脱走用に掘られた穴が/エクスプレス紙より引用

ドイツ

ドイツ兵捕虜が映画さながらに大脱走! 第二次世界大戦末期に起きたホントの話

戦争映画の定番といえば“脱走”ものの作品ですね。

ざっと挙げられるだけでも

『第十七捕虜収容所』(→amazon

『大脱走』(→amazon

『勝利への脱出』(→amazon

などがあり、こうした映画の設定は、ほとんどが「連合国軍の兵士がナチスの捕虜収容所から脱走する」内容ばかり。

その逆、つまりドイツ兵による脱走劇は滅多になく、せいぜい『マッケンジー脱出作戦』(→amazon)ぐらいでしょうか。

しかし「ドイツ兵による連合軍の捕虜収容所脱出」が実際に行われていた事を知りましたので、ご紹介させていただきます。

 

英国サウスウェールズのドイツ兵捕虜収容所

くだんの捕虜収容所は英国サウスウェールズ州のブリッドジェンドという場所にありました。

報じていたのは英国のエクスプレス紙(→link)。

ドイツ兵捕虜収容所/エクスプレス紙より引用(→link

グーグルで地図検索してみたら、こんな場所でした。

海辺に近いのですね。

このブリッドジェンドで1945年3月10日、70人の捕虜が脱走を試みました。

有名なバルジ大作戦も失敗に終わり、どう見てもドイツ側の敗色が濃厚だった頃です。

 

「大脱走」そのまま、こっちも大掛かりなトンネルを掘る

方法は、映画『大脱走』そのまま。

つまり、大掛かりなトンネルを掘ったのです。

こうしたトンネルの中でも、屈指の規模だったそうですが、戦後は立入禁止となり、入り口が封鎖されていました。

今回、専門家が30フィートだけを調査してみたところ木材を使った梁が当時そのままの状態で、頑丈な作りに感心したとの事です。

なお、木材は盗んできたベンチを流用していたのだとか。

ただただ凄いの一言につきますね。

さて、この捕虜収容所ですが、もともとは近所の軍需工場の女性労働者向けの保養所として建設されました。

その後、ノルマンジー上陸作戦を控えたアメリカ軍兵士のキャンプに転用。さらに上陸作戦後は、大量の捕虜が出るのを見越して、ドイツ兵捕虜収容所になったのだそうです。

歴史家で、保存団体の会長を務めるブレット・エクソストン氏はかく語ります。

「最盛期には2000人が収容されていました。宿泊小屋も30軒が作られていました」

かなりの規模ですね。

エクソン氏によると、ここに入れられたドイツ兵は、即座に脱走を計画し始めます。

地元の人によると、最初のトンネルが見つかったのは1945年1月。兵士らには警告がされたそうですが、無視されました。

「2つ目のトンネルはハット9と呼ばれる小屋から掘られはじめました。鉄条網に近く、見つかりにくかったからです。一帯の地層はオレンジ色だったので目立ちやすく、兵士らは偽の壁を作り、その中に土を押し込める工夫をしていました」(エクソストン氏)

掘られた穴の跡が今も……/エクスプレス紙より引用

使ったのはナイフ。

空き缶を使って送風管を作り、そこから手押しのファンで作業に当たる兵士らが呼吸困難にならないようにしていました。

盗むベンチがなくなると、今度はベッドを壊して梁としていました。

ちなみに、外に出ても怪しまれないように、偽造の身分証明書や地図をあてがわれていたそうですから、まさに映画『大脱走』です。

いざとなると、人間って同じような事を思いつくものなのですね。

さらには、迷っているところを見られて怪しまれないようにと、コンパスまで作っていたとの事で……さすが技術大国ドイツ!

 

3月10日に決行! 70人の運命やいかに?

そして、3月10日の夜、脱走が結構されます。

ところが、ここでアクシデントが。

看守が警戒のサーチライトを回している内に、白いカバンがフェンス際にあるのを発見。

「さては脱走だな!」と大騒ぎになったのです。

ドイツ兵側も必死の抵抗を試みます。

その際、看守1人がトンネルの出口に落ちてしまい、ドイツ兵1人が撃たれたとか。

結局、脱出できたのは70人。4時間にも渡る騒動となりました。

※こちらの動画は、第二次世界大戦の戦勝記念日に、捕虜収容所を訪れるドイツ政府関係者(エクスプレス紙より引用)

エクストン氏によると

「陸軍と警察などによる大掛かりな捜索が行われました。地元の農夫らには、警戒を怠らず怪しい人物を見かけたら通報せよと命令がくだされました」

とのことです。

一方、捕虜収容所の監視体制を巡っては非難が集まりました。

計画が周到だった事や、そもそも保養所になるようなところなので周辺の状況がどうなのかが兵士らに把握できた事(つまり「俺達は今この辺に収容されている」と分かってしまった)、さらには探照灯が少なかった事などの不備が判明したからです。

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