こんばんは、武者震之助です。
歴史コンテンツに限らず、世の中の創作作品はすべて、見る人によって異なる評価が与えられるものです。
それは本作『西郷どん』にしたって同じで。
以下のように
◆「西郷どん」引っ張る鈴木亮平の全力演技と脇役の存在感(→link)
◆大河ドラマらしい大河ドラマ、その王道感が楽しめる「西郷どん」(碓井広義)(→link)
◆鈴木亮平のふんどし姿に、女性たち熱狂。「西郷どんの尻にありがとう!」(→link)
肯定的に楽しまれる方がいて当然ですし、その一方で、私のように否定的な感想を抱かれた方もおられるでしょう。
何が言いたいのか……、って今週も厳しいレビューとなりました。
放送後にレビュー記事を読んで、喜びを増幅させたい西郷どんファンの皆様は、他サイトの記事へ飛ぶことをオススメいたします。
お好きな項目に飛べる目次
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牢の中には英語を話すナゾの男
先週からの続きで……。
島津斉彬を思い切っり投げ飛ばした吉之助は、入牢処分に。
吉之助に思いを寄せる糸は、心配のあまり全力ダッシュして吉之助を探しに向かいます。
ここで吉之助は、牢の中で、英語を話す謎の男に出会います。
糸は、吉之助のいる西田町下会所に向かいます。 そこへ吉之助の郷中仲間も駆けつけるのでした。
西郷の仲間たちは、ひょっとして糸さぁが好きなのは吉之助なのかと気づき、糸も照れるのですが……。
確かに黒木華さんの糸はムチャクチャ可愛いんですけど……なんでしょう、緊張感ないんですよね。
ともかく吉之助の生死を心配する感じが伝わらない、と申しましょうか。
一応「切腹はないみたい」という情報はあるんですけど、全体的に緊張感に乏しい。
吉之助は謎の男に水を勧めます。
吉之助が飲むのを見て、ごくごくと飲む男。このあと餅も食べます。
どうやら毒殺を警戒しているようです。
史実の薩摩藩でしたら、そんなまどろっこしいことはないと思います。
邪魔、不要となったら日向国に送りますとかナントカ言って斬殺したり、船から突き落としたりしますよ。
幕末にはそういう事例ありますからね。
刺客、さすがに親切すぎるやろ(´・ω・`)
ここで謎の刺客が乱入し、謎の男の命を狙う理由を全部ペラペラ喋ります。
琉球で秘密を見たとかなんとか。刺客、さすがに親切すぎるやろ(´・ω・`)
牢もずいぶんと広々としており、快適そうです。
一方、糸は吉之助を心配して駆けつけたことが親にばれてしまい、外出禁止となります。
海老原との縁談にも響く、と。
これは急にどうしたことでしょう。
娘の将来を憂うのでしたら、ちょっと遅すぎるくらいで。
糸は、今までしょっちゅう、昼間から男とふらふらしていたじゃないですか。
英和辞典、それは本来オーパーツでござんす
吉之助は、謎の男を背負って帰宅します……って、Why、突然のプリズンブレイク?
薩摩藩のセキュリティがガバガバすぎて話が頭に入ってきません。
・お菓子を盗みに御殿に侵入する子供
・世子と弟がお供もつけずに狩猟を楽しむ
・何かあれば藩主の弟・久光にあっさり直訴できる
・牢屋からフリーダムに出入りできる←New!
ここから吉之助家の皆さんと謎の男による、カタコト英語コントが始まります。
「ジョン・マン……」
「ジョン・マンさぁでごわすか」
当時、英語を学ぶことはごっつ難しか、むしろインポッシブル。
なのですが、正助の父が仕事で使った辞書がありました。
ノーって叫びたいのはこっちですよ……英和辞典、それ、オーパーツでござんす。
ともかくも、オーパーツ辞書を使って、会話をするジョンと皆さん。
正助は箸の使い方がうまいと言い出します。
「母上が土佐におっとかー!」
このジョン・マンとのコントはいつまで続くのでしょうか。
と、さすがに不安を覚えた頃にネタばらし。
実は、これは山田為久からのシークレットミッションであり。
謎の男のハートをオープンにして、目的を聞き出せというものでした。
サプライズプリズンブレイクの謎は解けたんですけど、なんでそれを吉之助にやらせるのかは正直意味がわかりません。
ジョンは逃げようとして、「トサ」と漏らします。
「土佐?」
さらに吉之助家の末っ子・小兵衛をあやす母・満佐を見てつぶやきます。
「おかぁ……」
「母上が土佐におっとかー!」
「母上に会いに帰ってきたとじゃな!」
いや、それなら素直にジョンはそう役人に言えばよかったのでは……と思うのですが、ジョンとしては外国からの入国がバレたら、打首か、再び国外追放というのが怖いようです。
しかし、結局は言っちゃうんですよね。
んで、ジョンの母が中浜にいると斉彬に報告します。
となると、やっぱりその程度のことは西郷たちに託さなくても聞けてもよかったのかなぁ、と。
これだと薩摩藩の他の藩士たちが、無能に見えてしまう、という……。
ラブじゃき! ラブじゃき!
半月後、斉彬からジョンの母は達者でいるという報告が届きます。
ジョンは心を開いて、身の上話を語り出します。
ここでジョンの名は万次郎と判明。
史実では、琉球で取り調べを受けた時点で、何もかも薩摩藩の役人に話しているんですけどね……。
その辺を西郷の手柄とするために、ストーリー展開にかなり歪な部分が出ちゃってますね。
万次郎は、処刑される危険を冒してまで帰国したのは、
「おかぁへのラブ」
だと言います。
ラブ。
それは人を好きと思う心。アメリカではラブが一番大事。
好きな者同士が結ばれる。恋愛結婚しかない。
そういうことを語り、「ラブじゃき」でしめる万次郎。
ここで私は、さすがに腹筋がヒクヒクしてきて、爆笑してしまいました。
ラブじゃき! ラブじゃき! これは流行る。
そして、それを劇団ひとりさんに言わせるのだから、マズイ。
テレ東『ゴッドタン』ファンの方は「マジ歌選手権」ならぬ「マジ演技選手権」を見ているようで、最初から笑いが止まらなかったとか……。
斉彬を持ち上げたかと思っていたら、叩き落とすような
それにしても、こういう事実誤認はどうかと思います。
当時のアメリカにだって政略結婚的なものはありましたし、出身階層が違う、人種が違うなんて場合は結婚できないわけです。
もういろいろとガバガバ。大河であまり派手な歪曲は、さすがにどうなのでしょうか。
万次郎は、斉彬に呼ばれて城にあがります。
その段階で、あんまり中身のあることは言わないし、無茶苦茶くだけた様子でハッキリいって失礼な態度。
幕末の出来の悪いドラマだと、
「この人はクールで先進的だから、くだけた態度を取る」
みたいな設定ありますけど。幕末の武士って基本的に、武士としての誇りが根底にありますし、礼儀作法にはものすごく厳しいですからね。
ここで万次郎から、
「アメリカと戦っても勝てない」
と聞いて、斉彬はショックを受けます。アメリカには鉄製で太平洋を横断し、日本を攻撃できる軍艦があると。
いや、当時のアメリカでも実用的な鉄製軍艦なんてものはないんですよ。
黒船はタールを塗っているから、黒く見えただけで。
薩摩藩では、先代の島津斉興が青銅製の大砲は作っています。
威力が弱いので鉄製を作る必要性を斉彬は感じたわけなんですけれども、そのあたりと設定を混同しているのかもしれません。
ちなみに史実では、斉興&調所広郷が武力でアメリカはじめ列強に勝利することはできないことに早くから気付いておりまして。
必然的に息子の斉彬本人も自然と認識しており、それがなぜ劣化させられるのか、ちょっとわからない流れでした。
これまでかなり持ち上げて描いていたものですから。
万次郎のおかげで蒸気船もできた
ここでも万次郎、誰でもプレジデントになれるアメリカ、っておっしゃいます。
それも正確ではない……ですよね。
確かに士農工商みたいなものはありませんが、アメリカで黒人大統領が初めて誕生したのは、ごく最近じゃないですか。
万次郎も、いざ勉強を始めると頭脳明晰で優秀ではありましたが、同時に人種差別は身に染みて感じてきたはずで。
「アメリカはフリーダム、パラダイス!」
という、描き方はいかにもゆるふわでしょう。
ここでアリバイがましく、万次郎のおかげで蒸気船もできました、と付け加えます。
ラブがどうこうより、そっちが大事なのですが。
万次郎が造船技術や航海術などをアメリカで習ってきたことを【いつ言うか?いつ説明するか?】と身構えていたんですが、ほとんど触れられずにスースーと進む展開。
なんか、もったいないです。
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