていた印象が強いほどで、ハニートラップを仕掛ける美女軍団を抱えていたともされております。
※『王妃マルゴ』でも暗躍しますね
これは単純に、イタリアの国民性とは言えません。
特にイタリアのように、小さな勢力が分裂しておりますとそうなります。
日本の戦国時代も同じことですね。
大規模な戦争をしてあっという間に滅びかねないのであれば、陰謀でどうにかしようというわけです。
19世紀までバラバラな国だった「イタリア統一運動」の流れをスッキリ解説!
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かくして、本当に『アサシンクリード』めいた刺客がマンショとミゲルに迫ります!
土地勘のない街で暗殺者に狙われるなんてえらいこっちゃで!
二人は、素早く逃げて刺客から逃れるほかありません。
そのころ、ミゲルは宗教画を前にして考えこんでいました。
マンショとミゲル、そして刺客の追跡場面はもう眼福です。その時代の衣装を着た人の中を、駆け抜けるんですから豪華極まりありません。
二人はなんとか刺客から逃れ、子供たちと遊びます。
子供の遊びは東も西も変わらないと、やっとリラックスする二人でした。
ここで幼い頃の話になり、マンショはミゲルの生い立ちを語ります。
幼い頃に落城を経験し、生き延びたのは自分一人であったのだと。
ミゲルの故郷である千々石も、昔はのんびりとした村でした。それが城が出来て、鉄砲が伝来し、戦乱に巻き込まれていったのです。
うーん、こういう話ってあるようでなかった。
その時代の少年たちにとって、戦国時代になってゆくのは過酷ですよ。そりゃそうだ。そういう大変さをしみじみと感じました。
ミゲルを送り出したのは、兄ではなく母でした。
落城で命も危ういかもしれないから、警戒していたのではないかとミゲルは語るのです。
ミゲルはマンショの母について尋ねます。
落城前に我が子二人を残し、出て行ったのです。我が子二人を置き去りにした母には、どんな事情があったのか。マンショにもそれはわからないのでした。
ジュリアンは、祈りながらカルロのことを思い出しています。
マルティノは、人体解剖図を見つめて嬉しそうに描き写しているのです。
そのころ、マンショとミゲルは娼婦からうっふんセクシー攻撃を受けまして。
マンショは戸惑いますが、ミゲルはわりとノリノリで陥落してしまうのでした。
「行ってこい、ミゲル。好きに生きろ」
そう相手を送り出し、マンショは自分の道を見いだすべく歩いてゆくのでした。
MVP:カルロとガリレオ
出番が多いわけではありませんが、ジュリアンとマルティノに何かを伝えた二人です。
これが運命の出会いってやつか!
そう痺れました。
出会う相手が違っていたら、こういう結果ではなかったはず。
カルロは、ジュリアンの中に理解しあえるものを見いだしたからこそ、仮面を外した。
ガリレオが、突如やって来た東洋人少年を出迎え、地動説を説明したのも、彼なら理解出来ると信じたからでしょう。
総評
やっぱり本作はすごいな!
四人の少年それぞれが、東から西へ向かい、文化の異なる土地で自分とそっくりの人と出会う。
そして、人生の目的を見つける。
その目的があったからこそ、ああいう末路をたどるのだと見えて来ます。
真実はひとつではなく、見いだすものもひとつではない。
見いだす神も、心も、真実も。真っ直ぐに生きることもあるのだと、そう語りかけてきます。
四人のうち二人は、今回、そのカケラを掴みました。
本作はテーマを見せるために、人の悪い所も良い所も、きちんと見せて向き合います。
ジュリアンを置き去りにして出かけるマルティノの行動は、自分勝手で非難されても仕方の無いものであるとは思います。
それでも、それが彼の道を探求するルートなのですから仕方ない。
そういう説得力が随所にあります。
豪華な衣装やロケに目を奪われますが、それだけでないもっと大きな何かが本作にはあるのです。
【MAGI~アマゾンプライムビデオで放映中】
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
◆アマゾンプライムビデオ『MAGI』
◆公式サイト