『学校では、なんとなくそういうモンを習ったなぁ』
という出来事がありますが、教科書ではとても掘り下げられない“裏側”にメスを入れてこその大河ドラマでしょう。
その点、あの大河で描かれた【岩倉使節団】や【西南戦争】へ向かう政局は秀逸でしたねえ。
書類上の不備があって、条約改正に挑めない。
そんな中で、使節団や政府内にも亀裂が入ってゆく。そこまで描くのか――と心を揺さぶられました。
同行していた留学生の描写も、秀逸です。
新しい国のため、故郷の名誉のため。
そんな風に語る留学生、美しく凛々しい姿でした。
西南戦争へと向かい、決裂する政府も緊迫感がありました。
あ、もうオチがわかっていると思いますけど、『八重の桜』総集編の話ね。
岩倉使節団では新島襄というヒロインの夫が絡んでくるという話でもあるのですけれども、ちゃんと岩倉使節団の政治的混乱を扱っている!!
そしてあの山川捨松、その兄である山川健次郎!
故郷のために努力して学ぶ、そういう良さを感じさせます。
ヒロインの兄・山本覚馬が京都復興に尽くす姿も、グッと来ます。明治の世が目指した国作りのビジョンが、ビシビシと伝わって来るんですよ。
翻って『西郷どん』……岩倉使節団はただの旅行感覚ですわ。
菊次郎や甥の留学も、
「国費で留学出来てラッキー♪」
感覚がハンパない。留学させてこそ親心だと言わんばかりにウキウキ&ワクワクしている。
国のために学ぶ――山川兄妹が抱いていた、そんな凛とした決意なんて、どこにもない。
『西郷どん』では、国作りのビジョンは何も伝わってこないのに、政治家がエエもんを食べていること、妾を囲っていること、キャバクラ通いをしていることだけはビンビンと伝わってくる。
最後まで、それを押し通すんだから凄い面の皮だと思います><;
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【20秒あらすじ】ヤンキー漫画のノリで西南戦争へ
岩倉使節団が渡航している間に決定した、西郷隆盛の朝鮮使節派遣。
あまりに無茶ぶりな計画だったため、帰国後に政府へ復帰した大久保利通としては、とても認めるわけにはいきません。
大久保が珍しくエエことをしているなあ、と思っておりますと、どうやら二人は揉めるご様子。
政治はやらずに長屋とキャバクラ、それにホームドラマばかりを描いて来た弊害で、もう何がなんだかわかりません。
せっかくの政治場面も怒鳴り散らすばっかり。
西郷どん、東京から鹿児島に戻るってよ。
これで長屋を見なくて済むと思うとそこは素直に嬉しいですね。
単純なキャラ付けで、人物の描写から逃げるな!
はい。
今週も代わり映えしない閣議シーン。
明治編に入って、閣議の会場と長屋しか出てこないですよね。
『家族に乾杯』と言いたくなる岩倉具視と、粘っこい演技な大久保利通からスタートします。
と、その前に、大久保さんについて、こんなニュースがありました。
◆西郷どん:大久保が「ダークサイドに墜ちた!」 西郷と対立深め「あー、ついに…」(→link)
いや、もう、何と言いましょうか。
明治初期の、複雑極まりない政治対立を、
「主人公の西郷どんに刃向かうのはダークサイドに墜ちたから」
ってことにされちゃって……。
「ば~~~~っかじゃねぇの!?」
と、『ヒストリエ』のハルパゴス顔になるばかりです。
そんなことを言うなら、昨年の主人公・井伊直虎さんは女性ながらにして家臣を刺殺しておりましたよ。
一昨年の真田幸村は、ノリノリ謀略オヤジ・真田昌幸のせいで、暗殺にも立ち会っていた。
主人公でも、重要人物でも、ときに暗い方面へ向かわねばならない。
そういう苦悩をちゃんと史実をふまえつつ、丁寧に描いてこそドラマでしょうがァ!
役者さんは頑張っていますよ。
それでもあんなチンピラドヤァをして、「ダークサイドに墜ちました!」ってもう……もう……何もかもが駄目だ。
そんなキャラ付けに逃げずに、ちゃんと人物を描きましょうよ!
大河でしょ!
本作に全く魅力のない理由は?
そんな大久保効果もありまして、開始数分でウンザリ。
だって、ですよ。
今日、西郷どんで放送した内容よりも、『八重の桜』総集編の方がわかりやすいのです。
これは一体、どうしたことでしょうか。なぜ会津サイドからの方が、新政府のことをよく描かれているんですか?
本作に全く魅力のない理由。
その大きな要因の一つに、何もかもが西郷どん中心ということがあるでしょう。
この西郷どんワールドの中では、いったん敵となったら、たとえかつての親友でもゲスい奴にされてしまう。
二度と這い上がれない、いじめられっ子のようだ。
さすがに浅はかすぎません?
大久保の場合は友情がまだしも理解できるかもしれませんが、本作では維新後にはただのゲスとなった長州閥の中にも、西郷と対立したくなかった人もいるわけです。
そういうポイントをうまく拾って、
「敵対者からも慕われた西郷どん」
という描き方にすれば、万人からモテるテーマにも沿うことがデキたのに……っつーか、そこ、描かないでどうすんの? 下手クソかっ!
自国民の保護は圧力の常套手段でもある
西郷どんと大久保の怒鳴り合いは、もうお話にもなりません。
フードコートで言い争いをするヤンキーです。あー、うるさい。
最大の問題は、西郷どんの【朝鮮にいる邦人保護】をエエ話っぽくしたところですかね。
これは戦争を仕掛ける理由として、かなりありがちな大義名分。
かつその正当性が薄いことも、得てしてあるものです。
海外の骨のあるドラマならば、こういうことを暑苦しくお涙頂戴で煽る政治家はゲスですからね。
いきおい西郷どんもゲスい人に見えてくる。細心の注意を払ってセリフや理屈を決めておくべきところでした。
「薩英戦争」のイギリス側の言い分だって、この系統ですよ。
あれは殺人が起こった事後ではあるものの、自国民殺傷への抗議が始点です。
本来なら、もっとジックリとこの問題を描くべきなのに、よりにもよって、そこを「優しい西郷どん」アピールに変換しちゃうんだから、いよいよラストに向けてどうしようもない。
そういや征韓論の「せの字」も出てきませんでしたね。現代では、割と知られた言葉ですから、ナレーションで入れてもよかったのでは?
使えない無能貴族が【扇の要】ってウソでしょ?
このあと三条が派手にぶっ倒れます。
ものすごく大げさな描写、アホみたいだからやめた方がいいと思います。
それにしても、本作ほど公家出身者がバカにされたドラマもありません。
無能で世間知らずで、ウンザリするほど右往左往ばっかり。図太い岩倉具視さんにしたって、そもそも笑福亭鶴瓶さんの起用が間違ってる。鶴瓶さんでしかない。
まぁ、公家だけじゃなく、肝心の薩摩藩士ですら侮辱されまくりですから諦めるべきかもしれませんね。
このあと、まったくいらないホームドラマパートです。
『八重の桜』総集編を見返していて、こんなに明治の政治をきっちり描いていたのかと改めて舌を巻いたものですが、それもそのはず。
本作のように、
・どうでもええホームドラマとか
・長屋で庶民アピールとか
・しつこい食事シーンとか
・妾アピールとか
・キャバクラ入り浸りとか
そんなアホなシーンがないので、ちゃんと描けたんですね。
「三条は扇の要」という西郷どんのセリフは、もう笑止千万。
小学生が見たって使えない無能貴族が【扇の要】だなんてありえません。
どこまで公家をコケにするんでしょうか。
ウソか言いがかりもわからず動いちゃう西郷さん
大久保が恐ろしいことを企んでいる――と、三条が言い始めました。
あーあーあー!
来た、来た、来たよ、またこのパターン。
【西郷どん悪くない・他の人が色々悪事を働く】というやつで、皆さん辟易しているとは思いますが、一応、書き出してみますね。
「斉興とお由羅が何か悪いことを企んでいるんだー!」(お由羅騒動)
「慶喜を将軍にしないために、井伊直弼が何か悪いことを企んでいるんだー!」
「禁門の変では薩摩と同盟していたけど、長州藩を悪役にしちゃまずいから、会津藩が全部悪いことを企んでいたってことにするんだー!」
「慶喜は薩摩をフランスに売り渡そうとしているんだー!」(※そんな史実はありません)
「大久保が恐ろしいことを企んでいるんだー!」←New!
もう、西郷どんが騙されまくりのバカに見えてきました。
ほとんどが嘘か言いがかりです。
こんな陳腐な台本を、頑張って演じる役者さんが可哀想です。
いや、役者さんも、人によっては抵抗していた気もします。
例えば、島津斉興や一橋慶喜(徳川慶喜)役のお二人。
ゲスに描きたい脚本に対して、せめてもの抵抗をしているような感じがありました。
まぁ、今さらそんなことを申し上げても、あまり意味のないことかもしれませんが。
とにかく気の毒ということで……。
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