犬の名前はなぜポチなのか

円山応挙『狗子図』/wikipediaより引用

明治・大正・昭和

犬の名前はなぜポチが定番だったのか 起源は明治時代 ある意味これも文明開化

ペット保険を手がけるアニコム損保さんによると、「2023年犬の名前ランキング」の上位は次の通りです(参照)。

1. ムギ
2. ココ
3. ソラ
4. モカ

2022年とほぼ同じで、

1. ムギ
2. ココ
3. モカ
4. ソラ

5年前の2017年とも上位2つは被っていますね(参照)。

1. ココ
2. ソラ
3. マロン
4.チョコ

あくまでイメージですが、トイプードルやヨークシャテリア、チワワあたりに付けられそうな感じと申しましょうか。

お菓子のように可愛らしく、夢のある名前をつけたい――飼い主のそんな温かい気持ちを感じます。

これが昭和になりますと、「クロ」とか「シロ」、あるいは「ブチ」といった毛色由来の名前が多かったように感じるのですが、他には映像作品などにも影響されたりするようで。

漫画・ドラマ『動物のお医者さん』のチョビとか、映画『南極物語』のタロとジロとか、大ヒット作品に関連して名付けられる現象はよくみられました。

さらに時代を遡ってみましょう。

毛色や模様からの由来ですと、白虎隊士・酒井峰治の愛犬「クマ」がいます。

おそらく熊のように黒かったのでしょう。

※以下は白虎隊の関連記事となります

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『南総里見八犬伝』の犬は「八房」。

模様が八カ所あるわけです。

『南総里見八犬伝』の八房/wikipediaより引用

毛色ではなくどういう理由で付けられたのかわからないのが、『枕草子』に出てくる「翁丸」。

北条高時は「雲竜」ですから、なんだかお相撲さんのようでもあり、立派な体格の犬をイメージしますなぁ。

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幕末維新期の犬好きで有名な方と言えば西郷隆盛であり、その愛犬は「ツン」でした。

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さて、ランキングに全く登場しないものの、「犬といえばコレ!」という典型的な名前があります。

それは、ポチ――。

メディアでも度々登場しております。

◆「THE 犬」と思える名前といえば? 1位「ポチ」マイナビウーマン(→link

◆「ポチたま」(→link

◆「タマ&フレンズ」(→link

さて、この「ポチ」ですが、起源をご存知でしょうか?

というか「起源があったのをご存知でしょうか?」とお尋ねしたほうが良さそうですね。

 

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ランキングに登場しないのに典型的

結論から申します。

ポチの起源は明治時代。

多くの外国人がやってくることによって生まれました。

まず、背景に、こんなエピソードがあります。

幕末から明治にかけて、来日した外国人は愛犬にこう呼びかけておりました。

「カモン、ジョン!」

「カムヒア、ジャック!」

このときの「カモン」とか「カムヒア」の発音が、日本人には「カメ」と聞こえてしまった。

そして『そうか、西洋じゃ、犬のことを「カメ」と呼ぶのか』という誤解が生じ、今度は洋犬を「カメ」と呼ぶという、ちょっと奇妙な状態になったわけです。

外国人にとっては狆が大変珍しいお土産として人気を集めました。エドワード7世妃アレクサンドラと愛犬パンチ/wikipediaより引用

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同時に問題になったのが、そんな洋犬「カメ」たちにふさわしい個々の名前です。

それまで犬の名前と言えば、【トラ、クマ、ムク、クロ、シロ】といった名前がほとんど。一目で特徴のわかる名前が好まれておりました。

仮に共同体で飼育する場合、都合がいいということもありましょう。

「クロはどこに行った?」と聞かれたら、とりあえず黒い犬なんだな、とわかりますからね。

では洋犬「カメ」はどうするか?

というと西洋風の名前にしようということで、ジャック、ジャッキー、ジョンといった名前が増えてきます。

その中の一つに「ポチ」もあったのですね。

当時は、これが西洋っぽい、お洒落ネームだったのですね。外来語のフシギです。

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