イギリス

イギリス海軍の歴史~海賊行為で世界を制し海洋国家を樹立してから

世界中のどんな国にも、
【コレこそが我が国なり!】
と誇りたくなる特徴や歴史があります。

イギリスの場合は何か?
そう尋ねればこんな答えが返って来ることでしょう。

「イギリスこそ、海洋国家である」

ナルホド。
島国で海を制覇したイギリスゆえの誇り――イギリス海軍の歴史をたどれば多くの方が賛同できるかもしれません。

こんな話があります。

「BBCの自動車番組『トップ・ギア』で、突然司会者が我が国は海洋国家だと言い出したんですよ。そして、突然水陸両用車両作成実験に入りました」

 

ちょっと意味がよくわからない、というか、こんな顔( ゚д゚)ポカーンになりますが、ともかくそういうことのようです。

現在もイギリスでよく歌われる『ルール・ブリタニア』の歌詞はこうです。

 

ブリタニアよ(イギリスの象徴である女神)、統治せよ!
ブリタニアよ、海を支配せよ!
ブリトン人は決して奴隷にはならぬ!

イギリス人は海を支配してこそだ。ハッハー!
そんな誇りを感じますよね。

といっても、これは狙ってそうなったものではなく、哀しいかな、当初は必要に迫られてのことでした。

 

海を支配せよ!さもなくば奴隷になる

イギリスは、四方を海に囲まれています。
この点は、日本と同じです。

幕末になり、西洋列強の脅威を受けたとき、日本の人々はこう焦燥したものです。

「四方が海に囲まれているのだから、敵を防ぎようがない」
しかし、これはイギリスも同じこと。

かつてのイギリスは、海からやって来た敵に踏みにじられる辺境の島国でした。

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元をたどれば、イングラント人の祖先であるアングロサクソン人も、海を越えてやって来ております。

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世界史を専攻されてない方は驚きますが、現イギリス王室の祖先だってフランスからやって人たちです。

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世界を制するようでいて、実は制された国。
海を越えてやってくる相手には屈するしかないのか?

「NO!」

そんな風に答えを突きつけた人物がアルフレッド大王です。
先のYoutube動画『ルール・ブリタニア』も、アルフレッド大王を讃える劇中歌でした。

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強い海軍さえあれば、イギリスは支配されない!

我々は屈しない!

そのことを知らしめたアルフレッド大王が、愛国心の象徴となったのも無理のないところ。
イギリス史上に燦然と煌めく人物は、強い海軍力を伴っておりました。

離婚騒動や、その他多くの問題から「何なんだ、あの人は」という扱いを受けるヘンリー8世
実は彼は、ロイヤルネイビー(英国海軍)創始者であります。

ヘンリー8世/wikipediaより引用

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『TUDORS』でもあの王様は酷いもんでした。

 

「アルマダの海戦」で、当時の大国スペインを打ち破ったエリザベス1世は、英国史でも最も人気の高い君主かもしれません。

※『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』ではマーゴット・ロビーがエリザベス女王に扮します!

そして、ナポレオンの艦隊を二度も完膚無きまでに打ち破った、ネルソン提督!
何かと絵になる御方です。

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※ネルソン時代の英国海軍は、フィクションの世界でも大人気です。

 

うぇ〜い、海洋国家バンザーイ!

と言えるのもイギリスだからです。

他国からすれば、
「海軍使えるからってホイホイ侵略してくるんじゃねーよ! 大迷惑だわ、この海賊国家が!」
というツッコミが湧いてくるわけですね。

 

海賊行為でメイクマネー

海賊国家としてのイギリス。
当初、その矛先は隣国フランスに向かいました。

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「気軽に人の領土だの、王位だの、要求してんじゃねーよ! しかもシェイクスピア劇にまでしおって! 迷惑かつ厚かましいんだよ!!」

そう言いたくなってもよいところ。
百年戦争で敗北して以来、やっとこの迷惑行為もおさまります。

 

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しかし、海の上では別の話です。
フランスやスペインの船を襲い、荷物を掠奪することは、イギリス人にとっては気軽な経済行為でした。
これはイギリスだけではなく、他国ですらそうです。

戦争状態になれば、
「報復行為だ!」
という言い訳もできるというもの。
これを当時の王が取り締まったかというと、むしろラッキーだとすら考えていたフシがあるのです。

国家予算とは別枠で、敵国にダメージを与えられる。
金は天下の回りもの。
海賊行為で経済が活性化するならそれはよいこと。

ヨーロッパの戦争において、君主が頭を悩ませたことはお金の問題なのです。

所定期間が過ぎ去れば、戦争のために集めた貴族は、
「時間切れです。領地まで戻りますね。ホラ、治めないといけないでしょ」
と、勝手に戻ってしまうんですね。
そうなると、金を払って傭兵を雇う羽目になります。

チューダー朝は、こうした経済問題がネックでした。
名君とされるエリザベス1世は、宗教問題でも頭痛がしているのに、戦争まで金がかかるとなればもうパンクしそうなところです。

※海賊で一儲け、それはこの名君も考えたコトです!

そこで思い出してみるのが海賊です。
ヘンリー7世の頃からこうした海賊に目を付け、国家のライセンスさえあれば見逃す、そのかわり見返りをよこしましょうね、と持ちかけていたわけです。

ジェームズ・ボンドでおなじみの「殺しのライセンス」ならぬ「海賊のライセンス」ですね。

 

ジャック・スパロウの時代へ

時代がくだるにつれ、イギリスはじめ各国で海賊への考え方が変わり始めます。

【流石にこれ以上ヨーロッパ近海を荒らすのはいかがなものか】

どうせやるなら、目の届かないところでやれよ、ただし分け前はこっそり寄越せよという方向に……。

【海軍の発展】

エリザベス1世の時代頃までは、海軍の整備が進まず、民間船が戦うほかありません。
ところが17世紀後半ともなると、世界最強とうたわれる英国海軍が整えられてゆきます

「英国海軍の父」とされる人物が、サミュエル・ピープスです。

サミュエル・ピープス/wikipediaより引用

偉大な人物ではあるのですが、エロ本を買いあさっただの、エッチなことをしただの、そういうことを書き留めた日記が有名になってしまったのでした。

そのため、
「ピープス? ああ、あの恥ずかしい日記の人ね!」
なんてことに。

しかも本人は、恥ずかしいと自覚していたのか、暗号を使っていたというのが切ない話です。
バッチリ解読されましたけどね!!!

いや、まぁ、ロンドン大火の記述もありますし、史料価値は高い日記なんですよ。
黒歴史的記述があるだけで。

邦訳もありますので、ご興味があれば是非にでも。

【航海技術向上】

航海技術が発展し、地球の裏側であるアメリカ大陸まで向かうことができるようになりました。
しかもアメリカにはおいしいものがある!

【新大陸は儲かるぜえーッ!】

海の向こうには、ヨーロッパ人にとって利益の大きなものがたんまりありました。

アフリカから黒人奴隷を売り払えばウッハー!
新大陸から銀を掘り出したスペイン船を襲えばヒャッハー!

そこにビジネスチャンスがあったのです。

こりゃもう地球の裏側までレッツ海賊しようぜ♪ というわけで、海賊のグローバル化。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』時代の到来というわけです。

ジャック・スパロウがどうして海賊をしているかって?
そりゃあ、儲かるからですよ!

 

ああいう映画では、ファンタジックな財宝が出てきますよね。
大物海賊が金銀宝石をたんまり隠している――そんなストーリーですよね。

しかし、史実はそうじゃありません。

海賊が目を光らせて狙ったお宝は、自国以外の商船が運んでいる銀や黒人奴隷なのです。
銀を満載した沈没船があろうものならば、今こそ稼ぎ時だとばかりに、海賊船が集まりだしました。

では、こうした海賊になるのはどんな人たちなのか、ご想像つきます?

冒険心ゆえ?
海賊王になりたい?
ヒャッハーしたいワルだから?

そういう理由もあるでしょう。
しかし、最大の目的は生活手段。いわば出稼ぎ感覚です。

海賊は危険極まりないもの。
船が沈むかもしれませんし、戦闘だってマジの殺し合いです。さらに当時は壊血病という深刻な問題もありました。

それでも、陸の上でジッと貧しさに堪えるだけでは何の展望もない。

『ならいっちょ、海賊戦で一攫千金を狙ってみるか!】
要するに、海賊はロマンに溢れる荒くれ男というよりも、金がなくてどうしようもない男たちだった……そんな切ない事情があったわけです。

 

女海賊だっていた!

ちなみにこうした海賊には、黒人やムラートも含まれていました。
白人男性だけが海賊だと思うのは、大間違い。

女性だっておりましたよ!

女性海賊は、後世想像力を刺激しました。
中でも有名なメアリ・リードを主役とした小説を、フランス人作家のミレイユ・カルメル氏が手がけております。
※邦訳もあります

このシリーズにもう一人登場する女性海賊が、アン・ボニーです。
この二人こそ、女性海賊として最も知名度が高いと言えます。

『大航海時代V』、『Fate/Grand Order』、『アサシン クリード IV ブラック フラッグ』、『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』といったゲームでもおなじみ。
『ONE PIECE』のジュエリー・ボニーは、アン・ボニーをモデルの一人としているという推察もあるほどです。

メアリ・ハーリー、メアリ・クリケットという女性海賊も、史料に名が残っています。

メアリー・リード/wikipediaより引用

さて、リードとボニーですが、その人生は対称的です。

二人とも裁判にかけられ、投獄され、死刑宣告をされたところまでは同じです。
しかし、妊娠中で刑は執行されませんでした。

リードは1721年に獄中死、ジャマイカで埋葬されています。

ボニーは消息不明とされてきましたが、近年、彼女らしき足跡が明らかになりました。
ボニーは救い出され、出産。後に別の男性と結婚し、実に8児の母となったのです。

サウス・カロライナに残る彼女の死亡記録は1782年。
なんと84歳という、当時としては驚異的な長寿を全うしたことになります。

アン・ボニー/wikipediaより引用

彼女たちは、記録に残ったためその存在を確認できます。

『女海賊大全』という、彼女らについてまとめた本もお薦めです。

危険な海賊船や戦艦に乗りこんだのは2人だけじゃない――近年、そんな見方が出てきております。
海軍や陸軍にも、男装して入り込んだ女性がいたのです。

しかも、洗濯や食事の用意をしていただけではなく、戦闘においても参加したことが判明して来ております(BBC)。

戦った勇敢な女性たちの歴史は、今後ますます明らかにされていくことでしょう。

陸軍にも、男装した女性軍人がおりました。
ナポレオン戦争時、ロシア軍騎兵将校として活躍したナジェージタ・アンドレエヴナ・ドゥーロワ。

ドゥーロワ/wikipediaより引用

彼女は『女騎兵の手記』を刊行しております。これも邦訳が出ています。

追っかけから始めて何が悪い!『シェイクスピア劇を楽しんだ女性たち』

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シェイクスピア史から無視されがちだった女性を追った好著はこちらのレビューで。
そこにいた女性たちは、歴史から消去されがちな存在であるのです。

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