古い時代において、”失脚したお偉いさん”は即座に死刑or流罪がテンプレでした。
日本だと崇徳天皇や後鳥羽上皇といったトップの人でも流されていますし、海外でもナポレオンや、エリザベス1世のお母さんであるアン・ブーリンなど、枚挙に暇がありません。
では終身刑になった人はいなかったのか?
といえば、います。
ドデカい謎と共に何十年も生きた囚人が。
1703年11月19日に亡くなった、”鉄仮面”と称される人物です。
「仮面の男」としてたびたび小説や映画のモチーフになっていますので、何となく見覚えのある方もいらっしゃるでしょうか。
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面会時だけマスクをつける、しかも布製って
彼がフランスのバスティーユ牢獄に収監されたのは1669年。
それから34年間同じ場所におり、亡くなったのも同じ場所でした。
日本史でいえばだいたい四代目将軍・徳川家綱~五代目・徳川綱吉の時代。
将軍一世代分と見ると長いですね。
彼についてはおそらく「鉄の仮面を一生つけ続けていた」と考えている方が多いと思いますが、仮面をつけていたのは面会者が訪れてきたときだけです。
しかも実際は【ビロード=布製】だったそうで……さすがにミイラ男みたいなやつではないと思いたいところですね。
どこの監獄でも直接世話をする人が「彼の顔は知らない」と言っていたようなので、面会者が来たときだけでなく牢獄内の人間を前にしても着用していたっぽいですね。
口元が開いていて、顔の上半分を隠すような感じでしょうか。
それでいて、食事や衣服については囚人とは思えないほど良いものが与えられていたとか。
正体以外に「大きな疑問」が2つある
さて、ここまででも一体いくつの謎が出てきたか?というところですが、
彼の正体を抜きにしても、他に大きく二つの疑問が出てきます。
一つは「彼に複数回面会をしにくる人物がいた」ということ。
顔を隠したまま生かしておくこと自体も謎ですが、それでいながら面会しにくる必要は一体どこにあるのでしょう?
見世物になっていたわけでもなさそうですし……。
彼はバスティーユ牢獄で相当厳しい緘口令を布かれていたらしく、自らの身の上などについて話すことは固く禁じられていました。
であれば、面会しても大した話はできないわけですから、そもそも面会する理由がないですよね。見張りならば常に側にいるわけですし。
現代のようにパパラッチが何人もいたというなら話は別ですけれども、それなら書物か何かにそれらしき記述が残っていてもよさそうなものです。
なぜ34年間も生かしておいたのか
もう一つは「これほどの情報統制や本人への箝口令が布かれていた囚人でありながら、なぜ34年間も生かしておいたのか?」ということです。
身も蓋もない言い方をしますが、当時のヨーロッパでは(も)ある程度身分がある&政治的または軍事的に邪魔になりそうな人物はとっとと【ピー】してしまうのが常識みたいなものでした。
生かしておくと、いつ立場をひっくり返されるかわからないからです。
「王様になったら、親兄弟をMINAGOROSHIにするのが当然!」
そんな時代もありました。
さすがに近代では、そこまで過激なことをする人はそうそういませんけれども。
鉄仮面にわざわざお世話役がついていることからして、元はかなりの身分があった人であることは間違いないところ――となると、余計に生かしておく理由がわからないのです。
囚人を養うのだってタダじゃありませんからね。
ついでにいうと、この時代のフランスはルイ14世があっちこっちで散財していたので財政が火の車になっていました。
殺してしまえば人手も費用もかからないような相手を、どうして外出以外の点で厚遇し続けたのか……さっぱりわかりません。
亡くなったときには所持品や使っていた家具なども全て焼却処分され、暮らしていた独房でさえも壁を削った上で新しく塗料を塗り直すなど、徹底的に痕跡を消されています。
そこまでして彼の存在を消したいというなら、なぜこれほど長い間生かしておいたのでしょう?
とっとと殺して証拠隠滅したほうが手間を省けますよね。
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