藤原穆子

画像はイメージです(源氏物語絵巻/wikipediaより引用)

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なぜ藤原穆子(倫子の母)には道長も頭が上がらない?光る君へ石野真子

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倫子と道長を結婚させた先見の明

藤原穆子が歴史に名を残したのは、藤原道長にとって頭の上がらない存在だったからと言えます。

源雅信は「娘の倫子をどうにかして帝に入内させたい」と考えていました。

しかし、その座は藤原摂関家の寡占状態であり、何代にもわたって外戚関係を続けていて、今さら入る余地なんてあるのか?

円融天皇については、藤原氏同士の争い激しく、とても食い込んではいけない状況。

次代の花山天皇は気まぐれ、かつ何かと奔放であり、別の意味で危うい。

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しかし、一条天皇(980年生)となると、倫子(964年)は一回り以上も年長となってしまい、さすがに入内は無理だ――。

倫子の父・雅信が諦めきれない最中、母の穆子は冷静に状況を理解していました。

気がつけば、倫子は年齢が行き過ぎていたのです。

源氏物語』にも、なまじ親が高い望みを抱いたがために、嫁ぎ先が見つかりにくくなるヒロインが出てきます。

そんな当時特有の行き詰まりに、彼女は突入しかけていました。

あの物語には、娘に運勢を全賭けした結果、人生を左右する困った父親がよく出てきます。

紫式部の想像力だけで生み出されたものではなく、当時の人からすれば

「あぁ、こういう父と娘っているよな……」

という存在だったのかもしれません。

そこで穆子が「いっそのこと藤原道長を婿としてはどうか?」と提案し、夫婦となることが実現したのです。

結果、彼女の読みが大当たり。

穆子の孫である藤原彰子は一条天皇へ入内し、さらには曾孫が後一条天皇になるのですから、先見の明があった女性なのでしょう。

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夫婦の敬愛を集め 曾孫の即位を見届ける

道長と倫子は、仲睦まじい夫婦となり、多くの子女に恵まれました。

道長は素晴らしい妻と娶せてくれた藤原穆子に、頭が上がらなかったと言います。

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『光る君へ』での穆子も、のびのびとおおらかに倫子を育てたとされ、道長の感謝は深まるはず。穆子は婿たちに優しく、贈り物を欠かさなかったとされます。

ただし、この点は道長も同じだったりします。

独占的権力者ではなく、気遣いのできる人物でした。

心配りのできる人同士が集まって盛り立ててゆく――そこには穏やかな連帯が見えてきます。

正暦4年(993年)、夫・源雅信の死により、藤原穆子は出家、一条尼と称されるようになりました。

藤原道綱の妻の娘が亡くなると、孫を引き取り育てています。

藤原道綱とは、藤原兼家と『蜻蛉日記』の作者である藤原道綱母との間の子。

つまり、道長にとっては異母兄にあたります。藤原一族がどれだけ婚姻関係を回していたか、この辺からもご理解いただけるはず。

穆子にとっては孫、道長にとっては甥にあたる藤原兼経も、道長の養子として世に出てゆきます。

長保3年(1001年)、穆子の七十歳を祝う修法が、道長夫妻によってにぎにぎしく開催されました。

彼女は古希とされる歳まで生きただけでなく、さらに長生き。

長和元年(1016年)、曾孫である後一条天皇が即位するまで、穆子は見届けたのです。

とはいえ歳が歳ですから、程なくして病に伏せ、道長夫妻たちが見守る中、亡くなりました。

享年86。

当時としては驚異的な長寿。

道長夫妻は穆子の遺言を守り、盛大な仏事で彼女を送ったのでした。

この後も、別の曾孫が後朱雀天皇として即位し、孫の妍子は三条天皇の皇后となる――道長で良い!とした藤原穆子の先見の明が花ひらいたのでした。

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文:小檜山青
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【参考文献】
橋本義彦『平安貴族』(→amazon
倉本一宏『敗者たちの平安王朝 皇位継承の闇』(→amazon
大塚ひかり『源氏の男はみんなサイテー』(→amazon

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