大正十二年(1923年)9月1日は、関東大震災の原因となった「大正関東地震(関東大地震)」が起きた日です。
細かくて申し訳ありませんが「震災」という言葉は、地震そのものではなく「地震によって引き起こされた災害」を指しますね。
この地震で最も大きな被害を出したのは火災であり、エリアによっては12日間も燃え続けたと言います。
関東在住の方は、夏休み明けの二学期初日に、関東大震災の教訓を学校で毎年聞かされてきたでしょう。
今回はこの震災に関する別の点を見ていきたいと思います。
「海外からの支援」です。
※以下は関東大震災とその復興に注目した記事です
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一次大戦と二次大戦の合間に起きたので……
東日本大震災のときと同様に、関東大震災のときも支援してくれた国がたくさんありました。
カギとなるのは、この震災(1923年)が第一次世界大戦(1914-1918)と第二次世界大戦(1939-1945)の間に起きたということ。
つまり、戦後の状況とは全く違った世界情勢だったのです。
そのため、このとき最も多くの支援をしてくれた国は意外にもアメリカでした。
18年後には戦争を始めた両国が関東大震災の時にはいち早く、なおかつ官民合わせて巨額の支援をしてくれていたというのは何とも皮肉なものです。
これは当時のアメリカにとって、日本が「第一次世界大戦の連合国」だったからでした。
街頭で日本への援助を募るアメリカ人の写真なども残されています。
アメリカの日本人会や、彼らと交流のあった黒人たちからも義捐金や支援物資が送られていたようです。
ちなみに、アメリカ国内も実はドタバタの最中でした。
このちょうど一ヶ月前にウォレン・ハーディング大統領が食中毒で亡くなってしまい、副大統領だったカルヴィン・クーリッジが引継ぎを終えたばかり。
その中でも、フィリピンに寄航中のアメリカ海軍に支援物資を運ばせるなど、迅速な対応をしてくれたのです。
同盟失効直後の英国も莫大な支援
意外?なところでは、ベルギーも大きな支援をしてくれています。
実は、第一次大戦中に日本がベルギーを支援したことがあったので、その恩返しにというわけです。
トルコやエルトゥールル号の話もそうですが、胸アツですよね。多くの死者が出ていなければ喜ばしいですが、自然災害ばかりは仕方がありません。
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明治時代からベルギーの公使・大使は日本にかなり好意的な人物が多かったようなので、その辺も関係したかもしれませんね。
震災の半月ほど前に日英同盟が失効したイギリスも、莫大な支援をしてくれています。
カナダやニュージーランド、オーストラリアといった現在の英連邦の国々とともに、それぞれの特産品やよく産出される物資を送ってくれました。
この辺のことは「外国義捐金品一覧表」という資料を見るとさらによくわかります。
関東大震災の際、支援を行ってくれた国の一覧と目録を合わせたもので、アメリカ、南米諸国、中華民国、イギリスとその植民地、フランスと(以下同文)、オーストリア、イタリア、スイス、スウェーデン、ドイツが記載。
この目録、各国のお国柄が見えるような気がしてなかなか興味深いです。
震災の後に戦争のやるせなさ
カナダからは木材がたくさん送られていたりとか。
フランスやオーストリアは医療器具・薬品が多いとか。
イギリスが何故かポートワイン(酒精強化ワインの一種)を送ってきていたりとか。ポートワインってポルトガル産で、英国へ大量輸出していたからかもしれません。
中華民国からはお米がたくさん送られています。
高野豆腐やタマネギ、コーンビーフ缶といったおかずになりそうなものや、雨傘なども来ていたようです。
さすが近所のよしみというか、食の傾向がわかってるというか。
ここに挙げた以外にも、支援をしてくれた国はたくさんあります。
それを考えると余計に、この後の世界情勢の悪化が惜しまれるというか何というか……。事情が変わったからといえばそれまでの話なのですけれども。
震災時に援助をしてくれた人の多くが存命中だったろうと思われる時期に、あのような大きな戦争が起きてしまったというのはやるせないとしかいいようがありません。
自然災害は予測できないにしても、戦争は絶対に回避せねばなりませんね。
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長月 七紀・記
【参考】
国史大辞典
関東大震災/Wikipedia
ODAちょっといい話/外務省
外国義捐金品一覧表/国立国会図書館
しばやんの日々(→link)
CHILD RESEARCH NET(→link)
国際派日本人養成講座(→link)