乗り物ってロマンがありますよね。
古くは牛車や馬、最近では自動車や電車でも、種類は違えど小説や映画でその時代の特徴を表す重要なファクターです。
本日はその一つ、日本でもお馴染みのアレのお話です。
1863年(日本では幕末の文久三年)1月10日は、ロンドン・メトロポリタン鉄道のパディントン駅からファリンドン駅の間で世界初の地下鉄が開通した日です。
距離にして約6km。トンネルの断面がほぼ円形であることから「Tube」という愛称で知られ、ロンドンの名物として有名な交通機関ですが、当時はいろいろと物議を醸したようです。
【TOP画像】ロンドン地下鉄/Wikipediaより引用
ホームに火が燃え移ってボヤ騒ぎもたびたび起きていた
まず政府から資金を引き出すのに苦労し、次は新聞に「地下を走る列車なんてアホかwwwwww」(超訳)とこき下ろされました。そこまで言わなくても(´・ω・`)
むろん、その程度で事業をやめるわけにもいきませんし、実業家たちからは「地下鉄で郊外から安く人を集めて、ガンガン働いてもらおうぜ、グヘヘヘヘ」(※一部誇張があります)という意見が出たため、めでたく工事が進んで開通に至ります。
散々な前評判の割に、初日から3万人以上に利用されたといいますから、イギリスお得意のブラックジョークなんですかね。
ただし、当時は蒸気機関列車すから、いくら換気しても駅や車両の汚れはひどく、ホームに火が燃え移ってボヤ騒ぎもたびたび起きていたとか。こえぇえええ。
歴史に関することでいえば、ロンドン地下鉄が大活躍したのは二度に渡る世界大戦中のことでしょう。といっても、活躍したのは地下鉄の車両ではなく、ホームや路線・トンネルですが。
バトル・オブ・ブリテンの真っ最中、ロンドン地下鉄は防空壕の役割を果たし、多くの市民の命を救ったのです。30万人もの人が避難した日もあったとか。
政府は当初、地下鉄をこういった用途で使うことには反対だったのですが、後々ベッドやトイレなども整えられました。他に市民を避難させられる場所もないですし、移動させている途中の船や列車が爆撃されないとも限りませんものね。
もし、ここで政府が「地下鉄よりも郊外に逃げろ!」という方針を取っていたら、イギリスの民間人はもっと多く犠牲になっていたことでしょう。
日本が参考にした地下鉄は、なんとアルゼンチン!?
地下鉄の歴史で面白いのは、ロンドンで発祥しておきながら中々ヨーロッパに広まらなかったことでしょうか。
次に地下鉄が開通したのは、意外なことにトルコのイスタンブール。正確には「地下ケーブルカー」だったそうですが、こまけえこたあいいんだよ。
その次はハンガリーの首都・ブダペストで、最初から電化された初の地下鉄が導入され、19世紀と20世紀の境目くらいの時期には、アメリカ・フランス・ドイツなどでも作られました。
意外なところではアルゼンチンでしょうか。1913年に首都ブエノスアイレスで走行開始。遅れること14年の1927年にはいよいよ日本でも初の銀座線が浅草~上野間で開通しておりますが、これはブエノスアイレスを参考にしたんだそうですよ。鉄道がイギリスを手本にしているので、地下鉄もそうかと思ったら違うんですね。元をたどれば同じですけれども。
また、現在のブエノスアイレス地下鉄には、日本の中古列車が使われているそうです。地球のほぼ裏側の国で、そんな繋がりがあるとは、ちょっと親近感がわきますね。
その受け渡しのために東京メトロ(当時は営団地下鉄)の社員が現地を訪れた際、あまりの設備の悪さに( ゚д゚)ポカーン状態になり、技術指導を行ったとか。
まあ、ラテンアメリカの国ではよくあることというか、何というか。
メキシコでも1978年に開通 アステカ遺跡は大丈夫だったの?
その後は徐々に、世界中へ地下鉄というシステムが広まりました。
ロシアのモスクワ地下鉄は、豪奢な意匠で有名ですね。まあ、作らせたのが例のカイゼル髭の人ですから……。この豪華な細工を、式典に間に合うように突貫工事で作らせたそうです。無茶振りにも程があるやろ。
しかし、地下鉄はその構造上、遺跡の多い国では敷設が難しいという欠点があります。
たとえばイタリアやギリシャでは、「遺跡が見つかるたびに路線変更や調査のために工事が中断(´・ω・`)」なんてことが起きるわけですが、それを乗り切った(?)のがメキシコの首都・メキシコシティ地下鉄です。
ここもかつてアステカ帝国の首都・テノチティトラン(過去記事:アステカ帝国の死亡フラグ それは平和の神・ケツァルコアトルだった 【その日、歴史が動いた】)だったはずですし、近年にも遺跡が見つかっているのですが、地下鉄は1969年に開通しています。
調べた限りでは、地下鉄工事中における遺跡関係のトラブルは出てこなかったので、多分大丈夫だったんですよね……?
地下鉄開通後の1978年に、テンプロ・マヨールという遺跡が地下鉄の駅のすぐ側で見つかっていますので、ある意味神業というか何というか。
いっそ、遺跡が出たら出たでそこに直結するような位置に駅や線路を作り、利便性を上げて観光客からガッポガッポ儲けてしまえばいい気もしますが。まあ、現実にはそううまくいきませんかね。
長月 七紀・記
参考:ロンドン地下鉄/Wikipediaより引用 EikokuNewsDigest ブエノスアイレス地下鉄/Wikipediaより引用