給糧艦伊良湖

給糧艦「伊良湖」/wikipediaより引用

明治・大正・昭和

海軍のアイドル給糧艦「伊良湖と間宮」兵士を癒やすラムネとオニギリ

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ドイツ軍のシャンパンを間違って飲むほど人気だったラムネ

とはいえ、常に全ての艦が間宮や伊良湖と行動を共にしたり、頻繁に補給を受けられるわけではありません。

各艦でもそれぞれに食の工夫をし、緊張やストレスの緩和に努めていました。

最も有名かつ広まっていたのは、多くの艦内でラムネが作られていたことでしょうか。

ラムネも他の洋食同様、明治時代に日本へ入ってきましたが、中でも普及が早かったもののひとつでした。

日清戦争までの間に国内のかなりの地域で普及。

※以下は日清戦争のまとめ記事です

日清戦争
日清戦争の攻防を一気読み~朝鮮半島がカオスとなった顛末を振り返る

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第一次世界大戦の中国戦線では「ドイツ兵が置いていった泡の出る飲み物を、日本兵が『ラムネだ~!』と大喜びで飲んだら、実はシャンパンで皆べろんべろんに酔ってしまった」なんて話があるくらいです。

太平洋戦争では、長距離航海かつ現地の衛生状況がアテにならないことがほとんどだったため、「衛生的に飲める」かつ「嗜好品として役立つ」という二つの特徴が備わり最強にみえるラムネは、戦場に最も適した飲み物と考えられました。

現代にもある、あの独特の瓶や開封時の音も、戦時中には既におなじみになっていたので、兵のささやかな気分転換となったようです。

基本的に大型艦・後に造られた船ほど食事の質や設備が良くなる(ただし居住性はそうとも限らない)ため、この手のことでもやはり、後期に作られた戦艦大和、及び同型艦の武蔵は優れていました。

ラムネ製造機はもちろん、大和についてはアイスクリームやこんにゃく・納豆まで船内で作れたといいます。

大和と武蔵は装備や基本設備がほとんど同じだったとされていますので、武蔵にも同等の設備があったと考えるのが自然ですが、何故か食の話題は大和に偏ってる気がします。

 

銀シャリ握りで士気高揚

また、どこの艦でも食べられており、担当者が特に工夫を凝らしていたのが「おにぎり」です。

戦闘中だと悠長に食堂に戻って食事というわけにはいかないので、各自の持ち場におにぎりが届けられたからです。

場合によって混ぜご飯だったり、たくあん・ゆで卵・肉の缶詰などのちょっとしたおかずがついたり、休戦に近い状況だと汁物や煮物がつくこともあったとか。最近のコンビニのおにぎりや、おにぎり+おかずセットと似たような感じですかね。

脚気予防の目的もあるため、普段は艦内の食事は麦飯ですが、おにぎりでは白米100%(銀シャリ)というのも人気の理由でした。

やってみたことがある方もいると思うのですけれども、麦飯をおにぎりにしようとしても、ポロポロと崩れてしまうんですよね。

食べやすくするためのおにぎりが崩れてしまっては本末転倒です。

そういった実用的な理由で銀シャリになったわけですが、戦闘中とはいえ、めったに食べられない銀シャリのおにぎりは、大いに士気を上げたといいます。

旧海軍に所属していた方の手記などでも、「広々とした甲板でおにぎりを頬張ったのはいい思い出」と書かれていることが珍しくありません。

これは指揮官などのお偉いさん方も同じで、艦橋(ブリッジ・基本的に船で一番高いところにあり、艦長などが司令を出す場所)でおにぎりを食べることもありました。

大きな船だと、お偉いさんと兵が別室で食事をしていたため、和気あいあいとした雰囲気が好きな艦長の場合、むしろおにぎりを食べるようなシチュエーションのほうが好きだったとか、そうでないとか。

まあ、おにぎりが出る=基本的に戦闘中なので、それなりにアレな状況という場合もあるわけですが……。

海軍の後継者である海上自衛隊でも、おにぎりを握るスキルは必須。

というか、夜食のためによく作るので、自然と上手くなるそうです。

最近は「人の握ったおにぎりとか無理;;」という方も多いようですが、やっぱり自衛隊だとそういうことはないんでしょうね。

旧海軍の食事、特におにぎりやカレーライスは各所のイベントでたまに再現されているので、味わいながら当時を偲ぶのもいいかもしれません。

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長月 七紀・記

【参考】
小菅桂子『にっぽん洋食物語大全 (講談社+α文庫)』(→amazon
伊良湖_(給糧艦)/wikipedia
間宮_(給糧艦)/wikipedia

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