ルイーザ・メイ・オルコット/wikipediaより引用

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若草物語と作者ルイザ・メイ・オルコット 物語四作の魅了とは?

作家というと、どんなイメージがあるでしょうか?

「頭が良い」「穏やか」「気難しい」あたりを連想する方が多いのではと思うのですが、彼ら・彼女らの中には作品イメージとは全くかけ離れた言動や活動をしている人もいます。

1832年(日本では江戸時代の天保三年)11月29日に誕生した、ルイザ・メイ・オルコットもその一人です。

『若草物語』の作者として有名ですね。

当時としては革新的な考え方を持った父親と、「こしょうのメイ家」と呼ばれるほど短気な人の多かった血筋の母親の両方から影響を受けて、ルイザもまた当時の女性としては一風変わった生涯を送りました。

幼少期はあまり裕福な暮らしではなく、引越しすることも多かった。
ゆえに長じてからのルイザは臨時の教師や家政婦、家庭教師などいくつかの仕事と作家業を兼ねていた時期が長かったようです。

それでも16歳の時には雑誌に小説を掲載されていますから、やはり地頭の良さや文学的才能があったのでしょう。

 


若草物語は「小さい子に読ませちゃだめ~」

『若草物語』がとても有名なので半ば以上忘れられてしまっていますが、彼女は全く違ったジャンルの小説もいくつか書いています。

中でも特徴的なのは「ポットボイラーズ」=「沸騰もの」と呼ばれる激情的な物語。
主人公がかつての出来事や関係人物に対して復讐するというテーマのものでした。

これだけでも「お、おう」という感じがしますが、ルイザ自ら「小さい子に読ませるものじゃないね」と言っているあたりがまた何とも。現代のレーティングでいえばPG-12くらいでしょうか。
若気の至りなのか、激情振りが現れているのか……作風が幅広いってことでいいんですかね。

彼女の小説に女性を主人公としたものが多いのは、おそらくルイザ自身の経験を元にしたくだりが多いからかと思われます。

若草物語の主人公はマーチ家の四人姉妹で、次女・ジョー(ジョセフィン)がまさにルイザ自身だというのは有名な話ですよね。
ジョーがマーチ家の生活のために髪の毛を売るというエピソードもこれまた有名ですが、もしかするとルイザも同じことをした経験があったのかもしれません。

ルイザの写真からするととても綺麗なブルネットですし、女性が(直接の労働力としては)男性ほどお金を稼げなかった時代ですから、いずれ伸びてくるであろう髪の毛がお金になるというのはとても合理的だったでしょうしね。

日本でも明智光秀の妻・明智煕子(ひろこ)など、髪を売った話は度々ありますので、珍しいことではないのですが。
そう考えると、「髪は女の命」というフレーズは「髪は女の命(を助けてくれる)」という意味が入っているのかもしれませんねえ。

 


若草物語四作のあらすじをまとめてみた

若草物語を読んだことがないという方もいらっしゃると思いますので、このシリーズについて簡単にお話しておきましょう。

第四作からなるシリーズ物で、前述の通りマーチ家というアメリカ中流階級のとある一家を中心としたお話です。
中流とはいえ、お手伝いさんがいる家なのでそこそこいいお家ではあります。

が、第一作となる「若草物語」は南北戦争中のお話のため、お父さんが徴兵され、あまり裕福な暮らしではありません。
物語は、クリスマス直前に主人公の四姉妹が「今年はプレゼントを用意できないわ」と愚痴りあうところから始まります。

こう書くとドロドロした女の戦いみたいなものを想像されてしまうかもしれませんが、作中ではあまり陰湿なイジメなどはありません。

四姉妹は上からマーガレット(メグ)、ジョセフィン(ジョー)、エリザベス(ベス)、エイミーという名前で、(  )内はニックネームです。

メグはいかにも長女らしいしっかりした女性で、家庭教師で一家の生計を助けています。続編では彼女が結婚するところから物語が始まります。

次女のジョーは女流作家を目指す男勝りの少女で、短気でしたが続編でそれを克服?し、幸せな結婚をしています。

三女のベスは病弱ですが心優しく、ピアノが得意な子です。
一家の隣に住むローレンス老人が彼女の演奏を気に入り、「うちにはピアノがあるが、今は誰も弾かないので傷んでしまいそうで困っている」と言われてたびたびお邪魔するようになるといったほのぼのしたエピソードが描かれています。

四女のエイミーはちょっとワガママながら、人に好かれやすいという、いかにも末っ子気質な少女です。
文学は苦手ですが写生は得意、社交的で人付き合いが上手、とジョーとは正反対に近く、ケンカしている場面もたびたびあります。

他にも姉妹の母・ミセスマーチなどそれぞれのキャラクターがはっきりしているので、読んだことのある方はそれぞれお気に入りがいるのではないでしょうか。

物語は彼女らの日常生活について主に描かれます。
偏屈な親戚のオバサンとのお付き合いだとか、エイミーが学校の先生とケンカしてその顛末を聞いた一家が憤慨するとか、割と穏やかな群像劇です。

どうでもいいですが、昔子供向けの訳書を読んだとき後者のエピソードで「お手伝いさんのハンナは、まるですり鉢の中にその先生がいるかのような勢いでジャガイモを潰しました」というように書かれていて、いろいろ衝撃を受けたことを覚えております。

これ、原文だとどういう文章になってるんですかね。
というかこのお手伝いさん、そこそこいいお年だったと思うんですけどこええ。

 


生涯独身を貫く その理由は?

ちなみにルイザはジョーとは違い、生涯結婚せず独身を通しています。

特に大きな失恋をしたとか男性嫌いであったというわけではないようなのですが、奴隷制廃止や女性の参政権など、人権に関することにも関心が高かったので、結婚して家庭に入るのは性に合わないと思っていたのでしょうか。

また、南北戦争中に腸チフス患者の世話をしていた際、よく使っていた塩化水銀によりゆっくりと水銀中毒が進み、体調を崩していたことも理由の一つだったかもしれません。

それでも創作活動を続けていたり、妹の遺児を引き取ったり、亡くなる二日前まで父親を見舞っていたりと、最期の最期までさまざまな方面に積極的な人でした。

私的なエピソードがあまり伝わっていないということは、普段はごくごく普通の女性だったのかもしれませんね。
「普通」ってナニよ、と言われると困るのでやめろください。

長月 七紀・記

【参考】
ルイーザ・メイ・オルコット/wikipedia


 



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