三八豪雪

自衛隊の災害派遣隊も出動した三八豪雪の様子/wikipediaより引用

明治・大正・昭和

日本中が大雪に見舞われた三八豪雪が異常だ|大寒波が到来した昭和38年の恐怖

2025/01/08

昭和三十八年(1963年)1月9日は、大分県日田市で過去最高の積雪を記録した日です。

九州という位置的にも、温泉のイメージ的にも雪とは縁遠い気がしますが、大分県も場所によっては雪が珍しくないそうですね。

しかし、この年の積雪は文字通りケタが違います。

日田市だけの話ではなく、全国各地で記録的な積雪がありました。

 


阿蘇山(※熊本県)で123cmもの積雪

このシーズンは、前年(昭和三十七年=1963年)の年末から、北海道や北日本で大雪になっていました。

年明けには、岡山県・熊本県・高知県といった雪と縁遠い地域でも史上有数の降雪を記録し、1月中旬から下旬にかけては九州各地でも積雪するほど。

なんせ種子島や屋久島でも雪が降ったというのですから、その異常さがわかるというものです。

温暖な地域でもこれですから、雪国である北海道・東北・北陸の積雪はお察しください状態。

・長岡市(新潟県)318cm

・金沢市(石川県)181cm

・福井市(福井県)213cm

上記の他のエリアでも同レベルの記録的豪雪が観測されました。

2月に入っても寒波は止まず、熊本県の阿蘇山で123cmも積雪したといいます。

山の高さが変わりそうですね(変わりません)。

最終的に4月の半ば頃まで寒波は続き、死傷者や建物の被害、列車の運休などで多大な被害が出ました。

気象庁では「昭和38年1月豪雪」と命名。

世間的には「三八豪雪(さんぱちごうせつ)」の呼び方で知られています。

 


自衛隊出動で火炎放射器も使われたが

これほどの被害が出た理由の一つには、日照時間の短さもありました。

最もひどいときには、20日間で11.4時間(1日あたり30分強)しか日が差さず、雪が次から次へ積もるという状況だったのです。

ちょっとした雪でも、ほとんど日が当たらない場所ところですと、一週間ぐらい残っていることがありますものね。

自衛隊も出動し、一時は火炎放射器まで使ったそうですが、これはあまり有効とはいえませんでした。

2014年の豪雪時にツイッターで話題になっていましたけれども、熱を用いて部分的に雪を溶かしてしまうと、日没後などに再び気温が下がった際、凍結して余計に危なくなることがあります。

おそらく三八豪雪時も似たようなものだったのでしょう。

しかも地球規模だったようで、この年は他国でも大寒波に見舞われていました。

平年と比較してヨーロッパで10度、北米で7~8度、台湾で5度下がり、代わり(?)にアラスカでは、平均して14度も高い気温を記録したそうです。

北極の寒気が激しく南下して数万年に一度の寒さだったとか。

 

雪に押しつぶされた建物が多数

世界的な大寒波というと、歴史上では

アイスランドの火山噴火

火山灰や塵が北半球を覆う

欧州ではフランス革命・日本では天明の大飢饉

という最悪のコンボに見舞われましたが、意外(?)にも雪害の記録はそう多くありません。

飢える庶民たちの様子(天明の大飢饉)/wikipediaより引用

教科書にも「冷害→飢饉」の話はよく出てきます。

一方で「◯◯年の大雪で△△という事件が起きました」といった話はあまり見当たりませんよね。

三八豪雪を起点とすると、日本では1~5年程度のスパンで、国内のどこかで気象庁が命名するほどの豪雪になっています。

それ以前だと、明治十二年(1879年)2月には北海道で150cm~450cmにも及ぶ積雪があったという記録があります。

むろん人の生活に与えた影響は大きく、

「雪崩の危険があっても、そもそも家から出ることができないので避難不可能」

「人や家畜の死亡と雪に押しつぶされた建物が多数」

「食べるものがないのでエゾシカを大量に狩り、この年だけで10万頭も狩った」

「狩りから逃れたエゾシカも、その後の雪や凍結によって多く死んだ」

「放牧されていた馬が同じようにたくさん死んでしまった」

といった記録も残されています。他にもっと悲惨な状況もあるのですが……割とグロいので割愛しますね。

【日本の積雪最高値は?】

気象庁での積雪最高値は青森市酸ヶ湯の566㎝(戦前に滋賀県伊吹山で11m82cmを記録)

気象庁以外の観測記録だと山形県西川町志津地区の790㎝が最高値

 


一定のスパンで寒気に見舞われる?

こんなもん何度も起きないでほしいものです。

しかし、似たようなことは度々あったらしく、天明四年(1784年)に書かれた「東遊記」の中に

「豪雪でエゾシカやアイヌの人々が多く亡くなった年があった」

という記述があります。

90~110年くらいのスパンで繰り返しているんですかね。南海トラフ巨大地震と同じようなペース……。

他、19世紀の前半には江戸で30~60cmくらいの積雪があったという記録が複数回あるので、雪国各所は言わずもがなのことでしょう。

もちろん北国の方たちは雪と上手に付き合わねばならず、古くから「利雪」、つまり「雪をどうにかして利用しよう」という考えもありました。

雪の上に布や糸を置いて漂白する【小千谷縮(おぢやちぢみ)】や【越後上布】はその最たる例でしょう。

最近では雪を溜めておいて夏場の冷房に使ったり、データーセンターなどの冷却を必要とする設備に使うなど、さらに利雪のバリエーションが増えてきました。

とはいえ、個々人の行動による事故は、技術力の向上では減らせません。

台風などと同じく、大雪のときも行動には気をつけたいものです。


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【参考】:
積雪記録/気象庁
「三八豪雪」「五六豪雪」…今年の豪雪度は?/weathernews
「隠れた積雪日本一」過去には790センチ記録…温泉宿が並ぶ地区、今季も466センチ/読売新聞
biglife21(→link
昭和38年1月豪雪/Wikipedia
豪雪/Wikipedia
/Wikipedia
エゾシカ大量死/記録文書/Wikipedia

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長月七紀

2013年から歴史ライターとして活動中。 好きな時代は平安~江戸。 「とりあえずざっくりから始めよう」がモットーのゆるライターです。 武将ジャパンでは『その日、歴史が動いた』『日本史オモシロ参考書』『信長公記』などを担当。 最近は「地味な歴史人ほど現代人の参考になるのでは?」と思いながらネタを発掘しています。

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