『おんな城主 直虎 完全版 第壱集 [Blu-ray]』/amazonより引用

おんな城主直虎感想あらすじ

『おんな城主 直虎』感想レビュー第7回「検地がやってきた」 直親の智謀は50台だよ、ヤァ!ヤァ!ヤァ!

こんばんは、武者震之助です。
ちょっとくせのある本作のサブタイトルには、元ネタがあるそうです。

◆【直虎】実はゆるくないサブタイトル 映画や小説をモチーフに(→link

そんなわけで今週は検地がやってきたヤァ!ヤァ!ヤァ!というわけですが。

井伊家の面々は当然楽しくはありません。ただし、番宣の「今川の魔の手が迫る!」というのは言い過ぎではないかと。今川側としては脱税をしていないか調べに来るわけで、いわば税務監査です。確かにうっとうしく憎たらしいものではありますが、魔の手は言い過ぎではないでしょうか。
そんな今週の始まりです。

 

直親の帰参と引き換えに検地(税金徴収)のやり直し!

自ら選んだ道とはいえ、井伊直親と結ばれる道を断った次郎(井伊直虎)は複雑な気分です。
直親とその新妻・しのが笛と鼓を合奏する音を聞き、かつて直親を待ちながら鼓をうった幼き日を思い出す次郎。しかし自分自身の存在が、しのにとっても棘になることを次郎は気づいていないのでした。

目付である小野政次新野左馬助は、直親の帰参と詳細の家督を相続することを、駿府の今川義元へと報告しに行きます。

義元は直親が還俗した次郎と結婚するつもりか確認し、そうではなく奥山の女(むすめ)と結婚したと聞き安心したようです。


今川義元は直親帰参を咎めはしなかったものの、検地をし直したいと言い出します。
井伊谷に戻った政次と左馬助がそのことを報告すると、井伊直平がまた文句。今川が甘いなら次郎の還俗も持ち出せばよかったのに、とだだをこねているとしかいいようのないクレームの付け方です。さらに検地に激怒し、自らが治めている川名に立ち寄ったら血の雨が降るぞ、と脅し文句を吐いてその場を去ってゆきます。
税務監査が嫌だと言い張る人は、後ろ暗いところがあるものです。実は直平の治めている川名には、隠し里があるため、検地に抵抗を示しているのでした。

直親は隠し里を見に行くことにします。
このとき直親は隠し里の存在に驚いていますが、そんな場所があったからこそ、直平は先週次郎を死んだことにして、そこに隠す策を出したのでしょう。

直親は直平の案内で、隠し里を見に行くことにします。馬も入れないその場所は、なかなか見事な棚田が広がっていました。
この場所は井伊家にとっては緊急避難先であり、直平はただ単に賦役を課させるのが嫌だったわけではないのでした。だからといって今川は看過できません。脱税といざという時の避難先なんて、絶対に探りたいところでしょう。

 

脱税のための接待材料を探させるが……

井伊家の皆は「指出」(土地の広さや収穫高を記した書類)の作成の大忙しです。
そんな中、直親は隠し里を隠し通すために策をめぐらせ、対処することを直盛に申し出ます。直親にとってはこのまま隠し里が判明してしまっては、自分の帰参のせいになるという負い目があります。張り切って出かけてゆく直親の背を、新妻のしのは複雑な思いで見送るのでした。

しのが複雑な顔をしているもの当然です。
直親はよりによって次郎を頼っていたのです。直親は、次郎を使って、瀬名から検地役を丸めこむための情報を得ようとしています。身も蓋もない言い方をしますと、脱税のための接待材料が欲しいわけです。そんな策でよいのかとちょっと心配になってきました。

しのは夫が、夫が深く愛した初恋の人に会っていたことに、不安を抱いています。
これがもし瀬名なら怒りのあまり平手打ちくらいするかもしれませんし、昨年の春ならば襖の穴を開けているところですが、奥ゆかしいしのは違います。本音を言わず、健気な態度を見せるだけです。

直親の鈍感さが何とも歯がゆいですね。
まさか昨年の信繁が見せ付けた「女性への鈍感対応」を上回る男が、こんなに早々と出てくるとは思いませんでしたよ。

 

天真爛漫な直親は心の機微に気づかない!?

直親は川名に通い、隠蔽工作にいそしみます。小野政次は検地においてもフル回転で働いています。
露骨に誤魔化そうとする中野直由相手に「誤魔化してバレたら余計まずいことになりますよ」と正論を述べても、相手は改心するどころか「今川に尻尾を振りやがって!」と悪態をつく始末。目付というのは辛いものですね、と弟の玄蕃がフォローを入れますが、見ているこちらまで胃が痛くなりそうな場面です。

直親は、瀬名(築山殿)からの書状が届いたのかと、また次郎に会いに行きます。次郎はもし政次が隠し里のことを今川に報告したら全部無に帰すのではないかという懸念を、直親に告げます。直親は、政次は俺と同じ気持ちだから大丈夫、と言います。さらに「甘いかな?」と次郎に聞きます。
はい、大甘でしょう。
この甘さが将来的に彼の命取りになる気がします。甘い男にシビアな女、本作の特徴的な対比です。

ここでの直親の尋ね方も何か人を不快にさせるものを持っています。こういう相手に否定させないで尋ねるやり方が、人の気持ちを試し、弄んでいるように思えるのです。

しかし直親は性格的にわざとそんなことはしていないと思います。全ては天然です。
気づかぬうちに人を不快にしてしまう人物といえば、昨年の石田三成もそうです。三成と直親の差は、人当たりのよさです。三成は見るからに傲慢で無愛想ですが、直親は一見さわやかで人当たりがよいのです。

こういう相手への怒りというのは、相手が敏感ではないと気づかないものです。
そしてここで考えたいのが、直親へ最も不満を募らせる存在である政次です。直親とは対称的に、中身は誠実でも外から見れば陰性、しかも今川に近い彼が抱く直親への不満を、誰がまともに取り合うでしょうか。鶴亀コンビに亀裂が入る日はもうすぐそこまで迫っているのではないでしょうか。

 

直親の策がガバガバ過ぎて、政次の心をガリガリ削る

直親は政次の元に向かうと、川名の指出を提出します。その内容は、なんと隠し里は白紙提出するというものでした。
そしてさらに、はい、ストレートに「俺が信じるからお前も俺を信じろ」作戦に出ました。

直親得意の、相手の良心に訴えかけて退路を防いでおきながら、相手に自分が選ばせたい答えへと誘導する作戦です。政次が今川に報告したらお前の良心は痛むだろうけど、どうするんだと試しているわけです。これは見ていて辛くなってきました。検地なんてたいしたことないかと思っていましたが直親の策がガバガバ過ぎて、しかも政次の精神をガリガリと音がしそうなほど大胆に削っていて、ものすごくスリリングです。
これが本作の持ち味か!

直親が帰ったあと、呆然とする政次。気遣う玄蕃に対して、怒りをぶちまけます。
政次の気持ちはよくわかります。完全に直親は、政次を試していますし、幼なじみという立場に乗っかって無茶ぶりをさせているわけです。これは政次の魂がどんどんと濁ってゆくパターンです。

かくして政次は今川家への指出をまとめて、直親に提出します。
直親は隠し里の分は政次が破棄したと知って満足げです。彼には政次の心がきしむ音など聞こえないのです。

井伊家の井戸に、政次が祈りにやって来て、次郎とでくわします。俺の思うようことが運ぶように、願う政次の姿に、次郎は胸騒ぎを覚えるのでした。

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