血眼になって探している専門家よりも、通りすがりの一般人がとんでもないものを見つけた――なんて話はままありますよね。
1991年(平成三年)9月19日、通称「アイスマン」と呼ばれるミイラがオーストリア・エッツ渓谷で発見されました。
発見したのは、発掘調査に携わる学者さん等ではなく、一般の登山客でした。
当初は登山者の遺体だと思われて警察の手が入ったのだとか。
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なんだか普通の登山者と違うよな……
登山客が遺体を発見――というのはエベレストでは割と知られた話ですね。
高山で遭難者の遺体がミイラ化することは珍しくなく、アルプス山脈の一角であるエッツ渓谷でも度々あったことなのかもしれません。
しかし、ミイラの周辺にあったものをよくよく調べてみると、どうにも登山者の持ち物にはふさわしくないものがいくつかありました。
警察の手に余り、オーストリアの名門大学・インスブルック大学から考古学の先生が呼ばれます。
そして調べてみたところ、驚愕の新事実が明らかになりました。
なんと、ミイラの持ち物が数千年前の青銅器(日本なら縄文時代!)だったのです。
警察の人はガチで「ナ、ナンダッテー!?」状態だったでしょうね。
いや、( ゚д゚)ポカーンかもしれない。
まぁ、それはさておき、後日、彼の発見場所が微妙に国境を越えていイタリア領内だったため、現在はイタリアの博物館および研究所のものになっています。
基本的には冷凍保管されていて、たまに保存のための水分補給をするときだけ冷凍庫から出されるのだとか。
パンや肉、ハーブも食べていた
詳しい調査がされたのは、発見から20年以上経った2012年のことです。
瞳と髪は茶色で肌は白。
と、白人の特徴に近かったようです。
時代が時代だからか。身長は160cmで体重は50kg程度。
日本人に多いとされる【乳糖不耐症(牛乳を飲むとお腹が下ってしまう体質)】だったと考えられるそうです。ナルホド、ちょっと親近感が……湧きはしないか。
アイスマンの時代にはヨーロッパでもあまり牛乳が飲まれていなかったとからだとか。
青銅器の時代ですので、元から遊牧などを行っていない民族は牛乳の存在すら知らなかったかもしれません。
胃腸からはパンらしきものや肉、ハーブを食べていた可能性があるということがわかっています。
肝心の死因については、まだ専門家の間で意見が割れているようです。
研究が始まったころは「後頭部の傷からして、殺害された可能性が高い」といわれていたのですが、最近では「戦で亡くなった後、数ヵ月後に埋葬された」という説が出てきています。
文字がない時代のことなので、今のところどちらの説も証明できずに終わっているとか。
これまたタイムマシンの出番ですね。
儀式の生け贄か 表情がリアルすぎるトーロンマン
アイスマン以外にも、不思議な遺体というのは多々あります。
デンマークで見つかった「トーロンマン」もそのひとつ。
こちらはピートと呼ばれる泥炭の採掘中、やはり一般人が偶然見つけたものでした。
当初は殺人事件と勘違いされて警察に通報され、アイスマンのときと同様「さっぱりわからん(´・ω・`)」状態になったとか。そりゃそうだ。
そして考古学の教授が呼ばれ、2000年以上前の遺体だということが判明したそうです。
ただし、こちらは胃腸などの様子から、何かしらの儀式のいけにえだったのではないかといわれているので、殺人事件といえなくもありません。
それを知ってからトーロンマンの顔を見ると、何かに耐え忍ぶかのような評定に思えてきます。
「世界一美しいミイラ」とされるイタリアの少女
さて、上記の二人は奇跡的に自然による保存が行われたという例ですが、次は人の手によって保存が試みられた例をご紹介しましょう。
ロザリア・ロンバルドというイタリアの少女です。
「世界一美しいミイラ」として有名なので、ご存知の方もおられるかもしれません。
彼女は1920年に2歳で亡くなったとき、特殊な防腐処置をされたため、100年近く経った今も生前とほぼ同様の姿をしています。
その方法についてはごく最近まで不明だったのですが、2009年に担当者の手記が見つかり明らかになりました。
いわく、アルコールでミイラ化を促進しつつ、サリチル酸・亜鉛塩が防腐剤の役割を果たし、さらにグリセリンが湿度を保ったのだとか。
最後に頬へパラフィンというろうそくの原料になるものが注入されたため、幼児特有のあのふっくらとした顔も保たれているのだそうです。
彼女にこの手法を施した人は、同じ方法で他の人のミイラを作ったこともあるそうですが、今のところロザリアほど美しく保たれているものは見つかっていないとか。
元々ロザリアをミイラ化したのは父親の希望だったそうなので、親子そろって満足しているかもしれませんね。
日本でも江戸時代に土葬された女性が偶然ミイラ化
ちなみに、日本にも偶然ミイラ化したと思われる遺体が展示されている場所があります。
東京都・上野の国立科学博物館です。
江戸時代に土葬された女性で、場所等の条件が揃ったために偶然ミイラ化したのだとか。
以前、別の展示を見たくて行ったときにたまたま見る機会がありまして、
「この人の尊厳を守るために、写真撮影はしないでください」
というようなことが書かれていて、博物館側の心意気に感動しました。
このため、国立科学博物館のホームページでもあまり大きく取り扱われていません。
国立科学博物館自体も恐竜の化石の発掘風景が再現されていたり、さまざまな動物の剥製があったりとなかなか面白いので、上野に行かれた際は立ち寄ってみると良いのではないでしょうか。
特に小さい男の子がいるご家庭におすすめです。
個人的に本当に好きでリピーターズパスを買おうか迷うぐらいです。
二回行けば元が取れるなんて破格ですよね。さすが国立。
ザビエルの腕がなぜか腐らないって?
本日紹介した中でいえば、トーロンマンについては当時の保存技術が未熟だったために、発見当時のまま残っているのは頭だけになってしまったのだとか。
カワイソス(´・ω・`)
他にはフランシスコ・ザビエルの腕がなぜか腐らない――とか、キリスト教関係では「腐らない」とされている遺体がいくつかあります。
ほとんどの場合、一般人が見ることができるのはごく一部かレプリカなので、ホントかどうかは怪しいような気もしますががが。
あのザビエルはドコ行った?日本にキリスト教を伝えた宣教師の行方
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ともかくロザリア・ロンバルドの状態が凄まじく良好で驚きます。
幼児かつ遺体ですらあの美しさですから、成長したらさぞかし美女になったのでしょうね。
「娘を残したい」と思ったであろう父親の気持ちを考えると、胸が痛くもなるのですが。
長月 七紀・記
【参考】
アイスマン/Wikipedia
トーロンマン/Wikipedia
ロザリア・ロンバルド/Wikipedia
国立科学博物館/Wikipedia