こちらは3ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
【本寿院】
をクリックお願いします。
お好きな項目に飛べる目次
お好きな項目に飛べる目次
幾島や村岡局がサポートに回り
徳川斉昭という人物は、なかなか問題がありました。
まず女性関係が最悪です。
黒船来航時も「交渉すると見せかけて異人を殺せ!」とかなんとか言い出して、阿部正弘を困らせるような人です。
-
史実の徳川斉昭は幕府を揺るがす問題児だった? 青天を衝け竹中直人
続きを見る
藤田東湖の影響をバリバリに受けた後の水戸藩はとんでもないこと(天狗党の乱など)になりますし……まあ、トラブルメーカーなのです。
-
史実の藤田東湖は水戸藩を動乱させた危険人物?青天を衝け渡辺いっけい
続きを見る
-
夫の塩漬け首を抱えて斬首された武田耕雲斎の妻~天狗党の乱がむごい
続きを見る
大奥からすれば、あの斉昭の息子という時点で、一橋慶喜は大きな不利を被っておりました。
最初っから「最低! 引っ込め!」のブーイング状態なのです。
これをどうやってプラスに持っていくか?
そこが篤姫のミッションであり、非常に困難なものでした。
むろん彼女一人では難しいため、幾島(ドラマでは南野陽子さん)や村岡局がサポートに回り、お金をばらまいたりしていろいろ工作してます。
林真理子氏の原作でも「必要とあらば千両でも万両でも使え」という具合に描かれておりましたね。
-
女丈夫と呼ばれた幾島は篤姫の世話係~西郷と協力して政治工作を担う
続きを見る
-
勤王女傑こと村岡局(津崎矩子)篤姫や西郷に信頼された老女とは
続きを見る
大奥にはアンチ一橋だらけ
さて、そんな重大なミッションと元に大奥へ乗り込んだ篤姫ですが……。
「ここでお世継ぎの問題を持ち出す必要があっとでしょうか?」
篤姫はそんな心境に至ります。
篤姫自身も、夫の家定も若い――このままなら、後継者を決めなくても、自分たちで子作りができるかもしれないと思い始めたのです。
これは、後継者問題を持ち出す空気じゃない。
そう感じた篤姫は、姑の本寿院に相談します。
家定にとって、信頼のおける相談相手は母親であったのです。
「そうねえ。あなたたちまだ若いしねえ。頑張れば子供くらい作れそうよね。そうでなくたって慶喜みたいな、いい歳した男を養子にするって言われてもホラ……ねえ。そんな話持ち出しちゃ駄目よ。夫婦中にひびが入っちゃうから」
「そうですよねえ」
篤姫も納得してしまうわけです。養子はどちらにするか以前に、養子の話自体が鬱陶しい。
納得です。この嫁と姑の見方は一致しているわけです。
「養子問題云々より、家定の気持ちが一番大事でしょ」という、政治的なところから離れた、母として妻としての優しい気持ちでした。
本寿院も、家定も、後継者問題など聞くのも嫌。
なんせ孫の顔を楽しみにしている本寿院です。
特に本寿院はじめ、大奥の実力者である瀧山、歌橋も、アンチ水戸でした。
本寿院は一橋慶喜を跡継ぎにするくらいなら、自害するとまで口にしていたほどです。
こうした本寿院に強く反論できない篤姫の態度は、幾島や西郷隆盛ら、彼女にいる周辺の人を苛立たせることになりました。
幾島や西郷隆盛は、舌打ちして本寿院に対して、「あんばばあ、余計なこっお言いやがって」と悪態をつくのはありそうだと思います。
しかし、篤姫自身はむしろ、難しい自分の立場を察して、政治抜きに夫婦視点からアドバイスしてくれる、優しいお姑様と思ってもおかしくはないかな、と。
本寿院vs篤姫の嫁姑バトルはありですか?
さて、長くなりましたが、この問いに答えをそろそろ出しましょう。
【本寿院vs篤姫の嫁姑バトルはありなのか?】
創作としてはありですが、歴史的には好ましくないと思います。
理由は以下の通り。
・篤姫は一方的にやられるような性格ではない
・互いに憎しみ合う理由は、実はさほどない
・二人の対軸は政治的なものであって、昭和のホームドラマ的な「嫁いびり」とは別物
・二人の関係は良好だった
というところです。
我が子に先立たれ、明治維新という動乱を迎えた本寿院と篤姫。
二人はともに江戸城を出て、大勢いた女中にも暇を出し、つつましく暮らしました。
そして本寿院は明治18年(1885年)2月3日に亡くなります。
享年79。篤姫の死から2年後のことでした。
あわせて読みたい関連記事
-
徳川家慶(12代将軍)ペリー来航の激動期に空気のような存在なのはナゼ
続きを見る
-
江戸期以前の乳幼児死亡率は異常~将軍大名家でも大勢の子が亡くなる
続きを見る
-
西郷隆盛 史実の人物像に迫る~誕生から西南戦争まで49年の生涯
続きを見る
-
幕末薩摩の名君・島津斉彬~西郷らを見い出した開明派50年の生涯とは
続きを見る
-
十三代将軍 徳川家定って何だか可哀想 篤姫の夫として期待されながら
続きを見る
-
阿部正弘が有能すぎて死後に幕府が崩壊?勝を抜擢した老中の実力とは
続きを見る
-
幕末に薩摩から将軍家へ嫁いだ篤姫ってどんな人?47年の生涯まとめ
続きを見る
文:小檜山青
【参考文献】
辻ミチ子『女たちの幕末京都』(→amazon)
『別冊歴史読本 天璋院篤姫の生涯』(→amazon)
『国史大辞典』