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【崇徳天皇】
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安寧な暮らしを選んだのに
決着がついたことで、崇徳天皇は権力への欲を捨てました。
讃岐では仏教を心の拠り所とし、五部大乗経といわれる五つのお経を書き写しています。
そして乱の犠牲者の供養と自らの反省を表すため、
「私の代わりに、この写本を京の都に収めてもらえないだろうか」
と後白河天皇に頼みました。
しかし、あろうことか後白河天皇は「何か呪いかかってそうだからヤダ」(※ガチです)という身も蓋もない言い方で写本を突っ返してきます。
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恨みを捨てたいからこそ熱心に写経をしたというのに、この仕打ちはあまりに酷い。
ついには崇徳天皇もブチ切れ、配流から八年後に亡くなってから怨霊になった……というのがいわゆる崇徳天皇の怨霊伝説です。
現代でも、とある芸能人が子どもに「崇徳」と名づけたら、ネットなどで批難を浴びるなんてこともありました(参照:歴史ニュースウォーカー)。
死後に相次ぐ波乱「崇徳天皇のせいじゃね?」
でもこれ、言われだしたのが崇徳天皇崩御から十年以上後の話なんです。
その頃たまたまデカイ動乱や皇室関係者の死没が重なったので、「もしかして崇徳天皇が!?」という話になったようで。
崇徳天皇が祟りを起こしたいのは後白河天皇であってその後の人達じゃないと思うんですけども……。
江戸時代には物語のネタとして「崇徳天皇の怨霊が出たぞー!!」という話が使われるようになってしまったこともあり、怨霊伝説が定着してしまったようです。作者、度胸あるな。
現在でも怨霊ネタの鉄板らしいですが、実際には復権されていますし、明治天皇や昭和天皇が祭祀を行ったりしているのでもう祟る事はないと思われます。
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そもそも崇徳天皇が恨みたいのは……しつこいですね。
怨霊云々はともかく、崇徳天皇の和歌を見るとなかなか情の濃い方であったことが窺えます。
身分の高い方らしくないというか。
平安の歌人によくある優しい作風(たおやめぶり)よりは、奈良時代の”ますらおぶり”や武士の歌に近い力強さがあるようなないような。
こんなにステキな崇徳さまの歌
怨霊の話で終わらせるのも後味が悪いので、そんな崇徳天皇の歌をいくつかご紹介しておしまいにしましょう。
落語のネタにもなっていますし、崇徳天皇の歌では一番有名ですかね。
元ネタ(本歌)が武烈天皇の「大太刀を 垂れ佩き立ちて 抜かずとも 末は足しても 遇はむとぞ思ふ」なのはいいっこなしですgkbr。
朝夕に 花待つころは 思ひ寝の 夢のうちにぞ 咲きはじめける
【意訳】「桜の開花を毎日楽しみにしていたら、夢の中で現実より先に咲き始めたよ
毎日庭を眺めて桜が咲くのを待ってるとか何それかわいい。
五月雨に 花橘の かをる夜は 月すむ秋も さもあらばあれ
【意訳】五月雨の降る中で橘の花が香っているさまは、秋の名月と比べがたいほど好きだ
秋の月を称える歌は多いですが、夏の雨と花の香りをここまで褒める歌は珍しいんじゃないでしょうか。
五感が鋭敏な方だったんですかね。
秋ふかみ たそかれ時の ふぢばかま 匂ふは名のる 心ちこそすれ
【意訳】秋も深まった夕方、藤袴の花が香っているさまは自ら名乗りを上げているように思える
これまた花の香りに関する歌ですね。
藤袴は桜餅の葉のような香りだそうで、確かに秋にその香りがすれば自己主張とも思えそうです。
夢の世に なれこし契り くちずして さめむ朝に あふこともがな
【意訳】夢のように儚いこの世でできた縁だが、もし煩悩という夢から覚めて成仏できたら、あなたとまた会いたい
仲の良かった歌人・藤原俊成(百人一首を選んだ藤原定家のトーチャン)に当てて詠んだものといわれています。
内容からして死期を悟った頃の歌でしょうね。(´;ω;`)
他に西行との逸話もあったりするのですが、長くなりすぎたので今回はこの辺で。
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長月 七紀・記
【参考】
国史大辞典
歴史読本編集部『歴代天皇125代総覧 (新人物文庫)』(→amazon)
崇徳天皇/wikipedia
やまとうた(→link)