ユニオン・ジャック(英国国旗)

イギリス

なぜイギリス国旗「ユニオン・ジャック」はあの複雑なデザインになったのか?

1606年4月12日、イギリス国旗であるユニオン・ジャック(ユニオン・フラッグ)の初代が制定されました。

紺地に白と赤の十字が組み合わさった――実はその比率が厳密に計算されているため、縮尺を変えるときには一番気を使う国旗らしいですが、格好良いデザインですよね。

イギリスの正式名称=グレートブリテン及び北アイルランド連合王国の成り立ちと密接に関わっている図案でもあります。

一体どうやってデザインされていったのか?

その成立を見て参りましょう。

 


4つに分かれているイギリス

国旗の経緯を見る前に確認しておかねばならない大前提があります。

イギリスが4つの地域(国)から成り立つ連合王国であるということです。

それが以下の通りで、

・イングランド(ロンドン)

・スコットランド(エディンバラ)

・北アイルランド(ベルファスト)

・ウェールズ(カーディフ)

※(  )の中は中心都市

サッカーの代表チームもイギリス代表ではなく、上記の国代表になっていますよね。

英国としての首都がロンドンだからといって、

ロンドン塔

他の3国が格下というわけではありません。

まさか現地まで出向いて間違える方はいないと思いますが、念の為ご注意ください。

同じ理屈で、面と向かった相手に「イギリス人ですか?」と聞きたいときには「イングランドですか?」ではなく「UKですか?」と言っておいた方が無難。

UKなら「連合王国」という意味で全体を表しますので、イングランド以外のスコットランド・北アイルランド・ウェールズの場合でも問題ありません。

 


なぜユニオン=連合なのか

4つの国が連合して1つの王国になったのは、長い歴史の中で見るとつい最近のことです。

ただし、ウェールズとイングランドだけは早くから関係が深く、まず13世紀頃にウェールズがイングランドの支配下に入ります。

このときのエピソードが結構面白いので、簡単にご紹介しましょう。

時を遡ること約750年――イングランドの下についていたウェールズ大公は、支配下にいる状況が気にいらず、反乱。

ときのイングランド王エドワード1世に鎮圧されてしまいます。

エドワード1世(イングランド王)/wikipediaより引用

エドワードはウェールズを直轄地にすることも考えましたが、今後、何度も反乱を起こされては意味がありません。

「ウェールズを支配するのは、ウェールズで生まれ、英語を話さず、罪を犯したことのない者がふさわしい!」

そう主張するウェールズの人々に対し、エドワードは「一年後また集まってくれ」と返事を保留して引き揚げました。

そして約束の一年後。

エドワードは生まれたばかりの我が子を連れ、再びウェールズ諸侯の前に現れました。

「この子こそウェールズ公の条件を満たす者だ!」

後のイングランド王エドワード2世――これにより、代々のイギリス王太子は「プリンス・オブ・ウェールズ」を名乗ることにもなりました。

とまぁ、よく出来た話でございまして。当時のイングランド王はフランス貴族としての性格も強く、常用語はフランス語だったため、伝説の部類ではあります。

しかしウェールズが他のエリアよりも早くイングランドとの関係を深めているのは事実です。

時は流れ1603年。

処女王として有名なエリザベス1世が世を去ったことにより、血筋の近いスコットランド王ジェームズがイングランド王を兼ねるようになりました。

そして最後にアイルランドが加わって、現在のイギリスができたというわけです。

厳密にいえば現在イギリスの中に入っているのは”北”アイルランドだけで、アイルランドの大部分はまた別の国であり、背景にいろいろややこしい経緯があるのですが……。

 


4つの国旗をどう組み合わせるか

「同じ国になるのだから、共通の旗を作ろう!」

さて、この4つの国は、それぞれ独自の国旗を持っていました。

・イングランドは白地に赤十字

・スコットランドは青地に斜めの白十字

・アイルランドは白地に斜めの赤十字

これらをひとつずつ組み合わせていった結果、今のイギリス国旗ができたのです。

1606年時点では、イングランドの旗+スコットランドの旗だけを組み合わせた図案でした。

当時の王ジェームズ1世

「イングランドとスコットランドは同じ王を戴くようになったのだから、双方に配慮した国旗を作るべき」

と考え、双方の旗が同じ比率で組み合わされているデザインを採用したためです。

イギリス国旗の変遷/wikipediaより引用

ちなみにウェールズは?

というと、前述の通り、他国と比べて早くイングランドの支配下になったため「国家としてはイングランドとウェールズで一つ」とみなされており、旗からは省かれてしまいました。

ウェールズの旗も白と緑のツートンに赤い竜が描かれていてかなりカッコイイのですが、いかんせん他の旗とあまりにも違いすぎて組み合わせるのが難しかったようで……今でもウェールズは国旗上ではトホホな扱いになっています。

ウェールズの国旗/wikipediaより引用

「プリンス・オブ・ウェールズ」の称号がその代わりなんですかね。

ついでに他国の特徴的な国旗の由来もいくつか見てみましょう。

まずはおなじみの日の丸=日本国旗から。

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