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【ゴールデンカムイ主要キャラ考察】
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二階堂浩平・洋平:静岡県
静岡県は、明治維新後、幕臣や旗本が徳川慶喜について移り住んだ場所です。
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食い詰めて、飢死にするほど追い詰められる者すらいたとか。そんな幕臣を尻目に、慶喜が自転車を乗り回す姿は、あまりに酷いと嘆かれたものでした。
彼らの祖父世代は、そんな幕臣や旗本かもしれません。
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ちなみに本来、静岡出身者は、第三師団に編成されます。
幕臣は、政府が示す策にそって農業や商業労働者になった場合もあります。
食い詰めた静岡ルーツの幕臣旗本子孫が、食べるためにやむなく北海道に移民し、その子孫が第七師団に入ったのかもしれません。そう想像すると、切ないものがあります。
本作の第七師団には、戊辰勝ち組側の子孫もおります。
谷垣源次郎:秋田県
秋田藩は、奥羽越列藩同盟に参加しなかった数少ない奥羽の藩です。
そのため、戊辰戦争では周囲から攻め込まれ、苦しい立場に陥りました。
そんな秋田藩で活躍したのが、マタギを組織した狙撃部隊です。谷垣の祖父あたりが参加していたとしても、おかしくありませんね。
幕末から狙撃兵として、マタギの名は知られていたのです。
東北地方は、蝦夷と呼ばれる人々が住んでいました。彼らはアイヌと共通する民族とされます。特に北部は、文化や風習にも似通った点が多いもの。彼がインカㇻマッと生きていくことを決めたのは、宿命的なものも感じさせます。
北海道に移住した人々は、ヒグマに苦しめられたものでした。ツキノワグマと全く大きさが違い、積極的に人を襲う様には戦慄するほかなかったのです。そんなとき、マタギの知恵と勇気は大いに役立ったとか。
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鯉登少尉:鹿児島県
「薩摩隼人」とそのルーツを強調される彼は、第七師団でも勝ち組御曹司。
本作では例外的存在です。
示顕流ではなく、中級以下の薩摩藩士に採用された「自顕流」遣いです。新選組の話もさんざん聞かされていたとか。幕末の京都を生き抜いた薩摩隼人の子孫なのです。
彼は音之進。兄は平之丞。士族らしいネーミングセンスが発揮されています。
父・鯉登平二は薩摩閥の領域である海軍で少将にまで上り詰めています。母・ユキは同郷の出です。
薩摩隼人の欠点として男尊女卑があげられます。しかし、平二はユキに対して気遣いがある。
明治時代の薩摩出身者でありながら、他者がいる前で妻を椅子に座らせて同席させる。そんな平二は相当のジェントルマンです。海軍人らしくイギリス流を身につけたのでしょう。
そんな平二は、尾形の父である花沢幸二郎と親しい間柄です。平二からみたら幸次郎の女癖は「嘆かわしか!」となっていたのかもしれませんね。
明治時代は、お偉方の下半身事情がゆるい時代ではありますが。
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鯉登家と、その同郷の親友であるという花沢家は、幕末志士を先祖に持つルーツと想像できます。
彼のモデルは最後の第七師団長である鯉登行一とされています。
しかし、共通点は苗字くらいで、経歴や背景的にはそこまで共通していません。
2024年には、鯉登一家を模した鯉のぼりが作られました。鯉が登るという名前は,「登竜門」を連想させます。最終決戦では新選組の永倉と土方と対峙する鯉登。見事に滝を登り、龍となった姿がそこにはありました。
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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
【TOP画像・参考文献】
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一坂太郎『明治維新とは何だったのか: 薩長抗争史から「史実」を読み直す』(→amazon)
半藤一利『もう一つの「幕末史」』(→amazon)