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イギリス

カロデンの戦いがスコットランド人のトラウマである理由 そして名曲マイ・ボニーは生まれた

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平凡な女子高生がタイムスリップ。
イケメン戦国武将と出会って恋に落ち……というパターンを最近よく見かけますよね。
作品によっては人気声優も器用されたり、戦国だけでなく幕末モノもあります。

ああいうのは別に日本人だけが考えることでもありません。
韓国でも大人気。
中国では人気が出すぎて、当局が
「あまりにバカバカしい、タイムスリップ歴史ものはやめろ」
とストップ指令を出すほど(バカバカしいのはドッチなのかと小一時間……)。

そしてスコットランドを舞台にしたドラマが『アウトランダー』です。

 

スコットランド戦士はハーレクインでも結構人気があるようで、ハイランダー(ハイランド地方の戦士)と恋に落ちるものがわりと出てきます。
屈強な武将や戦士に憧れる乙女心は全世界共通ってことでしょうか。

『アウトランダー』では、ヒロインはスコットランドで起こる悲劇「カロデンの戦い」を阻止するために奮闘します。
日本史で例えるならば、タイムスリップして斉藤一と恋に落ちたヒロインが、会津戦争を回避するために奮闘するようなものでしょうか。

今回は、この「カロデンの戦い」を見てみたいと思います。

 

17世紀末に登場したジャコバイト

17世紀のスコットランド。
「ジャコバイト」と呼ばれる人々が歴史に登場しました。

1688年に名誉革命が起き、スコットランド系ステュアート朝の王ジェームズ2世(スコットランド王としてはジェームズ7世)が追放され、ジェームズ2世の娘メアリー2世とその夫でオランダ総督ウィリアム3世(ウィレム3世)がイングランド王として即位。

これに納得ができなかった一派が「ジャコバイト」です。

彼らの主張はこのようなものでした。
「王位継承権は、ジェームズ2世の二男であるジェームズ3世にあるはずだ!」

何度かの反乱に敗れたあと「老王位僭称者」と呼ばれたジェームズは、フランスに逃亡します。
「これでジャコバイトもおとなしくなるだろう」
と思っていたら、コトはそう単純でもありません。

今度は、ジェームズの息子チャールズ・エドワード・ステュアートこそが正式な王位継承者であるとして、担ぎ上げられます。

チャールズ・エドワード・ステュアート/wikipediaより引用

彼は、イングランド側からは「若王位僭称者」と呼ばれ、ジャコバイトやスコットランド人からは親しみをこめて「ボニー・プリンス・チャーリー」(美しいチャーリー王子)と呼ばれました。
ハンサムで勇敢。大変、魅力的な若者だったのです。

フランスで育ったチャールズは、1745年のジャコバイト反乱に呼応してスコットランドに上陸。
怒濤の進撃を続け、スコットランドの大半を手に入ると、そのまま南下してロンドンを目指します。

そこにたどり着けば、念願の王位継承権が手に入るはずでした。

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手勢わずか5千 チャールズの誤算は身内に?

チャールズは快進撃を続けたとはいえ、手勢はたったの5千でした。

当時のイングランドはジョージ王戦争が起こっていて軍部は手薄。
あくまでこの間隙を突いたものであり、チャールズとて全土を軍事制圧できるとは思っていません。

実際、イングランド軍が戻って反撃に出ると、たちまちチャールズ側は不利な状況に追い込まれます。
チャールズは、イングランドやスコットランドのローランド地方では嫌悪されるカトリック教徒であり、期待したほどの協力も得られません。

イングランドは想定内とはいえ、ローランドの民衆までもが
「カトリックのチャールズを認めるよりも、プロテスタントのジョージ2世を認めたほうがよい」
と考えていたのは、チャールズにとって痛い誤算だったでしょう。

とはいえ、宗教で一致しなければ国王だろうと追い出すのがスコットランド人であることは、過去の歴史から学べていたはずです。
かつてのメアリー・ステュアートも、それで痛い目にあっています。

追い込まれたチャールズは、ハイランドへと撤退します。
このとき彼の軍隊は脱走兵が多く出て、崩壊状態でした。もはや決着はついているようなものであり、放置していてもジャコバイトの軍勢は虚しく散り散りになったはずです。
ところが、イングランド軍は指をくわえて見守るほど気が長くはありません。

チャールズの軍勢は、インヴァネス郊外のカロデン・ムアに追い詰められました。

1746年4月8日。
ジョージ2世の次男であるカンバーランド公ウィリアム・オーガスタス率いる政府軍は、容赦なく彼らに攻撃を仕掛けます。

ウィリアム・オーガスタス_(カンバーランド公)/wikipediaより引用

 

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戦いの趨勢は決していたが、容赦なく攻撃され

装備面で大きな差があった両軍。
銃や大砲を装備したイングランド政府軍に対して、ジャコバイトの装備は貧弱でした。
槍や剣、あるいはせいぜい農具のような棍棒のみです。まるで勝負にならないわけです。

チャールズは命からがら戦場を抜け出しましたが、残されたハイランドの戦士たちは悲惨な目に遭いました。

息のある負傷者は執拗にとどめをさされ、女性や非武装の民まで捕らわれ、住居は徹底的に破壊されます。
この攻撃があまりに悲惨であったため、カンバーランド公は「屠殺者」という名で密かに呼ばれるようになるほどです。

戦いの結果とはいえ、放っておいても崩壊しそうな流れです。
それを一方的に惨殺するというこの戦いは、スコットランド人にとって深いトラウマとして刻まれました。

ただし、ハイランドの氏族を嫌いなローランドの氏族は、喜んでいたとも言われています。
このあたりに、氏族間の激しい対立を感じます。

 

マイ・ボニー「水の向こうの王へ乾杯」

さて、戦場を脱出したチャールズはどうなったのでしょうか。

カンバーランド公の配下は、チャールズを追いかけてスコットランド中を探し回りましたが、一向に行方をつかめません。

逃げ回るチャールズは、ヘブリディーズ諸島にたどりつきます。
そこで、友人を訪ねて来ていたフローラ・マクドナルドという勇敢な娘に出会います。

フローラ・マクドナルド/wikipediaより引用

フローラはチャールズを女装させ、ベティ・バークというアイルランド人侍女だと名乗らせました。
そして女装したチャールズを小舟に乗せ、ヘブリディーズ諸島北方のスカイ島へ。チャールズはそこからフランスまで亡命します。

フローラはこのことにより、逮捕されてロンドン塔に収監されてしまいます。
しかし、釈放後の彼女は、夫ともに天寿を全うしており、悲惨な死が待ち受けてなくてよかったところです。
彼女は勇敢なジャコバイト女性として、歴史に名を残したのでした。

一方、フランスに亡命したチャールズ。
彼に残されたのは、43年間にわたって破れた夢を追う日々でした。

彼は、彼の野望によって虚しく死んだハイランドの人々を罵り続け、性欲や酒への耽溺に変えて生き続けたのです。
人々を魅了した魅力的な王子の姿は、欠片も残っていません。

それでもジャコバイトは、彼を慕い続けました。

「水の向こうの王へ乾杯」
ジャコバイトの人々の集まりでは、乾杯をするときこう言い合いました。
水=海であり、「チャールズに乾杯」という意味ですね。

『マイ・ボニー』というスコットランド民謡があります。
ビートルズが歌いヒットし、日本語でカバーもされ、日本でも知られている名曲です。

愛しいボニーは海の向こう側にいる、ボニーを私のもとへ返して……そう歌い上げるこの曲も、チャールズへの思いを表現しているとも言われています。

21世紀になってからも、スコットランドはしばしば独立の機運が盛り上がります。
イングランドからすれば「何で今さら……」なのかもしれませんが、スコットランドからすれば積年の恨みつらみがあることでしょう。

今は連合王国として存在するけれども、かつてはいろいろあった。
歴史を振り返れば苦い思いと熱い愛国心がわきあがる。

それがスコットランドの歴史なのです。

文:小檜山青

なぜアイルランドとイギリスは不仲? 日本人には理解しにくいお国事情をスッキリ解説

【参考文献】

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リチャード・キレーン『スコットランドの歴史

 





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