司馬懿

司馬懿/wikipediaより引用

ボケ老人のフリして魏を滅ぼした司馬懿~諸葛亮のライバルは演技派

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司馬懿
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ボケ老人演技から、一転、クーデターでの大逆転

そんなある日、曹爽派の李勝が司馬懿のもとを訪れました。

司馬懿は口元から粥をボロボロとこぼしています。

「このたび本州(出身地、李勝の場合は荊州のこと)に赴任することになりまして」

「ほへぇ~、并州でございますかぁ~」

「いえいえ、本州です」

「え、なんですって?」

「ほ・ん・し・ゅ・う、です!」

「并州ですかぁ、へえ、へぇ。もう歳で耳が遠くなってしまって、すみませんのぅ」

「本州なんですけどね」

「并州はよいところだと言いますなぁ~」

駄目だこりゃ。完全にボケちゃったよ。

李勝は油断して曹爽に「司馬懿のジジイ、ボケちまってますからもう安全ですよ」と報告しました。

そして249年、曹爽は安心したのか、曹芳のお供をして洛陽を留守にしてしまいます。

「待ってたぜェ!! この時をよぉ!!」

瞬間、ボケ老人演技をやめた司馬懿は素早くクーデターを起こすのです。

こちらは孟達を追い込む司馬懿/wikipediaより引用

まず曹叡の郭皇后に曹爽の解任を求め、自己を正当化する文書を提出。しっかりと手続きをふまえた上で、我が子の司馬師、弟・司馬孚らを配置して、完璧な反乱を起こしたのです。

完全武装した司馬懿本人は、曹芳を待ち受け、上奏文を出しました。

さらに曹爽には「今なら罷免だけで許すよ」と誘いをかけます。

曹爽はブレーンが警戒しろというのを無視して、「まあ、罷免されても金持ちではいられるし」と余裕をかましていました。

しかし、司馬懿がそう甘いわけもなく……一族郎党、一派もろとも逮捕された曹爽は、三族まで処刑の憂き目にあいます。

このとき司馬懿は古希を過ぎた71才。

当時は生きているのも稀とされる年齢で、魏へのクーデターを完遂したのでした。

政敵にとどめを刺した司馬懿は、その二年後に死去します。享年73。

そして、その子&孫の世代で完全に魏の息の根を止め、晋が建国されます。

仮病を使うほどいやいや魏に仕官した以上、そもそもがどの程度忠誠心があったか不明の司馬懿。

ましてやその子は魏に恩義などわるわけなく、さらに冷たく政権奪取をすすめてゆくのでした。

その過程はなんとも陰惨で爽快感がカケラもなく、前述の通りバッドエンドそのものと言えるのです。

 

司馬懿ドラマをVODで見ましょう!

そんな司馬懿の、爽快感や忠義と無縁の生き方は、知名度があるにも関わらず人気が低いものでした。

しかしその状況も変わりました。

中国のドラマ『大軍師司馬懿之軍師聯盟』は、司馬懿が主役。『軍師連盟』として日本語版が制作され、AmazonプライムほかVODで配信されております。

シブいイケメン人気俳優・呉秀波がタイトルロールを演じています。

これまたてっきり司馬懿を理想化するのかと思っていたら、そう単純なことでもない。

曹操はじめ曹一族にパワハラに次ぐパワハラを受け、次第に精神が歪んでゆく司馬懿。愛妻・張春華が彼を癒していたものの、彼女がいなくなってしまったら……。

司馬懿の墜ちた魂をその子である司馬師と昭が引き継ぎ、魏王朝ごと曹一族を潰す。そんなドス黒い展開が待ち受けています。

ハラスメント防止に役立ちそうな『三国志』ものです。

そんな『軍師連盟』とスタッフとキャストがかぶるドラマが、『三國機密之潛龍在淵』です。

『三国志 Secret of Three Kingdoms』としてこれまた日本語版が制作され、AmazonプライムほかVODで配信中。

こちらはなんと、献帝の双子の弟が皇帝になりすますという異色作。

顔値が高い小鮮肉(※顔面偏差値が高い若手イケメン)として名高い韓東君(エルビス・ハン)が司馬懿を演じています。

このドラマの司馬懿は献帝になりすました主人公の幼馴染であり、彼を守るために魏に仕えるという設定です。

イケメンで賢い司馬懿は、作中で男女問わずモテモテ! スーパーダーリンと化した司馬懿という、とんでもない設定です。

まさか司馬懿イケメン化時代が来るとは予想外でしたので、これを書きながら私も驚いています。

行動が陰湿に見えても、彼なりの言い分はあるのでしょう。中国語圏全体で司馬懿が人気であるというよりも、この二作品は制作者の好みが反映されているかとは思えますが、それでも興味深いことは確かです。

是非ともご覧ください!

なお、佐藤信弥氏『戦乱中国の英雄たち』ではこの二作品をはじめ、多くの中国ドラマを紹介しています。鑑賞のお供にオススメです。

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絵:小久ヒロ
文:小檜山青(noteもご覧ください)

※2020年1月16日発売の『三國志14 TREASURE BOX』同梱のアートブックで全武将の紹介文を書かせていただきました(→amazon)(PS4版はこちら

『三國志14 TREASURE BOX』WIN版 PS版/amazonより引用

【参考文献】
井波律子『裏切り者の中国史 (講談社選書メチエ)』(→amazon

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