ユニオン・ジャック(英国国旗)

イギリス

なぜイギリス国旗「ユニオン・ジャック」はあの複雑なデザインなのか?

2025/04/11

1606年4月12日、イギリス国旗であるユニオン・ジャック(ユニオン・フラッグ)の初代が制定されました。

紺地に白と赤の十字が組み合わさった――実はその比率が厳密に計算されているため、縮尺を変えるときには一番気を使う国旗らしいですが、格好良いデザインですよね。

イギリスの正式名称=グレートブリテン及び北アイルランド連合王国の成り立ちと密接に関わっている図案でもあります。

一体どうやってデザインされていったのか?

その成立を見て参りましょう。

 


4つに分かれているイギリス

国旗の経緯を見る前に確認しておかねばならない大前提があります。

イギリスが4つの地域(国)から成り立つ連合王国であるということです。

それが以下の通りで、

・イングランド(ロンドン)

・スコットランド(エディンバラ)

・北アイルランド(ベルファスト)

・ウェールズ(カーディフ)

※(  )の中は中心都市

サッカーの代表チームもイギリス代表ではなく、上記の国代表になっていますよね。

英国としての首都がロンドンだからといって、

ロンドン塔

他の3国が格下というわけではありません。

まさか現地まで出向いて間違える方はいないと思いますが、念の為ご注意ください。

同じ理屈で、面と向かった相手に「イギリス人ですか?」と聞きたいときには「イングランドですか?」ではなく「UKですか?」と言っておいた方が無難。

UKなら「連合王国」という意味で全体を表しますので、イングランド以外のスコットランド・北アイルランド・ウェールズの場合でも問題ありません。

 


なぜユニオン=連合なのか

4つの国が連合して1つの王国になったのは、長い歴史の中で見るとつい最近のことです。

ただし、ウェールズとイングランドだけは早くから関係が深く、まず13世紀頃にウェールズがイングランドの支配下に入ります。

このときのエピソードが結構面白いので、簡単にご紹介しましょう。

時を遡ること約750年――イングランドの下についていたウェールズ大公は、支配下にいる状況が気にいらず、反乱。

ときのイングランド王エドワード1世に鎮圧されてしまいます。

エドワード1世(イングランド王)/wikipediaより引用

エドワードはウェールズを直轄地にすることも考えましたが、今後、何度も反乱を起こされては意味がありません。

「ウェールズを支配するのは、ウェールズで生まれ、英語を話さず、罪を犯したことのない者がふさわしい!」

そう主張するウェールズの人々に対し、エドワードは「一年後また集まってくれ」と返事を保留して引き揚げました。

そして約束の一年後。

エドワードは生まれたばかりの我が子を連れ、再びウェールズ諸侯の前に現れました。

「この子こそウェールズ公の条件を満たす者だ!」

後のイングランド王エドワード2世――これにより、代々のイギリス王太子は「プリンス・オブ・ウェールズ」を名乗ることにもなりました。

とまぁ、よく出来た話でございまして。当時のイングランド王はフランス貴族としての性格も強く、常用語はフランス語だったため、伝説の部類ではあります。

しかしウェールズが他のエリアよりも早くイングランドとの関係を深めているのは事実です。

時は流れ1603年。

処女王として有名なエリザベス1世が世を去ったことにより、血筋の近いスコットランド王ジェームズがイングランド王を兼ねるようになりました。

そして最後にアイルランドが加わって、現在のイギリスができたというわけです。

厳密にいえば現在イギリスの中に入っているのは”北”アイルランドだけで、アイルランドの大部分はまた別の国であり、背景にいろいろややこしい経緯があるのですが……。

 

4つの国旗をどう組み合わせるか

「同じ国になるのだから、共通の旗を作ろう!」

さて、この4つの国は、それぞれ独自の国旗を持っていました。

・イングランドは白地に赤十字

・スコットランドは青地に斜めの白十字

・アイルランドは白地に斜めの赤十字

これらをひとつずつ組み合わせていった結果、今のイギリス国旗ができたのです。

1606年時点では、イングランドの旗+スコットランドの旗だけを組み合わせた図案でした。

当時の王ジェームズ1世が

「イングランドとスコットランドは同じ王を戴くようになったのだから、双方に配慮した国旗を作るべき」

と考え、双方の旗が同じ比率で組み合わされているデザインを採用したためです。

イギリス国旗の変遷/wikipediaより引用

ちなみにウェールズは?

というと、前述の通り、他国と比べて早くイングランドの支配下になったため「国家としてはイングランドとウェールズで一つ」とみなされており、旗からは省かれてしまいました。

ウェールズの旗も白と緑のツートンに赤い竜が描かれていてかなりカッコイイのですが、いかんせん他の旗とあまりにも違いすぎて組み合わせるのが難しかったようで……今でもウェールズは国旗上ではトホホな扱いになっています。

ウェールズの国旗/wikipediaより引用

「プリンス・オブ・ウェールズ」の称号がその代わりなんですかね。

ついでに他国の特徴的な国旗の由来もいくつか見てみましょう。

まずはおなじみの日の丸=日本国旗から。

 


日本の国旗の由来は

法律上では「日章旗」とも呼ばれます。

日本の伝統的なお弁当である「梅干とご飯」を表した……のではなく、日=お日様を表した図案です。

神道でははるか昔から「太陽は神聖なもの」と扱われており、その形をあしらったものになったのですね。

最高神・天照大神が太陽の象徴であること、聖徳太子から煬帝への手紙に「日の出ずる所」「日の没する所」などと記述したことからも、当時の人々がどれだけ太陽を特別なものとしていたか伝わってきます。

日の丸/wikipediaより引用

「白地に赤い円」という現在の色になったのはもっと後の話で、一説には「平家が赤地に金丸、源氏が白地に赤丸の旗を使っており、源氏が勝ったので後者が主流になった」とか。

「紅白の組み合わせは縁起が良い」とされているのも関係あるのでしょうね。

日の丸に太陽の光を表す線を足したものは「旭日旗」(きょくじつき)といいます。

旧軍の旗のイメージが強いためか、今では何かと物議を醸す元になることもありますね。

海上自衛隊では現在も堂々と使っていますので、「何を今更」という話だったりもしますが。

 

ブラジルの国旗は星空

ちょっと意外なのがブラジル国旗です。

緑地に黄色いひし形、中央に青い丸の旗ですね。

あの青丸、実は星空を表しているのだそうです。

共和制になった日の空と、国内の州+首都の数にちなんだ27個の星が描かれているのだとか。

地球だと思っていた方は結構多いんじゃないでしょうか。私もです。

緑は自然、黄色は資源を表し、赤道のように書かれている白い帯にはポルトガル語で「秩序と進歩」と書かれているのだとか。

これは、ブラジルにとってポルトガルが旧宗主国であるためです。

近年ではブラジルのほうがポルトガルより人口が多く、発音などが変化しているので、「ブラジルポルトガル語」「ブラポル語」と呼ばれることもあるそうで。

そのうち「ポルトガル語から変化した言語」として新たに「ブラジル語」と呼ばれるようになるのかもしれませんね。

 

世界唯一の四角くない国旗

また、変わった形の旗としてはネパールが挙げられます。

三角形が二つ重なっていて、多分一度見たら忘れられないアレです。

もちろん奇抜にしたいがためにああなったのではなく、それぞれ別の三角形の旗として使われていたのを組み合わせたのだそうです。

中の図案や全体のシルエットも「月と太陽」「ヒマラヤ山脈」「ヒンドゥー教と仏教」など、ネパールを構成するさまざまなものを意味しているとか。

そう言われると、まさに国を表す旗という感じがしてきますね。

一カ国ずつ挙げ続けるとキリがないのでこのへんにしておきますが、海外の物事に触れる際には調べてみると面白いかもしれません。

 

国旗を構成する色にも意味がある

国旗を比較するときに知っておくと面白いかもしれない雑学についてもご紹介しましょう。

国旗にはよく赤や白が使われていますが、実は国によってかなり意味が違っているのです。

例えば【赤】だけでもこんなにあります↓

・情熱(ドイツ)

・大西洋と太平洋(カナダ、左右のみ)

・博愛(フランス)

・血(スペイン)

・勇気(オランダ、イラク)

・憲法(イラン)

・太陽(日本、パプワニューギニア)

・民族の統一(メキシコ)

どれも何となく納得いきますが、海と結びつきにくい赤を大西洋と太平洋に見立てたカナダ人すげえ。

赤と白がカナダを表すカラーと定められているからだそうです。

カナダ国旗/wikipediaより引用

次に【白】の意味合いを見ていくと、こんな感じです↓

・雪の降る国土(カナダ)

・平等(フランス)

・信仰心(オランダ・メキシコ)

・雪(フィンランド)

・平和(イラン)

・寛容(イラク)

こっちもわからなくはないかなあ、という感じですね。

日本の場合は白単独よりも”紅白”=めでたいという意味が強いようです。

で、こういうさまざまな経緯や意味合いがこもっている「国の象徴」なので、自国はもちろん他国の国旗は丁寧に取り扱わなくてはいけません。

破ったり火をつけたり踏みつけたり噛み付いたりペンキぶっ掛けるなんてのはもってのほかどころか、前世紀初頭であればどうなっていたかわからないほどの侮辱にあたります。

別に特定の国を指しているわけではありませんが、もしスポーツの応援などで他国の国旗に触れるときは丁寧に扱いましょうね。

グローバル化が進む昨今、お仕事やプライベートで複数の旗や類するものを扱う方も増えているでしょうし。

特に複数の国旗を設置したり、撮影する場合にはいろいろ国際ルールがあるので、外務省のホームページ(→link)を参考にすると良さそうです。


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【参考】
新国旗楽委員会『世界が見える国旗の本 新装版』(→amazon
君塚直隆『物語 イギリスの歴史(上)古代ブリテン島からエリザベス1世まで (中公新書)』(→amazon
外務省(→link

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長月七紀

2013年から歴史ライターとして活動中。 好きな時代は平安~江戸。 「とりあえずざっくりから始めよう」がモットーのゆるライターです。 武将ジャパンでは『その日、歴史が動いた』『日本史オモシロ参考書』『信長公記』などを担当。 最近は「地味な歴史人ほど現代人の参考になるのでは?」と思いながらネタを発掘しています。

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