飛鳥・奈良・平安時代

『明月記』に見る超新星爆発!ベテルギウス(オリオン座)の消滅予兆を受けて

冬は空気が澄み、星が美しく見える季節です。

さらに1等星も多く夜空を豪華に飾りますが、その中でも一際目立っているのがオリオン座ではないでしょうか?

1等星が2つ、2等星が5つと明るい星が多く形も分かりやすい。文学作品にもしばしば登場します。

そんなオリオン座ですが、一番明るいベテルギウスが消滅の危機にあることがニュースとなっております。

◆オリオン座が崩れる? ベテルギウスに異変

 

ポセイドンの息子なんで海の上も歩けます

天体の話をする前にまずは神話のお話から。

オリオンは海の神ポセイドンの庶子で、狩りが得意な巨人でした。イケメンで女好きで快活、女神とも浮き名を流すまさにリア充です。

オリオンが星座になった理由は諸説ありますが有名なのがコレ。

『狩りの腕を自慢しすぎたため大地の女神ガイアの怒りをかってしまい、刺客のサソリに刺し殺された』

女神アルテミスが彼を惜しんで星座にしたのです。

が、天に昇ってもオリオンはサソリから逃げ、蠍座が東の空から登るとオリオン座は西の空へと沈むのです。

 

オリオン座で1番明るいはずのベテルギウスが

さてさて、そんな狩りの名人オリオンの右肩にあたるのがα星(その星座で1番明るい星)のベテルギウス。

地球より約642光年の距離にあり、大きさは太陽の1000倍、質量は20倍にも達します。

星自体形状が変化する脈動変光星であり、明るさが0.0等 - 1.3等の範囲で変動しておりました。

大きな星というのはエネルギーを多く使うため寿命が短くなります。太陽が、誕生から46億年という年齢に対し、ベテルギウスは約900万年と若い星ですが、星的には相当のおじーさま。いつ寿命を迎えてもおかしくない状態なのです。

いまニュースになっているのが2019年12月の観測データでベテルギウスがいつもより暗く1.6等星程度の明るさになっているというものです。
これが超新星爆発の予兆ではないかと騒がれています。

 

藤原定家も記した超新星爆発

星の最後は質量で決まり、太陽のような小さな恒星は爆発しません。寿命近くになるとだんだんふくらみ、赤色巨星となった後はエネルギー切れで白色矮星とよばれる小さな天体になります。

太陽より8倍以上の質量を持つ恒星は、短い一生の最後に超新星爆発を起こして殆どが吹き飛び、中心部に密度の高い中性子星が残るか、非常に質量の大きい恒星(太陽の20~30倍以上)であった場合はブラックホールが残ります。

ベテルギウスは超新星爆発の後、ブラックホールにはならず中性子星になると考えられております。

では、ベテルギウスが超新星爆発するとどうなるのか?

ベテルギウスは地球から比較的近い恒星なので、超新星爆発すると、マイナス11等、半月程度の明るさになり、昼でも見えるようになると予想されます。

その輝きは約100日続き、徐々に光度を失うため、4年後には肉眼では見えなくなるとのこと。肉眼で分かるような超新星爆発があると、それは珍しい現象ですので文献に残る場合があります。

鎌倉時代の貴族で、小倉百人一首の選者として知られる藤原定家(1162-1241年)。
彼の日記『明月記』にもその記録が残っています。

定家は、直接超新星爆発を見たわけではなく1230年に出現した「客星(この時は彗星)」に触発され、陰陽寮の博士に突然現れる客星の記録を照会しました。

提出された8件の記録の内、3例が超新星爆発。
1054年の超新星爆発SN1052は23日間の昼間でも見え、653日間夜空に輝いたと中国の記録に残っています。

明月記の記録はざっと以下の通り。

【原文】
後冷泉院 天喜二年 四月中旬以降 丑時 客星觜参度 見東方 孛天関星 大如歳星

【書き下し文】
後冷泉院・天喜二年(1054年)四月中旬以後の丑の時、客星觜(し)・参(しん)の度に出づ。東方に見(あら)わる。天関星に孛(はい)す。大きさ歳昼の如し。

【現代語訳】
1054年4月中旬以降の午前2時ごろ、客星が觜・参(オリオン座あたり)の東方、天関星(おうし座のゼータ星)付近に現れ、歳星(木星)のように輝いた。

4月は太陽に近く超新星爆発が見えないため、5月の誤りではないかと考えられております。

なお、この爆発の残骸はおうし座にある「かに星雲」として観察することが出来ます。

最後に。
ベテルギウスは赤色、対角線上にあるオリオン座β星であるリゲルが青白い星であることから源平合戦に例えベテルギウスを「平家星」、リゲルを「源氏星」と呼ぶことがあります。

ベテルギウスの一瞬大きく輝いて消える運命は、何となく平家に重なりませんかね?

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文:馬渕まり(歴女医)

【参考】
『ギリシア神話(上) (新潮文庫)』呉茂一(→amazon
『ギリシア神話 下 (新潮文庫)』呉茂一(→amazon
オリオン座/wikipedia
超新星/wikipedia
明月記/wikipedia
超新星の観測史/wikipedia
白色矮星/wikipedia
日刊スポーツ
宇宙科学研究所キッズサイト
京都の天文学【4】/京都学園大学

 



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