ちょっと前までは小学校で当たり前のように行われていた「ぎょう虫検査」。
我が国ではすっかりナリを潜めておりますが、数十年前まで「寄生虫」は大変メジャーな病気でした。
仮に感染したところで大した症状のないものも多い一方、恐ろしい症状を引き起こす厄介者もおり……。
今回は、西郷隆盛さんの、タマ(睾丸)に注目します。
テーマは「バンクロフト糸状虫」です。
お好きな項目に飛べる目次
犬特有の病気ではなく人から人へも感染する
本題に入る前に……。
皆さんは「フィラリア」という病気を聞いたことがありますか?
犬を飼ってる方に馴染み深いはずで、蚊を媒介にしてフィラリアという寄生虫が犬の心臓や肺動脈に住み着き、血液の流れを悪くする病気です。
ゆえに犬特有のものと勘違いされている方も多いかもしれません。
しかしフィラリアは、あくまで「糸状虫」という寄生虫の一種で、他にも数多の種類があって人にも感染します。
中でも人間のリンパ管内に寄生する『バンクロフト糸状虫』は、後遺症として象皮病を起こすことで知られております。
これのドコが西郷隆盛と関係あるのか?
バンクロフト糸状虫は、熱帯・亜熱帯を中心に世界中に広く分布。
日本でもかつては九州や西南諸島を中心として、本州でも見られる病気でした。
西郷は鹿児島の出身だけでなく、さらに南方の諸島へ島送りに遭っています。それも2度も(奄美大島と沖永良部島)。
そうです、彼はこのバンクロフト糸状虫にやられていたのです。
とんでもなく腫れ上がっていた
バンクロフト糸状虫は、その名の通り細長い糸のような形状をしています。
・雄は約6~10㎝で体幅が約3㎜
・雌は約4㎝で体幅が約1㎜
寄生場所はリンパ管です。
そこで卵から孵化したミクロフィラリアが毛細血管に移動し、蚊に吸血されることでヒトからヒトへ感染。
まったく恐ろしい寄生虫が存在するもんです。
ここからの解説は超ザックリ飛ばしまして……要は、この寄生虫の被害に遭うと、最終的に
・陰嚢に水が溜まる陰嚢水腫(タマがめっちゃ膨らむこと)になったり
・足が象のように腫れる象皮病に至る
のです。
聞いてるだけで背筋がゾワッと寒くなりますよね。。
んで、それがどう西郷に影響したのか?
と言いますと……睾丸です。
とんでもなく膨れ上がっていたことで知られているのです。
奄美大島から戻ってスグに沖永良部島へ
西郷隆盛は文政10年(1827年)、薩摩下級藩士の家に生まれました。
11歳のとき喧嘩の仲裁で腕の神経をやられ、武芸ではなく学問に勤しむようになったのは、大河ドラマ『西郷どん』でも描かれていましたね。
彼は、渡辺謙さんが演じる藩主・島津斉彬の目にとまり、異例の抜擢で側近として活躍。
江戸の薩摩藩邸等でも手足となって働きながら、他藩の志士に、その存在や才能を知られていくようになります。
斉彬は、藩政改革や富国強兵策を行った名君として知られる開国派でした。
徳川家定に嫁いだ篤姫の義父にもあたり、【安政の大地震】後に西郷隆盛が輿入れの準備に奔走した――という話もドラマにありましたな。
ドラマの中では、篤姫と西郷のラブロマンス的なシーンもありましたが、私個人的に気になるのは、やはり西郷の睾丸に巣食った寄生虫の存在です。
隆盛は斉彬の死後、後楯を失って奄美大島に送られます。
ここではそれなりに生活をエンジョイしており、現地妻・愛加那との間に長男と長女が生まれました。
その後、ほどなくして薩摩へ呼び戻されますが、帰国後から少し経過して新藩主の父・島津久光(青木崇高さん)と仲違い。
今度は沖永良部島へ流されてしまいます。
約1年半の間。
生活は困窮を極め、一時は餓死寸前のガリガリ君になったと伝わる西郷。
ここで同時に、バンクロフト糸状虫にも感染したと思われます。
ちなみに当時は、九州で大きく流行っていた寄生虫のため、どこで感染したのか、正確な場所までは不明です。
いずれにせよ感染の結果、隆盛の陰嚢は陰嚢水腫となり、人の頭くらいの大きさになってしまったのでした。デカすぎ……。
※続きは【次のページへ】をclick!