ハドリアヌスの長城

ローマ

ハドリアヌスの長城とは? 古今東西、国の重要な防御機能、それは……壁!

”壁”という単語から何を連想するでしょうか?

昭和生まれなら冷戦やドイツ、某アニメファンなら「心の」という形容詞を思い浮かべるのではと思います。最近だと巨人と戦う某マンガと答える人も多そうですね。

そして歴史好きであれば、数々の遺跡や城塞都市名も出てくるでしょう。

122年の9月13日に建設が始まったといわれている、”ハドリアヌスの長城”などですね。
今もイングランドとスコットランドの境界線の基準となっている建造物です。

写真で見るとただ一枚の壁があるだけで、あまり防御機能がないようなゲフンゲフン。まあまだ2世紀ですし、神聖じゃないほうのローマ帝国があった時代ですから仕方がない。

 


北に住んでるアイツらマジこえーわ!

「長城」といえば日本人にとってはお隣中国にある”万里の長城”です。
が、どちらも建設のきっかけは似たようなものです。

「北に住んでるアイツらこえーから、デッケー壁を作ってこっちにこられないようにしようぜ!」という実にシンプルな理由でした。

中国の場合は今のモンゴルあたりに住んでいた騎馬・遊牧民族、イングランドの場合はケルト人との争いに備えてのことです。
単に”ケルト人”といった場合はとても広い範囲を指すのですが、ここでは「ローマ帝国に服従しなかったイギリス北方の人々」ぐらいの意味になります。

乱暴にまとめると「現在のスコットランド・アイルランド人のご先祖様」といったところでしょうか。

服従するのが嫌=当然戦闘になるわけで、その最前線となる場所にローマ帝国側が作った”壁”がハドリアヌスの長城というわけです。

ハドリアヌスというのは当時の皇帝の名前ですので、超訳すると「壁オブ俺」ってことになってしまうんですが深くツッコまないでおきましょうね。
それ言ったら万里の長城だって「ザ・なげー壁」になっちゃいますし、サンクトペテルブルクは(ry

 


もはや壁じゃないけど国境線に

まあそれはさておき、実はこの後に対ケルト人用の壁がもう一つ作られています。

もっと北方にあった”アントニヌスの長城”というものです。

これもまた「壁オブ俺」なのですが、そのDQNもとい偉そうな名前の割に全く役に立たず、建設から20年程度でほぼ意味がなくなってしまい、ハドリアヌスの長城付近で国境線が固定化されることに。

ハドリアヌスのほうは何とか「壁」と認識できる程度のものが残っていますが、アントニヌスのほうは「このヘンゼル随分念の入った目印つけたな」くらいにしか思えません。

北にある線がアントニヌスの長城で、南側がハドリアヌスの長城/photo by Longbow4u wikipediaより引用

 


秀吉が挑戦するも予算が足りずにブーイング

我らがニッポンではこういう考え方はあまりないようです。
壁というか堤防を作って水責めにした話は何度かありますが。

一応、各所の城や大都市では「くるわ)という壁で囲んだ区域がありましたが、上記のように「特定の異民族への対抗」というよりは「戦が起きたときに負けないためのオプション」に近いですしね。
具体的な敵を想定していないというか。

代々の「○○京」ですら、中国風の区画(碁盤の目状)は採用しても、壁で取り囲んだ城塞都市にはなっていません。

一度秀吉が「唐の都はでっかい壁で囲まれてるんだって? ウチもやろうぜ!」という計画を立てたことがありました。

予算が足りず土壁(土塁)を作るだけで終わった上、「壁ができてからあっちこっち行きづらくなってスゲー不便なんですけど!」と民衆からの不満タラタラという哀しいオチになってしまいました(´・ω・`)

いろいろ考えて作っていれば、「太閤様は皇室と都を大切になさるありがたい方だ!」ってことでいろいろ便利になったでしょうにね。惜しい。

 

なぜ日本では城塞都市が発展しなかったのか

世界各国で城塞都市の存在が珍しくない中、日本にはほとんどそういうものがないというのはちょっと不思議ですね。

元々国土の7割方が山ですから、自然の要害に勝るものを作ろうとは思わなかったのかもしれません。
しかも地震雷火事……親父はともかく、その他の災害でしょっちゅう建築物が壊れますから、作ってもしょうがないじゃんと思う人が多かったのでしょうか。

”流れ橋”のように、災害に面と向かって立ち向かうよりは、起きた後(やり過ごした後)ちょっとでも再建が楽になるための工夫をしていることも何となく関係ありそうです。
最近だと免震構造なんかも含まれますかね。

この辺から東西もしくは外国と日本の考え方を深く突っ込んでみると面白そうです。……って、あれ、何の話でしたっけ(・ω<)

長月 七紀・記

【参考】
ハドリアヌスの長城/Wikipedia


 



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