今年はワイドショーなどでも取り上げられるほどですが、もしかしたら皆さんの中には「どうせ死なないし、大したことなくない?」と思っていらっしゃるかもしれません。
しかし、甘くみたらいけません。
泰平の世とされ約260年間続いた江戸時代、【命定め】という病気が計13回も大流行し、犬公方として知られる徳川綱吉も、症状からしてこの病気で亡くなったことが推測されています。
その正体が麻疹(ましん・はしか)なのです。
かつては危険だったこの病気。
春から初夏にかけて流行る傾向があり、一体なにがどうして危ないのか、見てまいりましょう。
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一度感染すれば免疫が付き一生かからない
麻疹は発熱と皮疹を特徴とする急性感染症で、原因は麻疹ウイルスです。
非常に強い感染力を持ち、感染すると1-2週間の潜伏期の後、風邪症状と38度くらいの発熱。
この熱は一旦下がりますが、半日ほどで再び39-40度の高熱となり身体に発疹が生じます。
発疹に先立ち口の中に白い斑点ができるのが特徴的で、2度目の発熱の際、口腔粘膜の荒れのせいで痛みを生じることが多く、経口摂取の低下と併発する下痢で脱水をおこしやすくなります。
また角膜の損傷で失明したり、予後の悪い脳炎をおこしたり、意外に怖い病気なのです。
しかし、1度かかると免疫がつき、その後は一生かかりません。
予防注射がなかった頃は、幼いうちに麻疹にかかって免疫がついたことから、若い時期に趣味や色恋沙汰に没頭することを「はしかのようなもの」と表現するのはここからきています。
日本では対策に遅れをとっていましたが、昭和53年から始まった予防接種および平成18年からの追加接種の結果、平成21年には約1万人、平成23年には293人と稀な病気になりつつあります。
平成14年には年間患者数20万人(アメリカでは100人程度)でしたので、その効果は我々にも実感できるでしょう。
天然痘が『もがさ』で麻疹が『赤もがさ』
麻疹の死亡率は日本などの先進国では0.1%程度です。
しかし、全世界でみると3-5%と高い数字。
江戸時代以前の死亡率もこのくらいか、もう少し多かったのではと推測します。
『麻疹』という名前自体は、皮疹の色や形が麻の実に似ていることから付きましたが、もともとは中国由来の言葉です。
実際、日本で麻疹と呼ばれるようになったのは江戸時代以降で、それまでは『赤もがさ』と呼ばれておりました。
『もがさ』は天然痘のことで発熱と皮疹という症状が似ているからでしょうね。
ちなみに天然痘は【見目定め】、麻疹は【命定め】の病と呼ばれました。
もちろん死亡率は天然痘の方が格段に高く、麻疹はあばたも残しませんが、その割りにあっけなく死んでしまうことから命定めと呼ばれたんでしょう。
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