甘露寺蜜璃(鬼滅の刃・恋柱)

『鬼滅の刃』14巻/amazonより引用

この歴史漫画が熱い!

甘露寺蜜璃のピンクと緑は今どきバッド・フェミニスト♪鬼滅の刃恋柱

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甘露寺蜜璃
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マリー・アントワネットを経てマリリン・モンローへ

バストの理想は?

サイズではなく、形です。美しさです。

ルイ16世の妻であるマリー・アントワネットのバストが109センチで、その形をかたどった陶器があります。お土産品としてレプリカも買えるとか。

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その陶器を元にしたものがクープグラスという説もあります。これは形と大きさが一致した稀有な例です。

彼女のように大きさと形が一致するケースはレアとしまして、要は

・形がよければよい

・形重視

・大きさは二の次である

というのが伝統でした。

マリー・アントワネットから時代がくだりまして、ナポレオンの妹でスタイル抜群とされたポーリーヌを見てみましょう。

彼女の時代、胸に自信がある女性は、シースルードレスを身につけ、乳首に紅を刺して見せておりました。

そんなポーリーヌのような美意識からすれば、蜜璃は一刀両断でしょう。

「確かにデカイけどぉ、それじゃまるで牛みたいっていうかぁ……どうせなら全体の形まで見せてこそでしょ」

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話が長くなりましたが、西洋だろうとバストはともかくデカイほうがいいという認識は、ハリウッドスターであるマリリン・モンローあたりの台頭から定番となった……と見なすのが有力とされます。

 

そう考えると、蜜璃の立派な体型は、時代の最先端をいきすぎていることになりますね。

上半身のみならず、下半身もご注目ください。

短いスカートにハイソックス。

脚のラインが見える制服。

前述の通り、日本人のエロスは下半身一点集中主義ですので、大正時代当時の人々が脚を見てどこまでドギマギしていたのか、そこは保留とします。

『鬼滅の刃』の下半身装備事情は、別項目でも立てたいくらいややこしいものはあります。

和装で袴なしで豪快に蹴りを入れる女性が多いものですから……日本のマナーではよろしくありません。まぁ、鬼ですからそこは仕方ありませんが。

西洋でも、脚線美が注目されるのはそこまで古い話でもない。

脚線美が求められるのは、スカートではなくパンツスタイルの男性である時代が長いことありました。

ナポレオンの配下でスウェーデン王となったベルナドットのあだ名は“美脚軍曹”。

文豪の父であるデュマ将軍も「脚がシュッとしている」と評判だったのです。

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蜜璃は露出が多いため、お色気セクシー要員のようですが、基本的には健康美を象徴する存在です。

そもそも蜜璃は、大正時代の基準では美女ではありません。

牛のような乳、異常な髪の色、大食い、怪力、大女。

見合い相手の熊か猪か牛くらいとしか結婚できないという評価は的確なのです。

それでもよいではありませんか。現代からすれば蜜璃はかわいらしい!

けれど、そこだけではありません。

彼女の本当に美しいものとは、実は心。そのことは後述します。

 

だって彼女は“バッド・フェミニスト”だから

『鬼滅の刃』に関する記事で、蜜璃や善逸のことを記すと、こんな煽りを浴びせられるかもしれません。

「フェミのみなさ〜んw セクハラする善逸が人気で、乳柱・甘露寺蜜璃がいる『鬼滅の刃』が流行してますよ〜www 涙目ww 息してるぅ?www」

彼女はフェミニズム論争で真っ先に槍玉にあがりそうな人物とでも言いましょうか。

善逸や一夫多妻の宇随天元については以下の記事にて考察済みですので、ここは甘露寺蜜璃に絞って進めたいと思います。

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『鬼滅の刃』には、大正時代らしい当時の最先端を歩んでいたフェミニストが存在しています。

津田梅子型の胡蝶しのぶです。

女医である珠世もその枠に入れてもよいでしょう。

甘露寺蜜璃の場合、そのファッション同様、2010年代以降のフェミニストと解釈できる言動があります。

「フェミニストって、ピンクとか、恋愛とか、イケメンとか、化粧とか、スカートとか、結婚願望とか、子どもが欲しい気持ちとか、そういう欲求を捨てなくちゃいけないものなの?」

こういう理屈でいくと『鬼滅の刃』もダメな作品になってしまうのか……?

フェミニズムが広まるにつれ、あるべき像が狭まり、その窮屈さに耐えられない――そんな困惑の声も出てきます。

確かに胡蝶しのぶや珠世のような女性だけが正しいとされたら、たまらない人は絶対に出てくるはず。

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セクハラをした前田まさおの制服を焼き捨て、勉強に勉強をして賢くいなければならなくて……それはそれで、ものすごく厳しい世界ではありませんか!

でも、私はワルいフェミニスト。甘いものとふわふわしたもの、恋愛が大好き。でも女性が尊重される世の中が理想だし、そういう落ちこぼれとして生きていきます。

それでいいんじゃない?

そういう問題提起だってできる、それが2010年代以降の世界です。

2014年にロクサーヌ・ゲイが『バッド・フェミニスト』を発表すると、フェミニズムはより意義深いものとなりました。

そっか、フェミニストでもセクシーな服を着てもいいし、オシャレしてもいいし、恋焦がれてもいいんだ!

別に修行僧の戒律じゃないんだからさ。

それに見た目より中身を見てこそフェミニストなんじゃない?

あっけらかんとそう言える、そんな時代が到来したのです。

ですから、蜜璃は「フェミニズムとしてどうなの?」と問いかけられたらこんな答えで良いでしょう。

「バッド・フェミニスト路線です。2010年代以降の流れですね」

もうひとつ【ギルティ・プレジャー(罪悪感のある喜び)】という概念もあります。

体に悪いとわかっていても、お菓子を食べてしまう気持ちのこと。作品に問題があると理解したうえで、それでも好きだと苦笑しつつ楽しむ状態です。

ゼロか100か、白か黒か、厳密に意見表明をしなければならない暗黙の了解はいりません。

ファンなら何があろうと肯定しろ、批判は許さない!そういう空気を読めない奴は叩け!

そういう不健全な流れですね。

それもそろそろ終わりにしましょう。

ここはちょっとまずいけど、楽しいと思う気持ちは自由です。

フェミニストだからこれはダメと言い続けろ!そんな規定は実の所おかしなものです。

蜜璃関連はむしろ考え抜かれております。

それに、蜜璃の細かいところを見ていくと、ジェンダー描写での地雷を避けている巧みさがあります。

・鬼殺隊女性のセクハラ服は、しのぶのように断固拒否することができると示されている

・蜜璃はモジモジしているようで、あっけらかんとセクシーな時には拒絶や羞恥、嫌悪感を見せていない

・蜜璃の現代人から見ればセクシーなポイントは、大正当時からすればむしろマイナスであると示されている。男の目や社会の目を意識して露出しているわけでもない

・しのぶと実弥が、セクハラ隊士・前田を制裁している。善逸も叱られている。セクハラは不愉快で悪だという価値観がある

・殿方探しが目的のようで、蜜璃は社会に役立つ正義に目覚めている

・典型的フェミニストであるしのぶと対立していない、むしろ仲は良好

・怪力かつ意思強固である。腕力で屈服させられ、搾取される危険性がない。これは美少年である伊之助も同様

考えに考え抜かれて、ジェンダーでも転ばないようにしている。

最先端をむしろ追いかけている。

それが蜜璃なのです。

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