飛天御剣流天翔龍閃

岡本亮聖・絵

幕末・維新

『るろうに剣心』飛天御剣流の奥義「天翔龍閃」をリアル目線で考察してみよう

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飛天御剣流の奥義「天翔龍閃」
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 どうして「逆刃刀」は抜刀に不利?

剣心を象徴する武器である「逆刃刀」。

二度と人を斬らないと誓った彼の生きざまを体現した刀でもあります。

ですがしばしば得意の抜刀術にはその刀では不利であることを指摘される場面がでてきます。

なにゆえ逆刃の刀では抜刀にデメリットがあるのでしょうか?

抜刀術は俗に「近間の弓鉄砲」などと呼ばれるように、まるで飛び道具のように刀が「発射」されるかのような印象を与えます。

それは刀を鞘の中で滑走させるように加速させて一気に斬りつけるという技の特性に由来するものであり、刀そのものを弾とすれば鞘はさしずめ発射台やカタパルトの役割を果たしているといえるでしょうか。

通常の刀であれば、普通は峰の側が鞘の内部に当たってそこを滑走していくことになりますが、逆刃刀では刃によって削れてしまうためセオリーとは異なる方法で抜刀していることが考えられます。

また、鞘の口である「鯉口」付近を包みこむように握るため、刀が鞘から抜ける「鞘離れ」の瞬間に逆刃で自身の親指を斬ってしまう危険性のあることが予想されます。

これらの問題をクリアしつつ本来の威力と速さを保たなければならない、という点から逆刃刀では抜刀術に不利だという理論が成り立ちます。

もし実際に逆刃で居合や抜刀を行うとしたら、非常に危険であるということがいえるでしょう。

 


 「抜刀術の構え」はありえない!?

剣心が奥の手の抜刀術を発動しようとする時、大きく刀を左側に寄せたような独特の構えをとる描写がなされています。

みるからに全身のバネを利用して、回転するように強力な太刀筋を繰り出す体勢に思えますね。

しかし、剣心の抜刀術について最大の疑問がここにあります。

抜刀が生み出す速さと強さは、実はあの体勢から実現することは困難と考えられるためです。

それには抜刀術や居合術が片手で抜き打つ技であるにも関わらず、速さと強さを両立しているメカニズムに大きく関連しているためです。

文字通り、「刀を抜く」技術を極限まで高め、攻撃と防御を同時に行うことに成功したのが抜刀術であるといえますが、刀を抜くためには上半身と下半身の連動を含めた協調動作、手の内の繊細なコントロール、攻撃部位に向けて鞘内で刀身を加速させていくなどの複雑な挙動に加え、忘れてはならない動作があるのです。

それは「鞘引き(さやびき)」と呼ばれ、文字通り鞘離れの瞬間に鞘を素早く引くことで刀に最後の加速をかけ、最高速度に到達させるための重要な技術でもあります。

速く「刀を鞘から抜く」ことに目が奪われがちではありますが、現代でも指導者によっては「刀を鞘から抜くのではなく、鞘を刀から抜く」という言葉でそのコツを示すこともあります。

したがって、あらかじめ目いっぱい鞘を身体に寄せているため、「鞘引き」をすることが不可能な剣心の「抜刀術の構え」は抜刀や居合のセオリーからは考えにくい、ということがいえるでしょう。

実際にやってみるとよくわかることですが、上記の抜刀術の構えをとって左足で踏み込んで抜刀すると非常に窮屈で、身体のバネすら十全には使えない体勢であることが理解できます。

逆刃刀という抜刀にとって危険な刀であればなおのことであり、「天翔龍閃」は極めて実現困難な技であるといえるのではないでしょうか。

 


 それでも「達人」は存在する

しかしながら、おいそれとは体得できないからこその「奥義」でもあるといえるでしょう。

おそらく通常のセオリーや常識を超えた「術理」が存在するのでしょう。

超人的な技の数々はもちろんフィクションならではの痛快さをもっていますが、現代にもにわかには信じられないような凄まじい技を体現する本物の「達人」が確かに存在しています。

したがって、剣心の「天翔龍閃」のような技ももしかしたら…ひっそりと実在しているのかもしれません。


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