『忠臣蔵』を題材にして、ムロツヨシさんが一人二役に扮する映画『身代わり忠臣蔵』が2024年2月9日に公開されます。
かつては時代劇の定番中の定番だった人気テーマの作品。
令和になった今の時代にどう描かれるのか?
試写会で見たレビューをお届けします!
基本DATA | info |
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タイトル | 『身代わり忠臣蔵』 |
制作年 | 2024年 |
制作国 | 日本 |
舞台 | 北海道 |
時代 | 元禄年間初頭(18世紀) |
主な出演者 | ムロツヨシ、永山瑛太、川口春奈、林遣都他 |
史実再現度 | フィクションである『忠臣蔵』をさらにひとひねりしているため、そこまで高くはない |
特徴 | 本当に革新的な作品はわざとらしく「シン・」と自称しないが、謙虚な本作は「シン・忠臣蔵」と名乗る資格が十二分にある |
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あらすじ
ときは将軍綱吉の御代、“犬公方”のもと文化経済は爛熟しつつあるころのこと。
吉良上野介は、勅使饗応指南中に赤穂藩主・浅野内匠頭から切りつけられてしまう。
理不尽な言いがかりに怒った浅野内匠頭の凶行ではあったが、殿中での刃傷沙汰は御法度。
浅野内匠頭は切腹となり、赤穂藩は改易された。
主の仇を討つべく、赤穂藩の浪士たちは吉良上野介を討ち取る計画を立てる――世にいう『忠臣蔵』であるが、この作品はちょっと違う。
吉良上野介は仇を討つまでもなく、急死を遂げてしまった。後継者がないからには家が取り潰されてしまいかねない。
困り果てた吉良家は、吉良上野介に瓜二つの弟・孝証を身代わりと立てることとなる。
孝証は家から追い出されていた生臭坊主であった。
この孝証は、ひょんなことから赤穂藩家老・大石内蔵助と意気投合していた。
仇討ちをしなくてもよいのではないか?
孝証と大石はそう考え始めるものの、そうはいかず……。
令和では、もう『忠臣蔵』は定番から外れた
まず、大河ドラマの話をしましょう。
もともと枠を作るつもりでもなかったNHKは、一作目『花の生涯』の大ヒットを受けて、続けていく気になった。
そこで絶対に外さない題材として選ばれたのが『忠臣蔵』です。
『赤穂浪士』というタイトルでドラマ化されました。
その後も『忠臣蔵』は大河定番となりながら、いつしか消えてゆきます。時代劇そのものが減ってゆく中で、『忠臣蔵』はかえって選ばれなくなりました。
研究が進んでゆくと、題材として難しいのです。
悲劇の貴公子であったはずの浅野内匠頭には、あきらかに短慮がある。
吉良上野介にせよ、彼なりの事情があった。
この話がもてはやされた背景には、徳川綱吉政治への不満もありました。
しかし、綱吉を暗君として片付けることそのものが、古びてきています。
そんないわくつきの発端のうえに、結末は老人の自邸を襲撃、よってたかって殺害するという理不尽なものです。
これで「感動しろ、熱くなれ」と言われて、果たしてできるものでしょうか?
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それでもジャンルとして成立しているころは、盛りあがる定番ではありました。
四十七士のキャラクターを観る側も把握していて、どんな描き方がされるのか、興味を抱けたのです。
しかし、こうも『忠臣蔵』が取り上げられなくなると、それも通用しなくなってきます。
江戸時代の観衆ならば共通理解としてあった、幕府批判も理解しづらくなってきている。
仇討ちへの憧憬どころか、そんな短絡的な解決手段はむしろ不愉快に思われかねない時代です。
なんでこんなものを昔の人は面白がったのだろう?
今では『忠臣蔵』はそう疑念を抱かれるコンテンツとなりました。
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往年の『忠臣蔵』の名作をあげて嘆いたところで、さして意味がないとも思えます。それが時代の変化というもの。
そんな時代にどうしてこのテーマを映画にするのか――それがこの作品の問いかけたいことでもあるのでしょう。
前置きが長くなりましたが、こうした時代背景を踏まえておかねば見えてこないこともあるのです。
『身代わり忠臣蔵』は、既存のお約束を最低限踏まえていれば鑑賞できます。
吉良上野介。
浅野内匠頭。
大石内蔵助。
この程度を覚えておけば、だいたい理解できる作りです。
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