『西郷どん完全版第壱集Blu-ray』/wikipediaより引用

西郷どん感想あらすじ

『西郷どん』感想あらすじ視聴率 第43回「さらば、東京」

最後まで周辺キャラはモブだった

対して大久保は、全力で、くどくて安っぽい悪役をやるもんですから、辛い。見ていて辛い。

そんなことしても虚しいだけですよ。
この作品の政府中枢は、相変わらずヤンキー漫画のノリで馬鹿騒ぎとしているだけです。どの役者さんも、怒鳴るばっかり。

『八重の桜』の西南戦争前の政府首脳部が争う描写では、誰一人として怒鳴っておりません。
むしろ押し黙った吉川晃司さんの西郷が、格好良くて痺れました。

なんで会津大河が、長州藩も薩摩藩も一番カッコよく正確に描いているのでしょうか。
『花燃ゆ』と『西郷どん』の最低大河の薩長同盟、凄すぎやろ。

このあと桐野利秋(中村半次郎)らがやってきて、西郷どん周辺のモブがいきりたっているんですけど、全員同じに思えるんですよね。

個々人ごとに性格設定もできていないし、それを表現するセリフもないから、そりゃそうなりますって。

一方、『八重の桜』は、会津藩士の個性がきちんと描かれていた。

皆、基本的に髷ですし、似通った服装です。
それでもこの人にはこういう個性がある、彼は厳しいようで優しい……そんな風に見分けることができました。

それが『西郷どん』では、
「なんか西郷の周辺に似たような奴がうようよしていて、どれがどれだかわからない」
と言いたくなる。

村田新八ですら、どんな奴だったか思い出せんわ。

これじゃあ西南戦争で散ったところで、何の感慨も湧きませんよ。無理です。
『八重の桜』の会津戦争じゃ、一人一人の死に涙が止まらなかったというのに。

これって、なんだか既視感あるんですよね。

団子状態だった『花燃ゆ』の松下村塾生&奇兵隊士&群馬の女工です。
こんなところまで「最低幕末大河の薩長同盟」が生きていたとは恐れ入ります。勘弁して……。

 

何かあるとすぐにキャバクラタイムやで

歴史は西南戦争に向かっています。
それなのに今週も長屋生活アピールタイムが入ってきます。邪魔くさい。げんなり。ナレーションだけで政府に辞表を届けたことにするつもりかよー。

それを受けて、江藤新平、後藤象二郎、板垣退助が廊下で大久保にメンチを切る、まさにヤンキー漫画そのものの場面が出てきました。
いや、流石にヤンキー漫画に失礼ですよね、ごめんなさい。

大久保は、新しい政府案などを岩倉に提出します。
そしてこのあと、またキャバクラタイム。

辛いです。何が辛いって、木戸孝允を演じる玉山鉄二さんのことです。

やはり『八重の桜』の山川浩を見た後で見てしまうと、悔し涙すら出てきそうです。

何が悲しくて、執務室ではなくてキャバクラで、岩倉と木戸が政治の流れを話すのでしょうか。
どんなシリアスな演技をしても、これは結局キャバクラでの話なんですね、ふーん、と思ってしまいます。

そして、キャバクラのあとは長屋です。

長屋、キャバクラ、長屋!
しかも、そこへ木戸がやってきおった。

ここで東京を去る時いた子供達が「えっ、ほんと!?」というのがアホっぽくて笑えます。

はいはい、子供にも慕われる西郷どんアピール、おつかれーす、チョリース!

木戸は長州藩の汚職まみれを嘆きます。

いや、それ、西郷どんに相談してどうするの?
かつては不自然なまでに長州藩を持ち上げていたのに、最近は、めっちゃ汚職軍団じゃないですか。一体、何があったん?

「最低幕末大河の薩長同盟」って、視聴率とクオリティと観光効果では仲良しなんですけど、長州大河は薩摩、薩摩大河は長州をゲス扱いするんですよね。

ここで木戸が子供達の面倒を見るという、クソどうでもエエ場面が入ります。
もう子役しか頼れない、そんな大河の哀れな末路。まぁ、子供の演技も酷いんですけどね。演技指導者が仕事放棄してません?

 

西郷モテを強調するあまりに変なことに

今週も妾アピール。
おゆうが大久保を迎えております。

ここもおかしいんです。
おゆうは大久保の指示を無視して西郷どんを家に入れていたと判明します。

フキの慶喜への態度も最低でしたが、おゆうも大概ですな。
モテがテーマである本作。このせいで、女性キャラが壊滅的に魅力に欠けるというドデカイ欠点を抱えることになりました。

徳川家定の正室(篤姫)であろうが。
徳川慶喜の側室(フキ)だろうが。
大久保利通の妾(おゆう)だろうが。
皆、西郷どんが好きなんですよね?

そのせいで、本来の夫にあたる人物を軽んじているように見えてしまう。ただのクズ女にしか見えないわけです。

特にフキ。
徳川慶喜の寵愛によって貧しい身の上から引きあげられておきながら、慶喜を小馬鹿にし、重要な機密情報を漏らす――単なる性悪女に成り下がっておりました。

それで思い出したのが、
「謎の病で男が大量死し激減! そんな中、余った女が主人公に群がってハーレムだ! ウッハー!」
という漫画ッスね。

病のせいで主人公の親兄弟や友人も死んだはず。
そういう周囲の死よりも、彼らの恋人なり妻になるはずだった、あるいは娘や妹が、群がってくる方がエエ――そんな姿にドン引きしたんですけど、本作も、そういう発想ですよ。

誰もが主人公に感情移入するのだから、主人公がモテモテにしたらエエという発想が貧しいのです。
視聴者をバカにするのもいい加減にしてください。

 

「他に好きな女がデキたってハッキリ言えばいいじゃない!」

ともかく強引に大久保利通邸へやってきた西郷どん。
一連の政争について、岩倉具視の背後で入れ知恵をしていたのは一蔵だったのではないか?

そう疑問をぶつけます。

そして……西郷どんが大久保に向かって
「なんでハッキリ言わなかったのか?」
と迫るところは、思わず笑いそうになりました。

もしかしてこれが、事前に宣伝していたBLってやつですか?

本命の彼ぴっぴである大久保に振られた西郷どんが、相手の家まで押しかけて、
「他に好きな男がデキたってハッキリ言えばいいじゃない!」
と切れてる姿とダブったんですよね。

西郷どん、こういう形でBLにせんでもええやん、って。

そんでもって、ここで苦悩する大久保を見ていると、
『あれ?こっちが主役?いつの間にか役柄が入れ換わった?』
と思ったりも。

ともかく、中身はさほどにないワケですよ。

鹿児島の民衆をも巻き込んだ悲劇の西南戦争。
それがヤンキーの喧嘩に巻き添えにされたレベルに思えてくる、中身の空っぽな会話です。

わかっていた。
本作に【西南戦争へ至る経緯】という、難易度の高い描写ができるワケがない!とは、わかっていた。

しかし、ここまで酷いとはわからなかった。

ラストでこれが西郷どんと大久保最期の別れと語られるわけで。

『もう見なくて済むのか……』
さあ頑張ろう、最終コーナーは曲がったんだ!

西南戦争は、おそらくどうしようもない描写で終わるけど、安心してください。
『八重の桜』がありますよ!

 

総評

最近、大河ファン周辺でこんなやりとりをよく見かけます。

「バ、バカな。『花燃ゆ』がマシに思えて来ただと……まだ明治の内政が把握できた」
「いやまさか、あのおにぎり不倫グンマー編以下なんて! そんな、幕末最低大河はもうないはずじゃなかったんですか!」
「ああ、俺たちは甘かった。女主人公、無名の吉田松陰の妹、おにぎり。そんな作品を維新三傑の西郷隆盛主役大河が下回るはずはないと思っていた……」
「う、う、うわあーッ!」
阿鼻叫喚。

『進撃の巨人』で、巨人と戦っていたら超大型巨人までやって来ちゃったみたいな反応。
明治編になってから、完全に『花燃ゆ』以下であることが確定しました。

このレベルで、不倫大好きデスおにぎりマネージャーを描くぶんにはマシでした。
まさかあのおにぎり大河レベルで、西郷隆盛という、超絶高難易度の人物を描くなんて、そんなこと信じられないじゃないですか。

タイムスリップして『花燃ゆ』を見ていたころの視聴者にそう言ったって、おそらくや信じてくれないでしょうよ。
これ以下の大河はありえないと皆が思っていた『花燃ゆ』を打ち抜く最低大河が、よりにもよって明治維新150周年という区切りで作られるとは!
意味がわからない!!

そういえば、
「正確な史実を描いたって歴史マニアしか喜ばないから本作はユルくした」
そんな戯言を見かけたんですけど。

食べやすく美味しい料理を心がけることと、料理を全部ミキサーにかけて出来たドロドロの何かを出すこと。
それは全然違いますからね。
本作は、もちろん後者ですよ。

「ドラマだし、ドキュメンタリーじゃないフィクションだもの、自由にアレンジしていいでしょ!」
みたいな意見もありますけれどね。
歴史モノって、ここだけは踏み越えちゃならないラインがあるんですよ。

本作はそこを思い切り踏み越えています。
それで面白くなったか?
いや、全然。

ルールを破ってつまらなくした。
だから叩かれているんだっつの。

そうそう。
朝日新聞11/13日に、呉座勇一氏のコラムが掲載され、大河ファンの間で話題になっておりました。
そのコラムをまとめますと……。

「『真田丸』がよかったのは、現代人の感覚を持つ、視聴者の代弁者的な人物をきり(長澤まさみさん)のみに絞ったこと。現代人感覚を持つ人物を、スパイス的に用いるところに巧みさがある」
という内容でした。

それなんですよね!
歴史考証をガチガチにしても、歴史マニアに受けるだけだから、間口を広くするために現代人感覚を取り入れるということ。
これ、歴史ドラマで絶対やってはいかん手ですからね!

歴史ドラマが受けているのは、
【この時代ならではの困難さに、登場人物がどう立ち向かうか】
という点なんです!

『真田丸』の屋敷Pも参考にした『ゲーム・オブ・スローンズ』が、世界的にヒットしている理由がまさにこれ。
これ! これ!!

 

あのドラマは、ヨーロッパ中世をさらにどぎつくしたような価値観が根底にあります。

宴会が殺戮の場となり、恋愛結婚を選んだせいで死んでしまったり、イベントに参加したら会場ごと爆破されたり、ともかく価値観がハード。

だが、それがいい。
そういう先の読めない恐怖感が、視聴者を惹きつけているのです。

「やっぱり現代人は政略結婚なんて駄目だよなあ、恋愛結婚でこそ!」

そんな思いを抱いて、橋の上でヒロインと主人公を語り合わせ、暴れ馬をヒロインが抑え込むところに主人公が惚れる。
こういうのはもういらんからねッ!!

本作は何の役にも立たなかった。
ただし、反面教師にはなれるはずだ!
『花燃ゆ』の時も同じ事を書いた気がしますが、もはやそれぐらいの価値しかありません。

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著:武者震之助
絵:小久ヒロ

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【参考】
西郷どん感想あらすじ
NHK西郷どん公式サイト(→link)等

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