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【小谷城の戦い】
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枡形虎口が普及していくのは安土城や聚楽第
漫画『センゴク』においては小谷城の大手門と竪堀を突破した権兵衛たち。
ラストの攻略ポイントは難関「京極丸」の虎口だった。
作中での虎口は枡形虎口(ますがたこぐち)、しかも内枡形の設定になっていた。
「なぜ虎口が城の防御に使われているのか?」
その詳細については後述するとして……。
当時の小谷城に枡形虎口が設置されていたかどうか?
真実のところはわからない。
虎口は、たしかに大昔から城や館の防御施設に使われていた。
しかし、枡形虎口が普及していくのは「安土城」や「聚楽第」など、いわゆる織豊系の城郭になってからだと言われている。
ゆえに織豊の敵となった小谷城に、そうした施設があったかどうか。
現在、小谷城趾の京極丸に登城すると、京極丸の絵図に枡形虎口が描かれている。
遺構も確かに確認できるのだが、これが浅井長政が城主の時代に造られたかどうかは実は誰にも分からない。
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というのも、鉄壁の防御を誇る枡形虎口は、通常、本丸や京極丸にすべきである。
それなのに京極丸の中心から少々外れた「武者溜まり」のような場所に設置されているのだ。
隠し銃座は可能性が低そうだ
浅井の城に枡形虎口はありえない。
しかし、かといって100%の否定もできない。
なぜなら人間の生存本能が結果的に枡形虎口を造ってしまう可能性だってあるからだ。
防御力を高めるため、秀吉の調略が進む間、水の手口がヤバい!と感じた浅井が急造したとしても不思議ではない。
ただ、漫画に登場した、虎口内の「隠し銃座」の存在については史実の可能性は低そうだ。
漫画に登場した「隠し銃座」とは、鉄砲を持って隠し部屋に隠れ、敵が現れたら一斉射撃をするというものである。
作者の宮下氏は「大坂城にあった」という記述をしていたが、大坂城こそまさに後の世の織豊系城郭でり、小谷城に採用するには無理を感じる。
ただし「隠し銃座」ではなく「銃座」の発想自体は、例えば武田系の城にも見られるように昔から存在していた。
漫画の場合の「銃座」は、攻め上がってくる敵の攻撃を一身に浴びる位置にあったが、反面、敵を確実に狙えるポイントでもあり、しかも出入り口もない小さな曲輪のため、まさしく決死隊の陣地を指す。
そう考えると、虎口に銃座を置くとしたらマンガのように「土塁の中」ではなく、虎口の中に2mほどの壁を造って、その裏に潜ませるくらいが現実的であろうか。
城攻めの兵に侵入されたら、まず間違いなく真っ先に殺されるポジションである。
ただし、そのぶん鉄砲の命中精度は確実に上がる。
ほぼ確実に死んでしまうポジションだけに、自分なら、絶対に引き受けたくない役目だ。
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