それはド派手な活躍で出世していく「信」だけではないだろう。
とりわけ、美しくて強い女剣士・羌瘣(キョウカイ)は人気が高い。
飛信隊の副将を務め、大事な場面で必ず活躍という、物語に欠かせないキャラクターだ。
果たして彼女は実在した人物なのか。
それとも創作なのか。
と、これがビックリ、きちんと『史記』に登場する実在の人物なのだ。
(始皇帝が秦王に即位してから)18年、大軍で趙を攻める。
王翦は上地方面の将軍となり、井(のちに漢の名将・韓信が背水の陣で趙の陳余を破ったことで有名)の街を降伏させた。
端和は河内方面の将軍となり、羌瘣が趙を攻めた。端和は邯鄲城(趙国の首都)を包囲。
翌19年、王翦と羌瘣(キョウカイ)は趙の東陽地方を平定し、趙王を捕えた。
――『史記』秦始皇本紀 ※1原文は記事末
信が燕の討伐で史書に登場するよりも少しだけ早く登場するので、実は李信よりも出世が早かったかもしれない。
【TOP画像】キングダム34巻(→amazon)
お好きな項目に飛べる目次
お好きな項目に飛べる目次
河了貂はおそらく架空 もう一人の副将・渕さんも
ここに登場する「端和」とは、作中では山界の女王として描かれているあの「楊端和」である。
二人とも李信と同じく、王翦の補佐として趙・代(趙の隣にあった小国)の平定に活躍。
もしかしたらこれからのエピソードで、楊端和と羌瘣(キョウカイ)の最強女将コンビが見られるかもしれない。
ただし、彼女たちが「女性であった」という記述は史書にはない。
女性の将軍であれば珍しいので、もしそうであればそのように書くはず。
実際には男性だった可能性が高いのではなかろうか。
一方、飛信隊の娘軍師「河了貂」は残念ながら、それらしき資料が見当たらない。
飛信隊のもう一人の副将・渕さんやその他大勢と同じく、架空の人物のようだ。
意外なのは、信の兄貴分的な存在である「壁」であろう。
彼は実在の人物のようで、始皇8年の記事にその名前が見える。
しかし、これを人名ではなく単に「かべ」のことだとする解釈もあるので、本当に存在したかどうかは微妙なところ。
確かにちょっと紛らわしい名前ではある。東の壁を守る壁さんとか……。
昭王の六将はすべて史書に名を残す
「羌瘣(キョウカイ)」や「楊端和」が登場する『史記』秦始皇本紀を眺めると、そのほかにも『キングダム』で馴染み深い人物に何人か会える。
たとえば、始皇元年には「呂不韋」を宰相にしたほか、「蒙驁(モウゴウ)」「王騎」「麃公(ヒョウコウ)」などを将軍として取り立てたことが記されている。
「蒙驁(モウゴウ)」は「蒙武」の父、「蒙恬」の祖父で、作中では“白老”と尊称されていた将軍である。
政が秦王に即位したことで離反した晋陽を攻撃・平定して、政を盛り立てている。
「王騎」は“昭王六将”として活躍した、あの「王騎」様であろう。
“六将”や“趙三大天”は『キングダム』の創作で、当時そのような呼称はなかったようだが、昭王の六将に数えられる
「白起」
「王齕(オウコツ)」
「胡傷」
「司馬錯」
「摎」
「王騎」
はすべて史書に名前が見える。例えば「白起」は……。
※続きは【次のページへ】をclick!